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「あいだの力学」の気になる間の話

2022年10月11日

     「あいだの力学」の気になる間の話
      ----------------------------  2022/10/11

皆さま、こんにちは。

先日のコト。よく行くコンビニでクリスマスケーキの予約受付のポスターが貼られていました。近所のスーパーではおせちの予約が…まだ10月に入ったばかりだというのに早いものだなあと感じる今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今年は弔辞で年賀状が出せなかったことで気づいたのですが、年始の挨拶というのは平穏無事に過ごせたから出せるもの。だから出せただけで「めでたい」ものなんだなあと。そう思うと、出すのも頂くのも一層ありがたく感じるものです。だから、来年の年賀状、頑張ろうと思うのです。

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【今月の気になる間の話】

●「人」と「ウソ」のあいだがら

もし人から「あなたは『ウソつき』ですか?」と聴かれたら、どんな気持ちになりますか?そしてどう答えるのでしょう?もちろん、気持ちの持ち方はそれぞれだし答え方もそれぞれでしょう。「そんな質問自体失礼だ!」と憤慨する人だって居るかもしれませんね。
今回は、最近世間を騒がせている某宗教団体の話を聴いて、ぼく(和氣ひろゆき)がコーチとして感じたことをまとめようと思います。

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今から12年前のこと。
「プロコーチとして食っていくんだ!」と意気込んで独立したものの…そんな新米コーチがすぐに仕事にありつけるほど、世間は甘くなく、スケジュールが真っ白で時間がタップリ。そこで始めたのが、企業に売り込むための研修プログラム作りと、そのバックボーンとして「コーチング」そのものについて、もっと勉強すること。自分が「営業に向かない」という体験を「嫌」というほど経験した結果、研修会社の登録講師になり、営業を研修会社の方に任せることにしたからでもあるけれども。

企業向け研修を作るうえで問題になったこと…というか、研修会社から要望として言われたことは、「コーチングが自己啓発と、どう違うのかと、どう企業さんに役立つのかを、ちゃんと営業さんが(売り込み候補の企業さんに)伝えれるようにして欲しい」ということ。そりゃあそうだ。売り込むには営業さんが良さを伝えられなければ話にならない。でも…

よく考えると、自分が「コーチングは自己啓発と違う」と頭から信じ込んでいただけで、どこが「どう」違うのかを考えたことが「無かったこと」に気づかされたのでした。

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ぼくが大学生だった1980年代の頃から、自己啓発セミナーを介したマルチ商法や某宗教団体の勧誘によるトラブルが社会問題になっており、そうした団体に気をつける旨のチラシが学生課の前に貼ってあった。「親泣かせの○○研」とか。幸いにして、超貧乏学生&遠距離通学だったこともあり、そうしたセミナーに行くお金も時間も、余裕なんてこれっぽっちもなかったけれども。

改めてちゃんと調べて勉強すると…なんと!今のビジネスコーチングの源泉は、自己啓発グループの流れから来ているではありませんか!しかも自分が学んだコーチングスクールの創設者が、もともとはそうした自己啓発グループのトレーナーだったことも判明!ああなんてことだ!※1

…でも、もっと詳しく調べてみるとトレーナの仲間たちと自己啓発を辞めて、現代のビジネスコーチングを確立していく過程で、実に様々なことが起きていたようで、辞めた団体から裁判を起こされたこともあって、何がどう自己啓発と違うのかを明確化する必要があったらしい。

後にビジネスコーチングのパイオニアになった彼ら/彼女らが、互いの議論の末にたどり着いた結論は、以下の3つ。
(1)自己啓発セミナーは、閉鎖的であり教え方の自由をほとんど許さない。トレーニングプログラムは詳細まで定義されている※2。
(2)自己啓発セミナーの参加者は、教えられた原理や法則を活用することを促され、それらが自分の人生を「良くしていく」という「(偏った)見方」をするように仕向けられていく。
(3)(1)と(2)が繰り返え(構造化)されることで、教えられた原理や法則が教義として神格化され、自己の使命や運命をコントロールするものになっていくのとともに、受講者集団のグランドルールとして、受講者の各個人が教えられた教義に従う義務があるように強化されていく※3。

これらから、パイオニアたちはお互いのルールとして
(A)互いの違うやり方を尊重し、オープンコミュニティとしてやっていくこと((1)(2)(3)の否定)※4
(B)コーチから教えるのではなく、クライアントが自分で見つけていくことを促すこと((2)の否定)※5
(C)コーチがコーチングの結果から報酬を得る仕組み自体を禁止する※6

…という規則を定めた。それが現在の国際コーチング連盟(ICF)の倫理規定のはじまりになっている…とのこと※7。

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先日、某教団の元2世信者の会見中に、同会見を中止することを教団側が要請するという前代未聞の出来事が起きた※8。

そのとき考えたことは…もし自分が何かの原理や宗教に囚われて、↑上記↑の(3)の状態になってしまっていたとするなら、はたして自分はそこから抜け出すことができるだろうか?…と。もし自分だけでなく、すでに家族や友人など周りまで巻き込んでしまっていたのなら…という状況を想像してみると、ぼくはこんなことを考えているかもしれない。

・自分が信じてきたことは、真実だ(=ウソじゃない)と信じたい。
 → ウソと言ったら、セミナーで知り合った仲間からつま弾きにされてしまう!
・今さら「ウソだった」とは言えない。
 → もしウソなら、ウソをついた自分に責任があることになってしまう!

そんな罪悪感や良心の呵責に苛まれて、相当逡巡するしているんじゃないかと思ったのです。

その一方で、ぼくはこうも考えたのです。「ウソには意図的なものと意図的でないものがある」と。つまり意図していないウソで「ウソつき」になってしまうこともあるということ。たとえば長く一緒に暮らしていたら、大事なパートナーの誕生日を忘れてしまう出来事だって起きるかもしれません。

「今日は『早く帰ってくる』って言ったじゃない!」
「…ゴメン」

たぶん、「意図をしないウソ」を言っちゃうのが人間なのだから、何かが「おかしい」と感じたときに、自分が「ウソ」をついちゃったから「かもしれない」と、自己開示ができるかどうかが大事なことであって、決して「ウソをつかないこと」ではないと、ぼくは思っているのです。

自分がウソについてどう考えているのか。逆説的ですが、ウソについて考えることが、カルトの魔の手を祓う金剛杵※9になるのかもしれない。それが冒頭の質問になるわけですが。皆さんのお考えはいかがでしょう。


(ひろゆき)


※1 :今回記載した内容は、主にBrock博士の下記論文をもとに書いています。
https://libraryofprofessionalcoaching.com/wp-app/wp-content/uploads/2011/10/dissertation.pdf

※2 :逆に言えばマニュアルがあればだれにでもできるという意味でもある。
※3 :この部分がマルチ商法として利用されうる部分になっている。端的に言うとマルチ商法では、お金を集めることが教義になっている。
※4 :ICFコアバリュー(協働)とICF倫理規定(3,4-26)
※5 :ICFコアバリュー(公平性)とICF倫理規定(2,4-8)、ICFコアコンピテンシー
※6 :ICF倫理規定(4-1,4-10,4-12,4-13,4-18)。これによりマルチ商法やそれに類似する行為ができなくなっている
※7 :この個所、和氣ひろゆきの推測も入っています。
※8 :https://www.mbs.jp/news/feature/kansai/article/2022/10/091260.shtml
※9 :「こんごうしょ」仏さまが持つ武器

・ICFコアバリュー
https://icfjapan.com/core-values

・ICF倫理規定
https://icfjapan.com/icf-code-of-ethics

・ICFコアコンピテンシー
https://icfjapan.com/competency


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