【おもしろく】【SF小話24】たった4通のメール｜清水浩司の「おもしろくコミュニケーション話」バックナンバー

【おもしろく】【SF小話24】たった4通のメール

2025年08月30日

本日は月末のひととき
「SF小話」をお届けします♪
（明日は日曜日ポジフレーズの日
なので、一日繰り上げています。）

：

タイトル：「たった4通のメール」

メールの「自動送信機能」を使って、
戯れに未来の自分へメールを
送ってみた。

「20年後の僕へ

今の君は何をしていますか？

どこに住んでいて、
何をしていますか？

愛する人はいますか？

その人は君を愛していますか？」

この後、今の自分の事を
相談するように書いた。

そして、未来の自分の状況を
教えてほしいと締め括った。

このメールサービスが
20年後も続いていて、
アドレスが有効なら、
20年後の自分に届いて、
驚きと懐かしさを感じるだろう。

別に不思議なことではない。

思いつきの戯れであったが、
書いている間、
親しい先輩に話しかけているようで
楽しかった。

自動送信メールを設定した翌日、
1通のメールが届いた。

自分のアドレスからだったので、
初めは自動送信の日付を
間違えたのかと思った。

でも、タイトルを見て、驚いた。

「title:20年後の君より」

「20年後の僕へ」でない・・・

混乱した頭を冷やすために
一度コーヒーを淹れ直し、
恐る恐るメールを開いてみた。

そこには、
驚くべき未来の自分からの
メッセージが書かれていた。

「20年前の僕へ

メールをありがとう。

元気でやってるようで何よりです。

20年前にそんなことをしたのを、
なんとか思い出しました。

こちらは、順調にやっています。
それでは、お元気で。」

意外とあっさりとした
メッセージだった。

（これって、未来の自分と
やりとりができるってことか？）

（・・・すごいぞ！）

最初は驚いたものの、
もう少し色々教えて欲しかったと
不満も覚えた。

そこで、こちらから
もう一度自動送信メールを
送ることにした。

「20年後の僕へ

返信ありがとうございます。

まさかの返信に驚いています。

ぜひいろいろ教えてください。

（中略）

では、よろしくお願いいたします。
20年前のあなたより」

そして翌日、
2通目の返信が返ってきた。

そこには、こんなことが書かれていた。

「自分からメールが
送られてきたので、
戯れに返信をしてみた。

もちろん、
私の元に戻ってくるだけと
思っていたけどね。

ところが、メールは返信されず、
まさかの20年前の
僕に届いていたのだから驚いたよ。

今、僕は仕事にも健康にも恵まれ、
家族や仲間にも恵まれている。

もちろん、大変な時もあるけれど、
まあ、ぼちぼち良い人生を送れている。

こんな奇跡を手放すのは
もったいないが、
君とのメールはこれで
最後にする。

20年前の僕が、
今の僕に頼って欲しくないし、
今の自分を壊してもらっても
困るからね。

では、素晴らしい毎日を
過ごすことを、
20年後から祈っているよ。

20年後にまた会おう！」

20年後の僕との不思議なメールは、
たった4通で終わった。

奇跡的な出来事が起きたのに
僕の状況は何一つ変わらなかった。

ただ、最近初めて笑顔を褒められた。

（おしまい）