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自転車泥棒

2019年07月05日

仕事が回ってきた!

職業安定所の係員が
自分の名前を呼んでいる。

どうせ今日も
仕事などないと諦めて
道端で暇をつぶしていたが、
驚いて立ち上がった。

仲間が
自分が呼ばれたことを
教えてくれている。

ついに
自分に順番が回ってきた。

2年ぶりの仕事をもらったのだ!


ここは
第二次世界大戦後の
イタリア、ローマ。

戦後の不況で
仕事を待ち続ける
飢え死にしそうな失業労働者と
その家族たち。

その中の男・アントニオに
ようやく仕事が回ってきたのだった。

彼には、
妻と6歳の息子
そして、赤ん坊がいる。

彼がもらったのは
市役所のポスター貼りの仕事だ。

喜びを隠せないアントニオ。

ただ、この仕事には
「自転車」を持っていることが
条件だという。

アントニオは蒼白になった。

彼は、食べるために
自転車を質に入れてしまったのだ。

「今すぐ自転車がないのなら
この仕事は他の者にまわす」

係員はそう言った。

俺にくれ!
俺なら自転車を持っている!
男たちは口々に申し出てくる。

「どうするんだ?」
係員はアントニオに問いただす。

「何とかします。
2年ぶりの仕事なんだ」

アントニオは紹介状を持って家に帰る。

しかし、彼には
自転車を用意するあては
全くなかった。



こんにちは。
「わかるWeb」の国府田(こうだ)です。



この物語は、
戦後の貧困にあえぐ
イタリアを舞台にした
映画「自転車泥棒(Ladri di Biciclette)」の世界です。

ヴィットリオ・デ・シーカという
イタリア出身の名監督の作品です。

(以下、完全なネタバレを含みますので、ご了承ください)



自転車が用意できない。

アントニオのこの悩みが
いかに深刻か
想像できるでしょうか。

自転車があれば
家族が食べられるようになり
無職の苦しい生活は一変する。

ちゃんとした給与がもらえるばかりか
家族手当もついてくる。

しかし
自転車がなければ
この仕事を失ってしまう。

次の仕事にありつけるまで
あと何日、何ヶ月待てばよいか
わからない。

それまで
妻子を抱えて
どうやって生きていけばいいのか。

絶望的な状況です。



自転車を用意するあてもなく
帰ってきたアントニオ。

「仕事をもらったのに、できない。
どうにもならん。
いっそ死にたいよ!」
妻・マリアにそう嘆きます。

ところが、こういうとき
女性は強いのでしょうか。

マリアは思い立つと
いきなりチェストやベッドから
白いシーツを引っ張り出し
金ダライで洗い始めます。

これらは
嫁入り道具に持ってきたシーツです。

「どうする気だ?」

「これがなくても眠れるわ」

これらのシーツを質に入れて、
代わりに自転車を取り戻そうというのです。

妻・マリアの
決断と行動は早いです!



かくしてアントニオは
妻の機転のおかげで
シーツと引き換えに
自転車を質から取り戻しました。

そして、さっそく
紹介状を手に市役所をたずね
翌日から仕事をする手はずを整えたのです。

うまくいった!
これで給料が入ってくる。
食べていけるんだ!
アントニオとマリアは喜びます。

「生きた心地がする」とは
このことでしょう。



翌朝、アントニオは
支給された作業着を着て
自転車を担ぎ、
誇らしげに仕事に出かけます。

そして、
息子のブルーノも
作業着を着て父と一緒に出かけます。

でも・・・彼はまだ6歳です。

父のように仕事をしようとでも
いうのでしょうか?

6歳といえば
今の日本では
幼稚園の年長組か小学校一年生です。

果たして、ブルーノはまだ
未就学児(学校に入る前)で
自由な時間があるのか。

あるいは、戦後の混乱で
学校制度も整備されていなかったのか。

そもそも、
当時では、6歳ぐらいの子供でも働いていたのか?

これらの時代背景は
不明です。

ちなみに
現在の日本の労働基準法では、
15歳の4月1日から働くことが可能です。


とにかく
この息子・ブルーノは
見た目は年相応ですが
驚くほどしっかりしているのです。

ブルーノは、父とともに
朝7:00ごろに出かけて
とある小屋の前に到着。

ここで父と別れます。

その小屋から
掃除道具を出しているところを見ると
何か掃除の仕事でもするようです。

職場のおじさんと
当たり前のように元気にあいさつします。

そして、夜の7:00ごろに
再び同じ場所で
父と待ち合わせします。

つまり、
10~12時間労働をしているのでしょうか。

子供が労働するという
是非はともかくとして
ブルーノは非常にたくましいのです。



さて、
父・アントニオはというと
同僚から仕事を教えてもらって
すぐに一人になり
街の壁にポスターを貼っていきます。

ハケを使って
大きなポスターを
のりで貼っていくのです。

やはり、自転車は
当時としては高価なのでしょう。

道行く人が、
傍らに立てかけた彼の自転車を
一瞥していきます。

一生懸命
ポスターを貼るアントニオ。

すると
一瞬の隙を突いて
見ず知らずの若い男が
彼の自転車を盗んでいきます。

「泥棒!(un ladro!)」

アントニオは叫んで
追いかけます。

泥棒は自転車を漕いで
猛スピードで逃げていきます。

必死に追いかけるアントニオ。

途中、中年の男が
アントニオと一緒になって
人の車に相乗りして
泥棒の行き先を示してくれます。

「あっちだ!」

しかし
追い詰めた自転車は人違いで
全く関係ない人でした。

そうしているうちに、
泥棒は雑踏の中に消えてしまいました。

どうもこの中年男が
泥棒の若者と組んでいたようですが
パニック状態のアントニオには
そんなことまで気が回りません。

仕事を始めてすぐに
一番大事な自転車を
盗まれてしまったのです。

途方に暮れるアントニオ。

その夜
そのことを知った妻・マリアは
さすがに泣き出してしまいます。



翌朝
アントニオはブルーノを連れて
自転車探しに出かけます。

朝市に並んで売り出されている
自転車を見たり
あてどもなく
町をさ迷ったりします。

捜索中、
アントニオはとにかく
自分のペースで歩き回り
右往左往します。

自転車を探す一心で
子供のペースなど
気にしている余裕もありません。

しかしブルーノは
文句一つ言わず
疲れたとも、のどが渇いたとも
お腹が減ったとも言いません。

ひたすら父を見上げては
必死について行きます。

父の焦りや苛立ち、悲しみも
心配そうにずっと見ています。

ブルーノとて子供ですから
そうして父について行くしかないのです。



そしてあるとき、
自転車を奪った泥棒らしき若者に
ばったり遭遇します。

アントニオと目を合わせるや
不振な挙動で立ち去ろうとする若者。

アントニオは
若者を問い詰めます。

しかし
何のことかわからないと
否認する若者。

問い詰めているうちに
若者が住むその界隈から
近所の男たちが現れて
アントニオを取り囲みます。

こいつが
あんたの自転車を盗んだって?
確かなのか?
盗んだという証拠があるのか?
こっちはあんたを訴えることもできるんだぞ!

近所の男たちは
若者に加勢してアントニオを攻め立てます

父の一大事に
ブルーノが
警官を呼んできます。

そしてついに
アントニオは警官とともに
その若者の部屋を
任意で捜索することになります。


古い簡素なアパートの一室に
若者とその母親を含めた
家族4人が住んでいます。

その狭さ、貧しさは
アントニオの住まいより
さらに厳しいものです。

そして、その部屋からは
自転車も部品も
何一つ出てきませんでした。

警官もこれ以上
捜査することはできません。

アントニオを追い返すように
非難を浴びせる近所の者たち。

果たしてその若者が
犯人だったのかどうかも
もはやわかりません。



絶望が
アントニオを襲います。

さ迷う道すがら
向こうのスタジアムから
サッカー試合の歓声が聞こえてきます。

絶望に沈むアントニオとは対照的な、活気ある歓声。

スタジアムの駐輪場に
数え切れない観客の自転車が
停められてます。

自分はこんなにも必死に
一台の自転車を探しているのに
目の前には無数の自転車がある。

呆然としているアントニオ。

ふと、
反対側の人通りのない路地裏に
ポツンと一台の自転車が置かれているのを見つけます。

自転車のそばには
誰もいません。

息子のブルーノは
長時間の捜索に疲れ果てて
路傍に座り込み
頭を抱えています。


アントニオは
駐輪場の自転車と
路地裏の自転車を見ているうちに
ある思いにとりつかれます。

決して踏み越えてはならない
善悪を超えた思いです。


やがてスタジアムの試合が終わり
大勢の観客が出てきます。

みんなが自転車に乗り込み
家路に着きます。

道は、行き交う自転車で
いっぱいになります。

路地裏には
まだ自転車が置かれています。

誰も見張っていない様子です。

我を忘れるほどに
葛藤にさいなまれるアントニオ。

自分は
いったいどうしたらいいのか。
チャンスは今しかない。
本当にやるしかないのか?


そして、
ブルーノに金を渡して
路面電車で
先に待ち合わせの駅まで
行っているように指示します。

ブルーノは
言われたとおりに
一人で電車に乗ろうとするのですが

すんでのところで乗り切れず
電車は発車してしまいます。

ブルーノは
その場に残されてしまいます。


アントニオは
路地裏の自転車に
ゆっくりと近づいて行きます。

まわりには誰もいません。
表通りの騒音が聞こえてくるだけです。

自転車に近づくと
一気に乗り込んで
走り出します。

「泥棒!(un ladro!)」

とたんに建物の出口から
男が出てきて叫びます。

必死に濃いで逃げるアントニオ。

「捕まえてくれ!」

男が叫ぶと、
通りがかった者たちが
アントニオを追いかけます。

5人、10人と
見る見るうちに
追っては増えていき
自転車に追いつきそうになります。

そして、
立ち尽くすブルーノの目の前を
自転車を漕ぐ父と
追っ手が走り去って行き
父が捕まってしまいます。

一部始終を見たブルーノは、
呆然とします。

自転車から引きずり下ろされ
激しく小突かれ、
攻め立てられるアントニオ。

すぐに
自転車の持ち主である
中年の男がやってきて
父を咎めます。

「この野郎、
なんてことする!」

ブルーノが、
泣きながら父の元に走ってきて
しがみつきます。

「パパ!パパ!」

大勢からはたかれ
小突かれている父。
父にしがみつく息子。

どの警察署に連れて行くか
みんなで相談が始まります。

しかし
父と息子の様子をじっと見ていた
持ち主の男は、言います。

「離してやれ」

男たちは驚き、
納得が行きません。

「何だと?」

「もういいんだ。
みんなありがとう」

それだけ言うと、
持ち主の男は去ってしまいます。

その言葉に
男たちも不承不承解散します。

「神様に感謝しろよ!」

攻め立てながら
アントニオを解放する男たち。



言葉もなく歩いていく
アントニオとブルーノ。

通り越していく人や車に
押されながら
力なく歩くアントニオは

やがて歩きながら
泣き出してしまいます。

泣く父の顔を見上げて
ブルーノはぎゅっと手を握ります。

不安でありながらも
勇気付けるまなざしを感じます。

泣きながら歩くアントニオと
手をつないで父を見守るブルーノ。


物語はここで終わります。



このあと、
この親子、この家族は
どう過ごしていくのか。
どう生きていくのか。

問題は何も解決していません。

しかし
息子の存在が
自転車泥棒をした父を
刑罰から救ってくれました。

最後の息子の優しいまなざしが
微かな希望を運んできてくれるように感じます。

父・アントニオは
また立ち上がれるのでしょうか。


今日は余計なことは書かずに
ここで終わります (^-^)


最後まで物語を書いてしましたが、
もし観ていない方は
是非観て見てください。



ではまた!



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2019年7月5日 第034号発行

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