【Tear’s Letter】緊急避妊薬オンライン処方の議論から見えた課題｜【しあわせなみだ】Tear's Letter バックナンバー

【Tear’s Letter】緊急避妊薬オンライン処方の議論から見えた課題

2019年06月16日

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★　Tear’s Letter
★　緊急避妊薬オンライン処方の議論から見えた課題
★　2019年6月16日　No.415
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こんにちは！NPO法人しあわせなみだです。

刑法性犯罪処罰規定の現状に対し、各党が提言をまとめはじめています。
自民党「性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟」は、政府に対し、
被害実態把握調査の早期取りまとめを求める緊急提言を採択しました。
http://bit.ly/2WLr33j
立憲民主党は、性犯罪刑事法改正を法務大臣に申し入れました。
https://cdp-japan.jp/news/20190614_1808

しあわせなみだは、刑法に「性犯罪被害者としての障がい児者」の
概念が盛り込まれるよう、働きかけを行っています。誰一人、
取り残されることがないよう、声を届けてまいります。

それでは今週の「Tear’s Letter」をお届けします！

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┃【Tear’s Letter No.415 Topics】
┃★１．緊急避妊薬オンライン処方の議論から見えた課題
┃★２．ウェブサイト更新情報
┃★３．編集後記
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★１．緊急避妊薬オンライン処方の議論から見えた課題
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性行為後、予期せぬ妊娠を防ぐために服用する緊急避妊薬について、
厚生労働省は今年1月から検討会を開催し（※1）、医療機関を
受診するのが難しい人は、オンライン診療で処方を受けられるよう
にすることを決めました（※２）。
「緊急避妊薬」とは、適切な避妊を行わなかった性行為による
妊娠を防ぐための薬で、性行為後72時間以内の服薬が有効と
されています（72時間を超えても一定の効果があります）。

オンライン診断による処方を検討するにあたり、議論されたのが、
「誰をオンライン診療の対象とするか」でした。当初妥当と
されたのは、「近くに受診可能な医療機関がない」あるいは
「性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある場合」に限るものでした
（※３）。

この議論は、性暴力の現状における課題を浮き彫りにしたものでした。
3つのポイントを挙げます。

☆１）パートナー間の性行為では「適切な避妊が行われている」
ことが前提となっている

オンライン診療の対象を「性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある
場合」に限る案は、「適切な避妊を行わない性行為は性犯罪のみ」
「パートナー間の性行為では、必ず適切な避妊が行われている」
「適切な避妊をしない責任は、妊娠する側の女性にある」ことが
前提となっています。
しかし内閣府の調査では、配偶者からの性的強要を経験した人は
6.0％、交際相手からの性的強要は、10代での経験は 2.0％、
20代での経験は3.8％、30代での経験は1.3％となっています
（※４）。パートナー間における、適切な避妊を行わない性行為を
「性犯罪」と認識し、警察に相談することが、どれほど困難で
あるかは、想像に難くありません。「パートナー間でも、適切な
避妊を行わない性行為が起きている」事実が知られる必要が
あります。

☆２）産婦人科を受診する障壁が理解されていない

産婦人科に行くことに抵抗を感じている女性は、少なくありません
（※５）。受診の理由が性暴力であることは、その障壁をより一層
高めます。内閣府の調査では、無理やり性交等をされた男女のうち、
医療関係者に相談した人は、わずか1.8％です（※４）。
「性暴力に遭ったら、妊娠や性感染症を防ぐために、産婦人科を
受診する」ことは、頭では理解できても、実際には困難である現状
が、理解される必要があります。

☆３）「性暴力を経験した」と思われたくない

オンライン処方の対象を「性犯罪の被害を受けて対人恐怖がある
場合」に限るという案に対し、「性犯罪被害者以外も対象に」という
声が多く上がりました。
本来、「予期せぬ妊娠が起こりうる（適切な避妊を行わない）
性行為」自体が性暴力であり、緊急避妊薬が必要な状況を「性犯罪
被害」と「それ以外」に分けるのは、不自然なことです。
ただ、「性犯罪」と言われ、多くの人がイメージする「見知らぬ人に
襲われた」以外のシチュエーションで、緊急避妊薬を必要とする人
には、「自身の経験は性暴力である」という認識はありません。
むしろ「私の経験は性暴力ではない」「性暴力を経験したなんて
思われたくない」「避妊しない性行為を受け入れた自分が悪い」と
いう考えを持って人もいるでしょう。
本当に信頼し合える相手であれば、予期せぬ妊娠を心配しない
性行為ができているはずです。

緊急避妊薬が必要な状況に対し、「予期せぬ妊娠を心配するような
性行為をしたあなたが悪い」と責めるのでもなく、「あなたは
性暴力被害者です」というレッテルを貼るのでもなく、「適切な
治療と心身のケアが必要であること」、そして「本来そのような
経験はする必要がない」こと、「あなたには自分の心身を守る力が
あり、避妊を主張する権利がある」ことを、伝えていく必要が
あります。

※１　厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針の
見直しに関する検討会」
http://bit.ly/2wXjAnE
※２　詳細は6/10付NHK NEWS WEB「緊急避妊薬オンライン
診療でも処方可能に指針改定厚労省」
http://bit.ly/2FaKFYS
※３　詳細は5/31付朝日新聞デジタル「緊急避妊薬のネット処方
解禁へ　性犯罪被害者らに限定で」
https://www.asahi.com/articles/ASM5042VBM50ULBJ009.html
※４　内閣府「男女間における暴力に関する調査（平成29年度調査）」
http://bit.ly/2JltZ53
※５　たとえば、バイエル薬品が女性600名を対象に行った調査
では、「妊娠以外の理由で産婦人科に行くこと」に「抵抗がある」
と回答した女性は70％にのぼります。
https://woman.mynavi.jp/article/161222-31/

★２．ウェブサイト更新情報
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☆【イベント情報】に［7/18:東京］「障がい児者への性暴力
から見えてくるもの～ソーシャルワーカーによるアドボカシー
実践報告～」を掲載しました
http://shiawasenamida.org/171403
↑理事長中野が登壇します

★３．編集後記
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2019年5月から2020年3月にかけて、全国10か所で開催する
障がい児者への性暴力撲滅啓発キャンペーン「ブリッジング・
プロジェクト～ Bridging the Gap～」。6月までの開催は下記です。
皆様にお会いできることを楽しみにしています！

↓6/29（土）13:00～徳島市ときわホール
　http://shiawasenamida.org/171147
↓6/30（日）13:00～ちよだプラットフォームスクウェア
　※おかげ様で多くの希望をいただき、申込は終了しております
　http://shiawasenamida.org/171342

☆最後までお読みいただきありがとうございました。

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