叩き潰される自由の象徴
メキシコからロサンゼルスへの
コカインの密輸で
大金を稼いだ
2人のアメリカ人の青年
ワイアットとビリー。
彼らは、
バイク(ハーレーダビッドソン)のガソリンタンクの中に仕込んだチューブに、巻きタバコのようにその大金を丸めて詰める。
盗まれないようにするためだ。
そして、
腕時計に一瞥をくれたあと
それをはずして、
地面に投げ捨てる。
ついに大金を稼いだ!
金からも時間からも
自由になった彼らは、
荒野を出発して
バイクの旅に出る。
長髪にヒゲ
サングラス
背中に大きな星条旗を描いた
レザージャケットを着て
ヒッピーのような首飾りをして
まさに奔放な「なり」で
自由気ままな旅をする。
「自由そのもの」のような
彼らの姿。
しかし、
彼らの行く先には
恐ろしい現実が待ち受けていた。
こんにちは。
「わかるWeb」の国府田(こうだ)です。
アメリカの2人の若者が
自由奔放に
バイクで旅をする。
これは
1969年に公開された
映画「イージー・ライダー」の世界です。
イージー・ライダー(Easy Rider)
という言葉は、
アメリカの俗語で
「気ままなにオートバイを走らせる人」
「〔仕事をせずに〕のんびり生きている人」
などの意味があるようです。
この映画では
両方の意味で
使われているのでしょう。
ところで、
今は死語になっているであろう
「ヒッピー」とは
いったい何でしょうか。
ヒッピー(Hippie)とは、
1960年代後半にアメリカに出現した
それまでの西欧の
保守的な考えや価値観を否定して
反体制的な考えをもつ人々や運動のことです。
民族衣装のようなものに
身をつつみ、
時には服すら着ない。
哲学や精神世界の探求を好み、
反戦運動、
自然回帰、
反骨的なロック音楽などへ傾倒する。
そういった趣向の人々です。
都会から離れて
農作物を育てたり
自給自足に近い状態で
共同体生活をしていた人も多かったようです。
実は僕は
もう30年以上も前のことですが
日本人の映像作家である
Iさん(女性)の作品制作の
お手伝いをさせていただいたことがあります。
このIさんが
「イージー・ライダー」の撮影時に
アメリカにいて、
なんと「イージー・ライダー」の撮影を
最初から最後までずっと見ていたそうなんです!
(撮影隊について行った、ということだったかもしれません)
どうして、Iさんが
そうしたかなどの経緯は
覚えていませんが
ご自身の映像制作のための
見学だったのかもしれません。
Iさんの話では、
当時のアメリカには
やはりヒッピーがいて
彼らは、大工仕事などをしながら
生計を立てていたそうです。
Iさんはまさに、
「イージー・ライダー」と
当時のアメリカ文化に
どっぷり触れられていたのだと思います。
(以下、「イージー・ライダー」の完全なネタバレがありますので、映画をご覧になりたい方は先に観てください。でもそのあと、メルマガに戻ってきてくださいね!)
(また、記事中に少々ドラッグや風俗、暴力に関する描写が登場しますので、気に触る方はご遠慮ください)
さて、
ワイアット(ピーター・フォンダ)と
ビリー(デニス・ホッパー)は
ロサンゼルスから
南部の都市ニューオーリンズまで
「謝肉祭」を見るために
バイクの旅をします。
Google Mapで見ると
ロサンゼルスから
ニューオーリンズまでは
1,894マイル(3,048Km)あります。
日本の北海道から沖縄までが
ざっくり3,000kmですから
それに匹敵する距離ですね。
車で28時間かかるようです。
3,048Kmを28時間で 移動する
ということは
平均時速108kmで走る
ということでしょうか。
バイクではどれほど
スピードを出せるのか
わかりませんが、
例えば車で4日程度のところ
バイクでは1週間
といったところなのでしょうか?
(経験のある方がいたら、是非教えてください)
謝肉祭を見て
うまいものを食べ
夜の街を楽しもう!
2人には
それ以外に目的もなければ
目指すところもありません。
守るべき時間は
「謝肉祭の期間に間に合うようにする」
ただそれだけです。
でもそんな予定など
彼らの気分次第で
どうにでも変更できるものです。
つまり、
彼らを縛るものは
何もないのです。
荒野で野宿を続け
のんびりと旅をして
2人は、文字通り「自由」を謳歌します。
しかし、行く先々で
彼らはアメリカの
様々な現実に遭遇するのです。
夜になって
モーテルに泊まろうとすると
長髪で派手なスタイルの彼らの姿を見るや、「空室」のサインを「満室」に変えられてしまい、泊まれない。
街を練り歩く
鼓笛隊のパレードに
バイクでついて行くと
警察に補導され
留置場に入れられてしまう。
様々な土地の
保守的な人々は
彼らを歓迎しないのです。
そして、ついに
最悪なことが起こります。
途中で出会った
若い弁護士・ハンセンと
彼らは、あるレストランに入ります。
そこには、
地元の保安官や中年の男たちがいて
彼らに聞こえるように
露骨な皮肉や罵声を浴びせてきます。
ただ食事をしたいだけなのに
ウエイトレスは彼らを無視して
一向に注文を取りに来ず、
それどころか、店全体が
彼らを異物として
「片付けよう」とする
不穏な空気が流れてきます。
彼らは危険を感じて
店を出ます。
その夜、彼らは
焚き火を囲んで野宿します。
弁護士・ハンセンは
ビリーに語ります。
彼らが怖がっているのは、
君が象徴しているものさ。
彼らは君に、
「自由」を見るんだ。
もちろん、
「自由」は悪くなどない。
だが、
自由を説くことと、
自由であることとは別だ。
金で動く者は
自由になれない。
アメリカ人は、
自由を証明するためなら、
平気で人を殺す。
そして
個人の自由については
いくらでもしゃべるが、
「自由なやつ」を見るのは怖いんだ。
「自由なやつ」
それは
ワイアットとビリー
そして、今彼らと一緒にいる
ハンセン自身のことです。
彼らは
保守的な人たちにとって
不穏分子なのです。
やがて、暗闇の中
野宿している彼らが
寝静まるころ、
先ほどのレストランの男たちと
思われる集団がやってきて
寝袋で寝ている彼らを
いきなり棒やパイプで
殴りつけます。
何度も何度も
思い切りこん棒を打ち下ろします。
ハンセンは
ついに眠りから目覚めることなく
頭から血を流して
死亡してしまいます。
男たちは
足早にいなくなりました。
ワイアットとビリーは
傷を負いながらも生き延びます。
そしてハンセンの家族に
いつか遺品を届けてやることを誓います。
彼らはついに、
彼らを敵視する者たちに
「片付けられ」てしまったのです。
旅を続ける2人。
ついに
ニューオーリンズに到着し
「謝肉祭」を見物したり
娼婦と過ごしたり
ドラッグに陶酔したり
やりたい放題の時間を過ごします。
「謝肉祭」を見た夜。
ビリーはワイアットに
金も自由も手に入れたし
フロリダで引退しよう、
と言います。
しかし、
ワイアットは
ぼんやりと焚き火を見たままです。
「ムダだよ(We blew it.)」
ポツリとそう呟きます。
どういうことだ?
ビリーが怪訝な表情をします。
ワイアットはただ
「ダメだよ(We blew it.※)」
と呟いて、寝てしまいます。
(※We blew it.は「台無しだよ」という意味が含まれるようです)
求めていたはずの自由。
しかし、今
自分たちの生きる意味も
チャンスも
見出せなくなった。
どこに行っても
結局は受け入れられない
行き場所のない2人。
自由を求めて旅したはずが、
そんなものはどこにもなかった。
そう言いたげです。
やがて、
ワイアットの言葉が意味するであろう、最後の瞬間がやって来ます。
バイクで
森林地帯の道を走る2人。
後から、
近くの農場の連中と思われる
トラックが追いついて
ビリーに銃をむけ
「ぶち抜こうか?」
と脅します。
ビリーが中指を立てると
トラックの男は
「その髪を切れ!」
と叫びながら。
いきなり発砲します。
バイクごと転倒するビリー。
ワイアットが戻ると
血だらけになったビリーが
転がってうめいています。
近くには町もなく
人もいません。
「待ってろ!」
ワイアットは急いで
バイクにまたがり、
助けを求めて走り出します。
その時、
さっきのトラックが戻ってきて
ワイアットに狙いをつけ、
引き金を引きます。
ワイアットのバイクは
打ち抜かれ、
火を噴いて飛んでいきます。
激しく燃え盛る
ワイアットのバイク。
こうして2人の旅は
衝撃的な終りを迎えるのです。
自由の国と言われる
アメリカでさえ、
(いや、実は自由ではないのか?)
新しいスタイルや
旧体制を拒む者は
保守派に脅威を与えるようになると、
押さえこまれて
最後には抹殺されてしまう危険が
あるのかもしれません。
しかし、日本の場合など
アメリカの比では
ないのではないでしょうか。
「出る杭は打たれる」
と言われるとおりです。
いや、むしろ
自分が「杭」にならないように
自ら周囲に同調することもあります。
日本の方がはるかに、
新しい「異物」に対して
強い圧力がかかるのではないでしょうか。
俗世間からかけ離れたような
当時のヒッピー文化は、
様々な批判があったにせよ、
それまで日の目を見なかった
「別な価値観」として
世界で共感を生んだようです。
1960年後半から1970年代。
当時の音楽、映画は、
いまだに
パワフルで
常識にとらわれた心を
打ち砕く力を持っていると思います。
「イージー・ライダー」を含めて
当時の「アメリカン・ニューシネマ」
と呼ばれる映画は
反体制的な人間の心情を綴った物が多いです。
ラストはたいてい
衝撃的で悲劇的な場合が多いのですが、
今の映画では見られない
その時代を鋭く切り取った傑作が
たくさんあります。
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2019年6月6日 第032号発行
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