「あいだの力学」の月刊メールマガジンです。 毎月11日に発行されます。

　　　　　「あいだの力学」の気になる間の話
　　　　　　----------------------------　　2022/8/11

皆さま、こんにちは。

暑いですねえ。山の日の今日からお盆休みに入る方もおられるかと存じます。このメルマガはタイマー設定で配信しているので、毎回配信時の天候を予想しながら季節柄のあいさつ文を書いているのですが、ここしばらくは酷暑で体力的にもしんどい状況が続いていることと存じます。
そんなときには「暑い国」に住んでいる人たちの智慧を拝借。最近「インドのほうれん草」とも呼ばれる、つるむらさきをよく食ています。ちょっと人気がないのか近所のスーパーでは小松菜よりも安く、お値段も手ごろ。ちょっと独特の風味や粘り気もありますが、食べ慣れると美味しく感じるもの。栄養価が高いので、この夏は、つるむらさきをたくさん食べて酷暑を乗り切ろうと思ってます。はい。


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【今月の気になる間の話】


●「わたし」と「組合せ」のあいだがら(3)

これまで2回にわたって、わたし(和氣ひろゆき)のもう一つの職業である「ソフトウエアエンジニア」について書いた※1。ここまで書いてみて改めて感じたことは、自分は「説明するのが難しい職業」をしているということだ。もちろん物書きのプロが書けば、もう少し説明が簡単になるかもしれないけれども、どこをどう考えても「すっげー簡単」で「わかりやすい」ことには、なりそうにもない。

そういえば、サラリーマン時代にこんなことがあった。わたしが勤めていた会社では、毎年度の初めに自分のキャリアの棚卸と開発のため、会社側の所属技術者のスキルの管理のため、自己の保有技術をデータベースに登録することになっていた。

ある年のこと。いつものように自分の保有技術を登録したところ、当時の上司から呼び出しを受けた。

「和氣君、君の技術スキルの話なんだけど…ちょっと変えてもらえないかな？」

話を聴くと、わたしが登録した技術の領域があまりにも多いため、指導が入った※2とのこと。部署としては「○○技術」を保有していることになっているため、「○○技術」の周辺技術まではOKだけれども、周辺技術からも外れると部署としては説明がつなかくなるらしい。

その当時、種々の事情※3でぼくは通常の開発業務から外されており、もっぱら危機状態にあるプロジェクトを立て直す役割※4をしていた。自分としては色々なプロジェクトに係わっていたため、関わったプロジェクトで得られた技術を素直に登録しただけだし、なんだか納得がいかない。

「実際にやったことだし、仕組みの方がおかしいんじゃないですか？」
「でも和氣君、君、△△技術で特許書いていないでしょ！」

立て直しの対象となったプロジェクトが保有している△△技術を使って特許を書くなんて、なんだか技術をかすめ取る※5みたいでフェアじゃあない。結局どうにもこうにもいかず、上司の言うとおりに修正したのだった。

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気づくともう10年以上も前の話だ。その当時はなんだか貧乏クジを引いた感じがしていたが、身についた技術はしっかりと自分の中に残っている。枠に納まらないほど広範囲の技術に触れたからこそ、組み合わさるとどんなことが起こりそうか想像がつくし、「組合せの(絶)妙」みたいなことを感じることもできる。それらはおそらくインテグレータに必要なセンスで、今の「エンジニアとしての自分」を支えているのだと思う。

自分が「どういう人間なのか？」というのは、自分自身ではナカナカわからないものだ。コーチやカウンセラーとしての経験からしても、全くそのとおりだと思う。ただ、あえて自分の経験をふまえると、表現できないことが、本質がわかっていないからなのか、表現すること自体が難しいからなのか…この二つは全く意味が違うし、おそらく全く違う結果をもたらすということかもしれない。

その感覚を実地で学んだことも、きっと自分の財産となっているはずだ。

（ひろゆき）


※1 　「わたし」と「組合せ」のあいだがら(1)(2)
→ https://mail.os7.biz/b/3wK4/1503279
→ https://mail.os7.biz/b/3wK4/1512934

※2 　要は上司の上司、または人事からクレームがあったということ

※3 　そうなった経緯の詳細は下記のメルマガにまとめてあります
→ https://mail.os7.biz/b/3wK4/1208119

※4 　「危機状態」(＝赤信号)を「火が出た」と表現することから、立て直し役を「火消し」と呼んでいました

※5 　当時は青色LEDでの特許問題に関連し、特許のライセンス料をエンジニア個人に割り当てる傾向が強まった時期でもありました。これにより発明に「貢献した」だけでは、評価されなくなっていたのです。


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