◆◇4月-6月は残業しない方が良い?◇◆
新人薬剤師のための働く法律
第7回
『4月-6月は残業しない方が良い?』
2023年5月15日
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新人薬剤師の皆さん、おはようございます。
薬剤師ttです。
新人薬剤師の皆さんは聞いたことがあるでしょうか?
「4月-6月は残業しない方が良い」
という話を。
実はこの話、都市伝説かと思いきや、
概ね正しいんです。
GWも終わり、新人薬剤師にとっては
ここからが本当の社会人生活のスタート。
それでも働いていく上では
絶対に知っておくべき知識ですので、
今回は簡単に解説していきます。
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いきなり話が飛んでしまいますが、
まず先に『標準報酬月額』について説明します。
社会保険に加入していると、
給与からは健康保険料や
厚生年金保険料が引かれます。
標準報酬月額とは、
健康保険料や厚生年金保険料を
算出する際に使用する金額のことです。
健康保険料であれば、
標準報酬月額に約10%の保険料率を
掛けた金額が健康保険料です。
例えば、標準報酬月額が50万円だった場合、
健康保険料は5万円です。
※半分は会社が負担してくれるので、
実際には2万5千円が給与から引かれます。
では、『毎月の給与=標準報酬月額』なのか。
これは微妙に違います。
例を挙げると、
給与が49万円の人も、51万円の人も、
標準報酬月額は50万円です。
※月の報酬が485,000~515,000の場合に、
標準報酬月額が50万円になります。
つまり、給与が49万円の人も51万円の人も、
健康保険料は毎月給与から
2万5千円引かれるということです。
さらに、標準報酬月額は一定のルールで決められ、
何も無ければ、その標準報酬月額が1年間続きます。
標準報酬月額50万円の人が、
1ヶ月だけ残業をたくさんして、
その月だけ60万円の給与を貰ったとします。
その場合でも、引かれる健康保険料は
2万5千円で変わらないということです。
なんとなくイメージはつかめたでしょうか。
標準報酬月額については以下のブログ記事で、
より詳しく解説していますので、もし良ければ読んでみてください。
https://adoyakunikki.com/pharmacist/archives/2490
◆◇◆◇
ここで、多くの人が考えると思います。
「なんで、そんな面倒なことするんだろう?」
「毎月の給与に保険料率を掛けて
計算すれば良いんじゃないの?」
その考えも分かります。
しかしながら、普通に働いていると、
多くの人は毎月給与が変動します。
残業が0時間ということはあまり無いからです。
毎月変動する給与に保険料率をかけるため、
健康保険料や厚生年金保険料も毎月変動する。
恐ろしく面倒だと思いませんか?
そこで標準報酬月額の出番です。
一定のルールで標準報酬月額を決め、
保険料率を掛けて保険料を算出します。
何も無ければ標準報酬月額は
1年間変わらないため、
保険料も1年間変わりません。
これが標準報酬月額の仕組みです。
◆◇◆◇
さて、前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、
今回のテーマである、
「4月-6月は残業しない方が良い?」
です。
すでに予想が付いてる方も多いと思いますが、
標準報酬月額を決める、
一定のルールが関係してきます。
標準報酬月額の決定方法で最も一般的なのが
『定時決定』
というもので、4月、5月、6月の3ヶ月間の報酬の平均で決まります。
4月の給与:50万円
5月の給与:51万円
6月の給与:52万円
だった場合、平均は51万円となり、
標準報酬月額は50万円となります。
※平均が485,000円~515,000円の場合に、
標準報酬月額は50万円になります。
この定時決定があるために、
4月-6月の給与が多いと標準報酬月額が高くなる
⇒標準報酬月額が高いと、1年間支払う保険料も高い
⇒4月-6月は残業しない方が良い
という話になります。
◆◇
しかし、ここで一つ思い出してください。
定時決定は、
「4-6月の3ヶ月間に支払った報酬の平均」
です。
では、4月、5月、6月の給与は、
何月の労働に対する給与でしょうか。
会社にもよりますが、翌月払いの場合、
4月の給与は3月の労働
5月の給与は4月の労働
6月の給与は5月の労働
に対する給与だと思います。
なので、
「4月-6月は残業しない方が良い」
というのは少し間違っていて、正確には
「4月-6月の給与の元となる月は、
残業しない方が良い」
となります。
まずは、自分の会社の毎月の給与が、
何月の労働に対する給与なのか、
確認してみましょう。
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Q.1 新卒で4月から働き始めた場合はどうやって計算するの?
A.1 給与を5月と6月にしか貰ってない場合は、5月と6月の給与の平均になります。
Q.2 給与と報酬って何か違うの?
A.2 法律によって微妙に定義が異なるのですが、
今回の記事においては同じものと捉えてもらって大丈夫です。
あとがき--------------------
いかがだったでしょうか。
「4月-6月は残業しない方が良い?」
というテーマでしたが、結論としては
「4月-6月の給与の元となる月は、
残業しない方が良い」
となりました。
そして多くの会社では
「3月-5月は残業しない方が良い」
となります。
保険料が高くなるのが嫌なら、
5月は残業しないように頑張りましょう(笑)
しかし、ここで考えなくてはならないのが、
「健康保険料や厚生年金保険料は
本当に安い方が良いのか?」
ということです。
給与の手取りが減ってしまうので、
保険料は安い方が良いと思うかもしれません。
しかし、場合によっては
保険料が高い方が得することもあるんです。
その辺りのことについても、
いつかメルマガにできたらと思ってます。
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