相続・住替えなど「不動産を売る!」を考えたら読むメルマガ(No.126、2026年3月31日号)
◎老親の住まい(上) / 居住用不動産にならない「老人ホーム」 / 「前払金」贈与の対象になるケースも
就職や転勤、進学などで実家を訪れるケースが増える年度末。その際に実感するのが「親の存在」だ。老いた親の丸くなった背中を見て、介護施設への入居をそろそろ検討しなければならないものなのかと実感することもある。「終の棲家」(ついのすみか)を移すのに費用がかかるのは仕方がない。
しかし、税金面でも検討する必要があるのは意外に知らない。最期を迎えるかもしれない「終の住居」にかかわる課題は、夫婦や親子の間で曖昧にしてきた現実に向き合う機会でもある。老人ホームの入居と税金はどのようになっているのか――。
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◆夫婦で入所、片方の費用を負担「課税対象に」◆
有料老人ホームの料金は、入居一時金を含む「前払金」と、毎月料金が発生する「月額費用」となっているケースが多い。ここ数年、「前払金なし」の施設も増加しているものの、前払金の相場は数十万〜数千万円と幅がある。前払金が多ければ、相対的に月額費用の出費を低く抑えることができるというメリットもある。
ただ、夫婦のどちらか一方が配偶者の入居費用を支払う際には、贈与税などの税負担が発生する可能性がある。夫婦間では、生活費に充てる際の通常必要と認められる範囲での資金融通は、贈与税の対象外なのだが、過去の事例では配偶者が負担する多額の入居費用の支払いを巡り、課税となったケースがあるのだ。
◆高額な施設への入居、夫婦間の暦年贈与で入居費用の準備も◆
たとえば、婚姻期間20年以上の夫婦には、居住用不動産や居住用不動産の取得費用の贈与は2,000万円まで課税されない特例がある。しかし、老人ホームは「居住用不動産」の対象外。だからこそ入居費用を本人ではない配偶者が支出すると、贈与税の課税対象になるという理屈だ。
契約形態にもよるが、前払金が高額な施設への入居を検討する場合は、夫婦それぞれの資金を区分したうえで、費用を準備しておくといった工夫が必要になる。贈られる側一人につき年110万円までの非課税枠を持つ暦年贈与制度の活用は有効な選択肢の一つになる。
◆相続財産になる「前払金の返還分」◆
また、前払金は退去時返還が一般的なルールだが、現実には返還されないケースがほとんど。その意味で、前払金の返還制度に関する詳細な内容は、契約書類を熟読する必要がある。あっさり読み流してしまうと、後悔することになるから注意したい。
前払金は、施設側が平均余命などを基に設定した「想定居住期間」の家賃に充当し、相対的に月額費用を抑える効果がある。前払金の一部を想定居住期間後の家賃に充当する仕組みを採用している施設だと、前払金の一部を「初期償却」する施設もある。想定居住期間内に退去した場合、実際の居住期間に応じて一部を返還する仕組みだ。
その意味で、前払金の返還が確実に見込まれる場合には、入居の契約時に返還分の受取人を取り決める必要がある。入居者本人が前払金を支払い済みだと、相続が発生すれば返還分は相続財産となる。当然のことながら、遺産分割や相続税の対象になる。相続の申告時には忘れがちなので注意が必要となる。(つづく)
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