「あいだの力学」の月刊メールマガジンです。 毎月11日に発行されます。

　　　　　「あいだの力学」の気になる間の話
　　　　　　----------------------------　　2021/4/11

皆さま、こんにちは！

先月の中ごろから先始めた桜が満開…という頃合いを狙ったかのような、
先週の雨。あっという間の葉桜の姿に、季節の進みを早く感じます。

でも、この季節は木立の様子が毎日のように変化するもの。気づくと
若葉の緑の合間、ところどころに、ヤマツツジの紫。明るい春色の世界が
広がっています。

いい風を胸に吸い込んで、あたらしい一歩を踏み出したいですね。

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【今月の気になる間の話】

●「わたし」と「J-POP」のあいだがら

前にもこのメルマガにも書いたことですが、ぼく（和氣ひろゆき）には、
音楽の才能がありません(笑)。歌えば音程は外れるし、リズム音痴だし。

…とはいうものの、ちょっとしたノイズや、音の響き方※1、テンポの
変化なんかは、普通の人よりも妙に敏感だったりもします。

音を処理するソフトウエアが、設計どおりに動かなかったりすると、
「ちょっと不自然な音」になるので、エンジニアとして仕事をしている
うちに、いつのまにか聞きわけられるようになってしまった…という
ものなんですが、

どうもぼくの場合、カラダの疲れと、耳の敏感さとはあまり関係がない
ようで、「疲れたからリラックスしたい…」というときではあっても、
録音の仕方やミックスのやり方が少々乱暴な音楽がかかったりすると…

音楽よりノイズの方が気になってしまい、かえって疲れたりしちゃうん
です※2。困ったことに。

そんな音楽の聴き方にクセがあるぼくですが…最近のJ-POPって、ちょっと
前の楽曲と「変わったなあ」と感じるんです。

歌詞に深みがある…というか、日本語の使い方が「絶妙」…というか。
「味わい深い」日本語にメロディがのっかっているように思うんです。

　～米津玄師さんの「馬と鹿」から～
　　　呼べよ 恐れるままに 花の名前を
　　　「きみじゃなきゃダメだ！」と。
　　　鼻先が触れる 呼吸が止まる。
　　　痛みは消えないままでいい。
　　　あまりにくだらない 願いが消えない。

愛情があふれるときの、理性と感情が行ったり来たりするところ。
ちょっと「オトナ」の心の内、声にならない深い愛情をぼくは感じます。

　～Official髭男dismの「Pretender」から～
　　　きみの「運命のヒト」はボクじゃない。
　　　辛いけど否めない…
　　　でも、離れがたい…のさ。
　　　その髪に 触れただけでも…
　　　痛いや…いや、でも…
　　　甘いな…いや、いやグッバイ。

未練たっぷりだけれども、別れなければいけないことはわかっている。
理性で振り切ろうとするけれど、心がまだ残っているんだよなあ…。

こういう感情の表現は演歌の領域だったんだけれども、ポップスで
表現すると、軽やかで前向きだな…なんて思います。

　～YOASOBIの「夜に駆ける」から～
　　　ほらまたチックタックと 鳴る世界で何度だってさ
　　　きみのために用意した言葉 どれも届かない
　　　「終わりにしたい」だなんてさ つられて言葉にしたとき
　　　きみは初めて笑った
　　　（このあと、二人で「夜」に駆けだしていく）

二人の距離が縮まる様子、今の若い子だと、この歌詞のような感じで
はじまるんだろうな…って。

ちなみに、青春時代がバブル期だったオッチャンたちの場合はこんな風。

　～鈴木康博の「僕と海へ」(1983年)から※3～
　　　「たえられない…都会。あのバイオリズム。」（女性）
　　　「ひとときでも、ぼくと逃げていかないか？」（男性）
　　　（このあと、二人で海に行く。(たぶんぼくの車で)）

30年も経つと、色々勝手が変わるもんです。

パソコンでメロディを作れるようになったのが1980年代のこと。
それ以降、作曲や編曲という創作作業が、その人自身の演奏する能力に
縛られなくなり、才能と情熱さえあれば、だれでもできるようになった。
そして今では多くのアーティストが普通に利用する状況になっている。

最近のものでは、合成音で「歌う」こともできるため、歌詞の内容や、
メロディのつけ方の工夫に、より一層集中できるようになった※4との
こと。そうした変化が、結果的に「深い歌詞」の表現につながったの
かもしれませんね。


エンターティンメント・ビジネスの分野では、今や世界標準となった
K-POPに比較して、J-POPは「遅れている」と評価されてしまうことも
あるようですが、

ぼく自身はJ-POPが、今まさに、より新しく、より深い方向に変化して
いるように感じるのです。だから、そのまま進化を続ければいいんじゃ
ないかな…と。

…というか、音楽をはじめ、「文化」って、本来そういうものであって、
お金が儲かるかどうかだけで判断するものじゃあないでしょ。
それぞれが「イイ」と思う、色々＆様々なものがあること。それが文化的な
「豊かさ」なんじゃないかな…と。

ホント、みんながみんな同じ格好をして、同じものを聴くのは、
「ダサい」ですよ…って、あ、通じない？？(汗)(汗)


（ひろゆき）

※1:専門的には「位相のずれ」のことを言います。

※2:だから、普段聴く音楽には相当気を使ったりします。
　　たとえば「タイムマシンレコード」が制作したものとか。
　　実は同レーベルを創設した五島さんとは、前職でちょこっとだけ
　　一緒に仕事をしていたときがあります。
　　（結局お互い会社を辞めたんだけれども(笑)）
　→ https://ototoy.jp/labels/171063
　→ https://tower.jp/item/5096618/%E5%B7%AB%E5%A5%B3%E3%81%AE%E8%88%9E

※3:シチュエーションが似ている曲は色々あるとは思うけど、ぼくの趣味で
　　選びました。オリジナルは↓コチラ↓で一部が視聴できます。
　→ https://tower.jp/item/3270232/Sincerely
　　原曲に近い感じでカバーしているものは↓コチラ↓
　→ http://musictrack.jp/musics/32965
　　70を超えて、枯れた感じもまたイイもんです。
　→ https://www.youtube.com/watch?v=FaScVnX2lvg

※4:パソコンに歌わせるソフトを「ボーカロイド（ボカロ）」といいます。
　　ボカロは、どんな難曲も自由自在に歌えるわけですが、そのままだと
　　息継ぎができなかったり、とても言い切れない速さだったりするそう
　　で、それを人間で歌えるように調整していくとのこと。
　　最近難曲が多いのも、そうした作り方に理由があるようです。


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