「あいだの力学」の月刊メールマガジンです。 毎月11日に発行されます。

　　　　　「あいだの力学」の気になる間の話
　　　　　　----------------------------　　2021/6/11

皆さま、こんにちは！

梅雨の季節。今年は雨が続いたかと思うと、天気の日もあり…で、
なんだかはっきりしない空模様ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか？

さて…
毎年6月には沖縄慰霊の日があるのですが、今年はコロナ感染者急増の
影響で、参列者の数を30人まで縮小するとのこと。規模を大幅に縮小
した昨年より、厳しい制限となり、とても残念に感じます。

とはいえ、式典の規模やあるなしにかかわらず、戦争で亡くなった家族や
親族に思いを巡らせること、戦争のない平和な世の中について考えることが、
本来の目的なのですから、23日は、南方戦線で亡くなった大叔父さんの
冥福を、自分なりに祈ろうと思っています。


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【今月の気になる間の話】

●「問題」と「対策」のあいだがら

わたし（わきひろゆき）が携帯電話の開発に携わっていたときのこと。
懇意になった部長さんの部署では、よくこんな会話がなされていた。

　部長　「A君、明日の○○さんのところで行う、
　　　　　プレゼン案どうなっている？」
　Aさん 「はい。こんな風にまとめています。」
　部長　「ふむふむ…なかなかいいね。
　　　　　ところで『2枚目のパンツ』はどうすんの？」
　Aさん 「それがまだ…いい方法がなくって…」
　部長　「1枚『脱いじゃった』ら『ポロリ』か…」

最初に聴いたときはびっくりした。あとで「パンツ」が「手の内」で、
「脱ぐ」が「開示する」こと、「ポロリ」が入札などを「落とす」
という意味の隠語であることを教えてもらったんだけれども。

改めて、部長さんとAさんとの会話を普通の単語にして書き直すと、
こんな意味になる。

　部長　「A君、明日の○○さんのところで行う、
　　　　　プレゼン案どうなっている？」
　Aさん 「はい。こんな風にまとめています。」
　部長　「ふむふむ…なかなかいいね。
　　　　　ところで『バックアッププラン』はどうすんの？」
　Aさん 「それがまだ…いい方法がなくって…」
　部長　「このプランが『受け入れられなかった』ら『落選』か…」

インパクトが強い言葉は記憶に残りやすいもの。その部長さんと仕事を
するようになってから、自然と「2枚目のパンツ＝他の案」が考えられる
ようになったと思う。


そんなある日のこと。自分たちが開発に関わった携帯電話に重大な欠陥が
みつかり、販売済みの電話を回収する騒ぎになった。

再発防止のための原因分析を行う過程で、直接の原因とともにわかった
ことが2つ。

1)自分たち携帯は、他社の携帯よりも、アプリの性能が劣っている。
→どうやら他社は、自分たちのものよりも、
はるかに良い性能のCPU※1を使っているらしい
2)けれども、自分たちが使うCPUは、開発中の製品も含めて
他社並みの性能に達する見込みがしばらくない！

一番まっとうな対策案（1枚目のパンツ）は、もちろんCPUの性能を
他社並みにすること。でも…契約※2や生産設備の準備の問題で、
どうにもこうにもならない。

さて困った…
でも待てよ。アプリのサクサク感って、CPUだけで決まるのか？

そこで詳しく調べてみると、どうやらCPUの性能そのものよりも、CPUと
メモリとのデータのやり取りの効率の方が、アプリの性能に効いている
らしいことがわかった。

結局メモリを含めて、CPU以外の部分を強化すること（2枚目のパンツ）
にして、なんとか他社並みの性能を確保する戦略をとることになった。

…で、結果はどうなったって？

ビジネスとしては大成功。大ヒット…うん。

…それはそれで良かったのだけれども、ヒットの最大の理由は、当時として
は珍しかった「薄型」のデザイン（おお！「3枚目のパンツ」！）だった
から。

つまりアプリの性能は、他社と比較して「可もなく不可もなく」であれば
良かったわけで…

ユーザの気持ちになれば「あたり前」のことなんだけど、エンジニアとして
は「がんばった」のに、なんだか「釈然としない」気持ちが残ったな。


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それから20年以上がたち、今振り返ると、「何を問題にするか？」を
決めることが「問題を解決する」ことと同じぐらいに難しいということ
を学ぶ機会になったと思う。

そのときの体験は、コーチングやカウンセリングで、クライアントさん
と関わるときに、役に立っている。

だから人生って面白い。イマイチなこととだって、あとで役に立つ
こともあるのだから…

…なんてね(笑)
お釈迦様の手の広さも、ちょっとわかった気になっている。

（ひろゆき）


※1: アプリを実行するためのコンピュータの重要部品。パソコンで言うと
「インテル入ってる？」のあの部品のこと。この時点では倍以上の
性能差がありました。

※2: 性能が高いCPUを利用するための「ライセンス契約」を、ライセンサー
と結ぶ必要があるけれども、そのための時間的な余裕がなかった…と
いうことです。もちろん生産設備もすぐには対応できません。


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