編集者が教える「聞きづらいこと」を聞く技術
Tさんは取材が始まってしばらくすると、ライターさんや関係者など複数の人がいる前で
「現在の年収はおいくらなんですか」
「(初対面の妙齢の女性にもかかわらず)いま、おいくつなんですか?」
といった
「えっ? それ、今ここで聞いちゃうの!?」
「いきなりそれは失礼なんじゃない?」
と思うような質問をバシバシしていきます。
僕は隣でドキドキしながら見守っていたのですが、著者はというと、少し考えることはあっても質問したことに丁寧に答えていくのです。
それを目の当たりにした瞬間、なぜ彼の編集した本が売れるのかがピンときました。
「なるほど。編集者は『質問力』で決まるんだ」
――――――――
取材で重要なのは、著者が言いたくないことであったり、そこまで深く考えていないことであっても、質問を契機に著者の心の深い部分にある答えを導き出すことです。
読者が
「もっと知りたい、わからない」
と思うことを深く引き出すためにどういう質問をするか。
「こんなことを聞いていいのかな」
「相手が言いづらいのではないか」
と忖度してばかりいては、タイミングを逃してしまいます。
にもかかわらず当時の僕は、
「こんなこと聞いたら失礼なやつと思われるんじゃないか」
「何度も同じことを聞くと、しつこいと思われて嫌がられるんじゃないか」
「そんなことも調べずに来たのかと誤解されるのがイヤだ」
と自分に矢印が向いてばかりのダメ編集者でした。
そこで取材の後、Tさんに
「どうしたら聞きづらいことを質問できるようになりますか?」
と質問しました。
すると彼は、こう答えたのです。
「自分だけが知りたいと思うことを質問しないこと」
「読者の代表であることを自覚し『読者が聞きたいと思うことを聞いているんだ』という意識で質問をする。それだけで聞き方やタイミングが変わるよ」
と教えてくれました。
実際その意識をもって聞くと……、
どんどん著者さんが本音をいってくれるではありませんか。
もちろん中には、答えたがらない著者さんもいます。
その時は、
「ここはもう少し丁寧に説明しないと読者に伝わらないので、角度を変えて質問をしますね」
と言うと、逡巡しながらも答えてくれるようになりました。
――――――――
このマインドが生きるのは、編集者だけではありません。
著者さんも原稿を書く時に、お客様や関係者の人にヒアリングをすることがあると思います。
その際、
「自分が聞きたいことを聞くのではなく、読者のために聞くんだ」
ということを意識してみてください。
すると「質問の質」が上がって、思いもよらない答えを引き出せるようになりますよ。
OCHI企画では、
「質問の質を高めるあなた」
を応援していきます!
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OCHI企画
越智秀樹
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