ヒューマンサクセスサイエンスユニバーシティについてご案内しています。

　先日、『卒都婆小町』という能を見ました。この曲は、「老女物」というカテゴリーに属し、能の中でも別格といわれるほど難しい曲です。内容は「老い」をテーマにして哲学的、宗教的に、深い真理を表しています。

　前半部分には99歳になり、叡智を宿した老女の小野小町と僧との間に問答があります。ここでは若かった頃、比類のない美しさで人々を魅了した小町と老いさらばえた現在の境遇が対比されます。

　次の場面では、小町が過去に自分を愛した深草少将という男性を翻弄したことに気づき、狂乱するという場面があります。しかし最終的には狂乱から覚めて悟りの道に進むというストーリーで、救いすらも感じさせます。

　私も今までに何回もこの名曲を観能してきました。かつては単に古典芸能の美しさを堪能していたのですが、今回は少なからず、ある種のショックを受けました。というのも自分が若い時には感じることもなかった小町の気持ちにシフトしたような気がしたからです。

　これまでの人生の行いに対しての反省や加齢による焦りなどと同時に、一方では年を重ねたからこそ、知り得るに至った人生の機微などが、ある種の悟りにつながるようにも思えました。このような気持ちは、年齢を重ねたからこそ、得られる有り難い心境でしょう。

　ところで私事で恐縮ですが、この9月4日は私の誕生日です。小町のように99歳という年齢には至りませんが、毎年、確実に年を重ねていくのは紛れもない事実です。そして加齢とともに、このような名曲の深さもさらに体感できるようになってきたようです。

　ここで改めて気になるのは「誕生日」の「誕」という字です。この字を調べてみると、なんと、「いつわる」という意味があるようです。つまり「誕（いつわ）りに生まれた日が、この世で生を受けた日」ということになります。そうならば、この世は「仮の世」。私たちが「あの世」と思っている次元が本来の、私たちの居場所なのかもしれません。

　例えば人が亡くなることを「旅立ち」といいますが、これは、本来の居場所に旅立っていくこと。亡くなった日を「命日」といいますが、これも不思議な言葉です。本来ならば、亡くなった日なのですから「命」の日ではなく、「死の日」と記述してもよいはずです。

　またお葬式では「故人は生前に～」というような表現をしますが、これも道理に合いません。亡くなる前、「死ぬ前」を「生前」というのですから……。そう考えても、この世は、あの世に旅立つ前の「仮の宿」。

　能『江口』にもこのような表現が見られます。江口の里を訪れた僧の一行の前に現れた遊女の霊が「思えばこの世は仮の宿、心を留めてはならない」と告げ、純白の光を放ち、普賢菩薩へと変じたという流れです。

　この能も奥深くて素晴らしい示唆を含んでいますが、さらにこの仮の宿で私たちはすべき使命をもってやってくるのです。私たちは生まれる前に、あらかじめ自分の人生の青写真を描き、その使命を果たして、またあの世に戻っていくと考えてもよいでしょう。

　胎内記憶・誕生記録の研究で国際的に有名な産婦人科医であり医学博士の池川明先生の説く「胎内記憶説」は、私たち一人一人が自分の生まれてきた理由を知り、人生の目的を果たすための一助として多くの人から期待されているものです。自分自身の人生を美しく実らせるためにも、人生の目的や使命を知ることは必須アイテムだといえるでしょう。

　9月8日（木曜日）にはライフプロファイリングの開発者であられる甲斐清輝総帥と、池川先生の貴重な対談が予定されています。自分自身を知り、人生の羅針盤を手にして、使命に則った道を読み解き、歩んでいけるライフプロファイリングと、池川先生の新分野での研究がリンクし、新しい世界観が展開されていくのが、大いに楽しみですね。

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　　　プロフィール
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宮西ナオ子（みやにしなおこ）

博士（総合社会文化）著述家　生き方研究家
女性能楽研究家、ジェム・ストーン・エナジー研究家

最新出版書籍
『菜食は素晴らしい~1週1菜の奇跡~」

『秘技の整体　アスリートから神様と呼ばれた安藤道彦』

（ともにシンシキ出版）



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