【Tear’s Letter】障害のある人の性暴力はどこで見えなくなるのか【後編】
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★ Tear’s Letter
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★ 2026年10月18日 No.653
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┃【Tear’s Letter No.653 Topics】
┃★1.障害のある人の性暴力はどこで見えなくなるのか【後編】
┃ ~千谷直史のTears Letter~
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┃★2.編集後記
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★1.障害のある人の性暴力はどこで見えなくなるのか【後編】
~千谷直史のTears Letter~
───────────────────────
前回のTear’s Letterでは、
警視庁が2025年に取り扱った性被害事件468件のうち、
知的障害または精神障害があると確認された被害者が
5件、約1%だったというニュースを紹介しました。
「1%」という数字だけを見れば、
「障害のある人の性被害は少ない」とも読み取れます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
今回は、しあわせなみだが過去に実施した調査から、
もう一歩掘り下げて考えます。
■32人中23人が性暴力を経験
2018年しあわせなみだは、
岩田千亜紀さんとともに
発達障害のある人やその疑いのある人を対象に
性暴力被害に関する調査を実施しました。
回答者32人のうち、
何らかの性暴力を一度でも経験した人は23人。
71.9%でした。
望まない人から性的な部位を触られる、
キスをされる、セックスをされる、
裸や性器を撮影されるなどの経験を尋ねたものです。
ただし、この「71.9%」を
「発達障害のある人の71.9%が
性暴力に遭っている」
と捉えることはできません。
32人を対象とした小規模な調査であり、
無作為に選ばれた人を対象としたものでもありません。
そのため、発達障害のある人全体の
被害割合を示す数字ではないことには注意が必要です。
■「1%」と「71.9%」の間にあるもの
前回紹介した警察の「1%」と
今回紹介した「71.9%」。
数字だけを見ると大きな差がありますが、
この二つを直接比較することはできません。
対象者も調査方法も
そもそも測っているものも異なるからです。
それでも、2018年の調査には
もう一つ気になる数字があります。
性暴力を経験した23人のうち、
その経験を誰かに話したことがある人は13人。
そして、警察に相談した人は3人でした。
性暴力を経験した人がいても、
そのすべてが警察につながるわけではありません。
ここに、前回考えた「1%」を読み解く
一つの手がかりがあるように思います。
■「相談できない」だけではない
では、被害はどこで見えなくなるのでしょうか。
本人が被害だと認識できない。
誰にも話すことができない。
周囲が性被害だと気づけない。
警察につながらない。
様々な段階が考えられます。
そして、もう一つ忘れてはいけないのが、
「相談した後」です。
岩田さんが2023年に発表した
障害のある性暴力被害者を対象とした別の調査では、
性暴力被害があった54人のうち、
44人(81.5%)が誰かに相談していました。
一方で、
相談しても受け止めてもらえなかったり、
障害のために被害の訴えを信じてもらえなかったりした
ケースも報告されています。
つまり、
「障害があるから被害を伝えられない」
だけではありません。
伝えたのに、被害として受け止めてもらえない
そこでも、性被害が見えなくなってしまう
可能性があります。
■「1%」から考えたいこと
前回のニュースを見たとき、
「1%」が多いのか少ないのか、
私にはすぐには分かりませんでした。
前後編を通して調査を振り返ると、
この数字だけから
「障害のある人の性被害は少ない」
と考えることはできないことが見えてきます。
必要なのは、
本人が被害を認識し、
伝えられるための環境だけではありません。
伝えられた家族や支援者、学校、医療機関、そして警察などが、
その声を性被害の訴えとして受け止められること。
被害を伝える側だけに
「きちんと説明すること」を求めるのではなく、
私たちの側に「気づく力」「受け止める力」があるのか、
そこまで考える必要があるのではないでしょうか。
警察統計に表れた1%の数字の
外側にいるかもしれない人たちを
どうすれば見落とさずにいられるのか。
数字の少なさを「被害の少なさ」として終わらせないこと
それが、今回の「1%」という数字から
私たちが考えるべきことだと思います。
【参考資料】
・岩田千亜紀・中野宏美
「発達障害者への性暴力の実態に関する調査」
『東洋大学社会学部紀要』第56巻第2号
https://toyo.repo.nii.ac.jp/record/10764/files/shakaigakubu56-2_023-037.pdf
・岩田千亜紀
「障害のある性暴力被害者の相談経験等に関する研究」
日本社会福祉学会 第71回秋季大会
https://www.jssw.jp/conf/71/pdf/A07-05.pdf
・岩田千亜紀
「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける障害のある性暴力被害者への支援の現状と課題」
『社会福祉学』64巻1号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssw/64/1/64_88/_article/-char/ja/
・共同通信
「障害ある子の性被害、摘発の1% 警視庁、事件潜在化を危惧」
2026年9月28日
https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202609/0020869365.shtml
★2.編集後記
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今回、初めて前後編という形で
一つのニュースについて考えてみました。
きっかけは、前回紹介した「1%」という数字を見て
「これは多いのか、少ないのか」と立ち止まったことでした。
調べていく中で改めて感じたのは、
数字は分かりやすい一方で
その数字だけでは見えないものがたくさんあるということです。
「1%」という数字の外側に声をあげられなかった人、
声をあげても受け止めてもらえなかった人がいるかもしれない。
そう考えると、数字を知ることだけでなく、
「なぜこの数字になっているのだろう」と考えることも大切なのだと思います。
前後編と少し長くなりましたが、
お付き合いいただきありがとうございました。
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次号をお楽しみに!
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