退職金・基本給連動型の落とし穴
社労士で採用定着士の西野です。
前回は、退職金制度の設計において
「計算方法」と「財源」の2つが重要
なポイントだとお伝えしました。
今回はその中でも、もっとも広く採用
されている「基本給連動型」の退職金
制度について、そのメリットと問題点
を深掘りしていきます。
■「基本給連動型」ってどんな計算方法?
おそらく、多くの方が以下のような
計算式を思い浮かべるのではない
でしょうか?
退職時の基本給 × 勤続年数(係数)
× 支給率(自己都合・会社都合など)
この「基本給連動型」は非常に一般的で
かつ計算がシンプルなため、採用して
いる企業も多いのが実情です。
■一見わかりやすい制度にも、実は
こんな問題点が…
1. 将来の退職金が見通しにくい
退職金額が退職時の基本給に大きく
左右されるため、従業員・会社ともに
「将来どれくらい支払うことになる
のか」が見えにくくなります。
2.過去の貢献が反映されにくい
制度上、評価されるのはあくまで
「退職時の状態」だけ。
たとえ長年にわたって会社に貢献
してきても、退職時の基本給が低けれ
ば退職金額も少なくなるという、
“終わりよければすべてよし"な制度
になりがちです。
2. 賃金制度を見直したくてもできない
これが最も大きな問題かもしれません。
たとえば、年功的な昇給を見直し、
職務や貢献度に応じた賃金体系に
変更したとします。
すると、古参社員の基本給が
・現行制度:40万円
・新制度:30万円
(調整手当で一時的に補填)
となるようなケースも少なくありません。
このとき、退職金の基準となる「基本給」
が減額されてしまうため、制度上は
退職金も減ってしまうことになります。
このような状況になると、社員からの
不満が生まれやすく、結果的に賃金制度
そのものの見直しが難しくなる。
―つまり、制度改革の足かせに
なってしまうのです。
では、どうすればいいのか?
結論をお伝えすると、
賃金制度を見直す前に、退職金の計算
方法の見直しが必要
ということです。
具体的には、基本給に連動しない
新しい退職金制度に変更することで、
こうした課題を回避することが
できます。
その方法については、次回の記事で
詳しくご紹介します。
退職金制度は「後から変えづらい制度」
のひとつ。
だからこそ、制度設計の順番や影響
範囲を慎重に見極めることが重要です。
退職金制度の見直しをお考えの方は、
ぜひ参考にしてみてください。
-----------------------------------
西野社労士事務所・株式会社チーム力アップ
では、中小企業の人事・労務に関する問題に
幅広く取り組んでいます。
ご相談はこのメールにご返信または
お電話で承ります。
【初回相談 無料】
TEL: 090-7551-3570
【ホームページはこちらから】
https://nihino-sr.jp
【バックナンバーはこちらから】
https://mail.os7.biz/b/Sye0
スッキリ安心就業規則
https://sr-nishino.com/clp/kitei/
2023年5月出版書籍
小さな会社の求人 3つの仕掛け
https://x.gd/hwJF0
2024年10月出版書籍
製造業・従業員20名『町工場の求人革命」
https://x.gd/VH3ws
記事一覧
社労士で採用定着士の西野です。 前回は、退職金制度の設計において 「計算方法」と「財源」の2つが重要 なポイントだとお伝えしました。 今回はその中でも、もっとも広く採用 さ
2025年07月02日
社労士で採用定着士の西野です。 前回は「退職金の相場」について解説 しましたが、今回は退職金制度を導入 する際に必ず検討すべき2つの ポイントをお伝えします。 ■退職金制度
2025年06月25日
社労士で採用定着士の西野です。 ここ最近、退職金制度についてお話し していますが、今回は「退職金の相場」 について取り上げたいと思います。 ■「退職金の相場がわからない…」
2025年06月18日
社労士で採用定着士の西野です。 小規模企業のサポートをしていると 「これは大企業では考えられない…」 と驚くことが多々あります。 その中でも特に衝撃を受けたのが、 社員が何
2025年06月11日
社労士で採用定着士の西野です。 今回から 退職金制度 について 取り上げます。 ■退職金制度は創業時に必要? クライアントの社長からも 「退職金 制度は導入したほうがいい
2025年06月04日
社労士で採用定着士の西野です。 中小企業、とくに社員数10名以下の 会社では、役職がピラミッド型に 整っていないことも珍しくありません。 よくある役職構成は、 部長→課長
2025年05月28日
社労士で採用定着士の西野です。 中小企業、特に社員10名未満の小さな 会社では、せっかく作った就業規則を 金庫や引き出しにしまいっぱなし… そんなケースが少なくありません。
2025年05月21日
社労士で採用定着士の西野です。 中小企業の社長と話していると、 よく話題に出るのが「有給休暇」のこと。 最近は、「有給を申請されたら断れない」 ことをご存知の方も多く、 ち
2025年05月14日
社労士で採用定着士の西野です。 今回は、中小企業の現場で特にご相談 の多い「問題社員への対応」について お話しします。 ■「できれば辞めてほしい…」 その気持ち、よくわかり
2025年05月07日
メンタル不調で突然の休職―小さな会社が「慌てないために」できること
社労士で採用定着士の西野です。 最近、クライアント先からこんな相談が 急増しています。 ■「診断書を持ってきて、明日から休む と言われたんですが…」 ある朝、社員が一枚の
2025年04月30日
朝7時出勤の社員から残業代請求!?それ、就業規則で防げます。
社労士で採用定着士の西野です。 今回は、実際にあった“小さな会社の ヒヤリ"事例をご紹介します。 キーワードは「朝7時に来た社員が、 残業代を請求してきた」。 ■よくある
2025年04月23日
社労士で採用定着士の西野です。 前回まで助成金についてお話しして きましたが、詳細が出そろい次第、 説明会を開催しますので楽しみに お待ちください。 さて、今回からは【小規
2025年04月16日
社労士で採用定着士の西野です。 社員の方から「妊娠しました」という 報告を受けた際、社長としては 「おめでとう!」と言いながらも、 人員配置や業務運営に関する不安を 感じるこ
2025年04月09日
社労士で採用定着士の西野です。 今回は、50歳以上のパートタイマー を雇用している企業が活用できる 助成金、「65歳超雇用推進助成金・ 高年齢者無期雇用転換コース」について
2025年04月02日
社労士で採用定着士の西野です。 最近、賃上げの話題が続いています。 特に新卒採用では、初任給が一気に 30万円を超える企業も増えており、 注目を集めています。 今回は、そ
2025年03月26日