「あいだの力学」の気になる間の話
---------------------------- 2024/8/11
皆さま、こんにちは。
厳しい暑さが続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
ぼくら(和氣ひろゆき・より子)が住んでいる生駒市は山の中の盆地にあるため、大阪市内よりも2-3度気温が低いようですが、それでもここ最近は、連日35度近い日が続いています。本当に暑いですね!
先日テレビを観ていたときのこと。ギタリストの高中正義さんが全国ツアーをされるとのことで、インタビューを受けていました。彼の代表作である「虹伝説」を高校生(和氣ひろゆき)のときに聴いたのですが、そのとき受けた衝撃は今でも忘れることができません。そんな彼が古希を超えて今でも活躍している姿を見ると、なんだか嬉しい気持ちとともに、「自分もまだまだやれるはず!」という不思議な自信も湧いてきます。
高中さんのように、いつまでも情熱を失わず、輝き続けていきたいものです。
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【今月の気になる間の話】
●「コーチング」と「カウンセリング」とのあいだがらー2
今回はカウンセリングに関する専門的な内容になるが、その分野においては、とても重要な内容を含んでいるので許してほしい。
過去のメルマガの内容を確認すると、ぼく(和氣ひろゆき)は、2017年の4月からカウンセリングの訓練を始めたようだ。そのときの気持ち、「ワクワク感」をメルマガに書いたのだが、それ以降、翌年の3月の資格取得の報告まで、訓練のことについては何も書いていない。
実はカウンセリングの訓練中、色々なことで戸惑うことが多く、しばらく混乱し、モヤモヤした気持ちでいっぱいの状態で、文章としてまとめようとしても、まとまらない状況になっていた。自分が学んだコーチングの流派は、ロジャーズのパーソン・センタード・アプローチ(PCA)の考え方を取り入れたものなので、カウンセリングと相反することはないハズだ。けれども、どうも違っているらしい。
特に違和感を覚えたのは、クライアントさんの言葉をカウンセラーが「おうむ返し」しなければならなかったこと。クライアントさんの気持ちを確認しようとすると指導官から注意される。何がなんだかわからなくなった…そんな感じだった。
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それからしばらくの後、明治大学の諸富先生の講義に参加したときのこと。先生がこんなことを話した。
「日本の心理学の先生方は、英語を理解していない。
誤訳や誤解釈の学説が主流になってしまっているので問題だ※1」
もしそうなら、この気持ちの「モヤモヤ」は、誤訳や誤解釈の結果かもしれない。そんな訳で、ロジャーズ自身がどんなセッションをして、どんな話をしているかを自分でも調べることにした。幸いにして英文法もわかるようになったし、本人の言葉を確認するのが一番のはずだ。
そんなわけで、ロジャーズ自身が「共感」について語った講義のビデオ※2の一部を翻訳してみた。原文と一緒に書くので、ぜひ内容を確認してみて欲しい。なお「()」はわたしが文章の前後関係から推測して追記した。
--ここから--
[ビデオ開始から5分45秒ぐらいから]
But this tendency to focus on therapists responses had consequences which appalled me. I was meeting considerable hostility as to my point of view and that really didn’t seem to bother me.
しかし、セラピストの反応に焦点を当てるこの傾向は、私を驚かせる結果をもたらしました。私は自分の視点に関してかなり批判的に観るようにしていましたが、そのことについては(周りは)本当に関心がないようでした。
But this kind of thing did bother me. Because the whole approach came in few years to be known as technique non-directive therapy. It was said is the technique of reflecting the client feelings period.
だが、この種のことは私を悩ませました。なぜなら、このアプローチ全体が数年後に非指示療法※3の手法として知られるようになったからです。そこでは、クライアントのその時々の感情を反映する手法だと言われています。
So then you are taken care of non-directive therapy.
そうやって、あなた方は(ロジャーズの)非指示療法のやり方を学ぶ訳です。
Or even worse, uh, well even "worse caricature" was simply that in non-directive therapy, "You just say the last say back, the last words of the client said". And really.
あるいはさらに悪いことに、うーん、さらに「ひどいパロディ」は、非指示的療法を単純化したものでした。それは「あなたは、クライアントが最後に言ったことを言い返すだけだ」というものです。本当のことなんです。
I was so shocked and appalled by that the complete distortion of approach that for a number of years I said almost nothing about the empathic listening.
私はアプローチの完全な歪みにとてもショックを受け、愕然としたため、何年もの間、共感的に傾聴することについてほとんど何も話しませんでした。
And when I did it was to stress an empathic attitude with very little comment as to how that attitude might be implemented in their relationship.
そして、私が話す場合においても、共感的な態度を強調するだけで、その態度がセラピストとクライアントの関係にどのように作用するかについても、ほとんどコメントしませんでした。
I just became frightened of the distortion.
歪みが怖くなっていました。
I preferred to discuss the qualities of positive regard and therapist congruence. Which I had came to hypothesize as being two other conditions that were growth-promoting in a in a relationship.
私は、肯定的な関心とセラピストの自己一致致※4の、それぞれのクオリティについて議論することを好みました。私は、これこそがカウンセリングの関係の成長を促す、2つの追加条件であると仮説を立てるようになりました。
And those concepts were often misunderstood too.
そして、それらの概念も誤解されることがよくありました。
But they never came to be caricatured in the same way that they the empathic listening was opposed caricatured over the years.
しかし、セラピストとクライアントは決してパロディで描かれたようにはなりませんでした。セラピストが行う共感的傾聴は長い間誤解されていたパロディとは全く正反対のものなのです。
Over the years they the resarch evidence keeping piling up in at point strongly to the conclusion that a high degree of empathy in a relationship is possibly the most impotant factor and certainly one of the most impotant factor in bringing about change and learning and so I believe it’s time for me to forget the caricatured ans misrepresentations of the past and take a fresh look at empathy,
長年にわたる研究で蓄積された結果は、つぎの結論を強く支持するものでした。つまり、人間関係をもとにした高いレベルの共感は、おそらく最も重要な要素であり、人間の変容と学びを促す最も重要な要因の一つとして間違いないということです。そうなので、過去のパロディや誤解を忘れて、共感について新しい見方をするときが来たと、(今)私は信じることができるのです。
--ここまで--
このビデオを観ると、
1)共感における「おうむ返し」というのはパロディ(caricature)のようなもの
2)(1)のような誤解がされていたことにロジャーズ自身が悩んでいた
ということで、
本来は
3)クライアントとカウンセラーとの人間関係と
4)(3)を前提にした共感
が大事ということを明確に語っています。
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わたしがコーチングの訓練中に学んだことは、コーチとクライアントの関係こそがカギであるということ「そのもの」だ。そうしたコーチングが機能する関係をクライアントと構築するために、自分たちの流派では、「クライアントはNCRW※5である」と、コーチが「信じる」ことから始まるということを教わってきた。これらのことは、ロジャーズがビデオで語っていることと少しも矛盾しないように思う。
そしてビデオでロジャーズ自身が語っていたように、カウンセリングの訓練中に指導されていた「おうむ返し」が、パロディで誤解されたものなんだということ。なんだかまわり道をした感じはするけれど、今はとてもスッキリした気分だ。
改めて自分の体験を振り返ってみると、そもそもの話、ロジャーズの言っていることが、そのまま日本に伝わっていれば、モヤモヤするような体験をしなくて済んだとハズだ。でも人の考え方や思想を「ちゃんと理解」し「ちゃんと伝える」というのは、とても難しいことで、ぼくら夫婦の間でさえ、相手のことを誤解しケンカのタネになることもある。
そう思うと結局のところ、「ごめん!間違った!」と修正できるかどうかが一番大事なのことなのかもしれない。権威になると難しいのかもしれないが。
※1: ほぼ同じことを、関西大学の池見先生がおっしゃっています。
※2: "Carl Rogers’s 1974 lecture on Empathy"
→ https://www.youtube.com/watch?v=iMi7uY83z-U
※3: ロジャーズが最初に確立したカウンセリング手法。この方法を基礎にしてクライアント中心療法(CCT)→パーソン・センタード・アプローチ(PCA)へと発展していくことになる。
※4: 「自己一致(congruence)」― ロジャーズ風に簡単に言うと、「クライアントに対しても、自分自身に対してもウソがない状態(=本物であること)」をいう。
※5: "Naturary Creative, Resourceful, and Whole"の頭文字。「もと(=生来)から、創造力があり、必要なものが備わっていて、どこも欠けているところがない存在である」という意味を表す。
(ひろゆき)
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よろしくお願い申します。
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