◆◇高額療養費制度、きちんと説明できる?◇◆
新人薬剤師のための働く法律
第16回
『高額療養費制度、きちんと説明できる?』
2023年7月17日
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新人薬剤師の皆さん、おはようございます。
薬剤師ttです。
薬剤師として働いていく上で、
知っておきたいのが『高額療養費制度』。
皆さんも聞いたことありますよね?
この制度、適応となる患者さんが思っているより多いです。
しかしながら、薬剤師は気付かずにスルーしてることも多々あります。
もちろんスルーしても問題はないのですが、
何か聞かれた時に答えられないのは問題です。
そんなわけで、今回は高額療養費制度について
簡単に紹介します。
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高額療養費制度を簡単に説明すると、
『高額の医療費がかかったときに、
上限を設定して自己負担を抑える制度』
です。
たまに患者さんで、高額療養費制度と、
確定申告の医療費控除とを間違えてる人がいるので、
気付いた時には教えてあげましょう。
◆◇同一月の医療費で判断◆◇
まず初めに、高額療養費制度は、
同一月にかかった医療費で判断します。
同一月に2回受診した場合は、その合計額ということです。
例えば、30日分処方で毎月受診してしまうと限度額に達しない場合、
60日分処方にして限度額に達するよう、
処方してくれる医師もいたりします。
薬局が月に1回レセプトを送ってることを思い出せば、
この辺りは理解しやすいと思います。
◆◇自己負担の上限額◆◇
自己負担の上限額は、年齢と所得金額によって決まります。
年齢:70歳以上か未満か
所得金額:大まかに5段階
上記の通りに区分けされます。
◆◇
例えば70歳未満で、
所得金額が区分ウとされる5段階中3段階目の区分は、
健保:標準報酬月額 28万~50万円
国保:賦課基準額 210万円~600万円
となっています。
健保(社保の人)で基準となるのは、
以前にも学んだ標準報酬月額ですね。
皆さんも、この区分ウに当てはまる人が多いのではないでしょうか。
この区分ウの自己負担上限額は
80,100円+(医療費-267,000)×1%
という計算式になります。
分かりやすく薬局での例を挙げると、
患者さんの薬局での医療費が100万円だったとします。
この時、高額療養費を考えなければ、
自己負担3割で、30万円の支払いになります。
しかし高額療養費を考えると、
80,100円+(1,000,000-267,000)×1%
=87,430
となり、本来の自己負担が30万円のところ、
87,430円で済むということになります。
◆◇
では70歳以上の場合はどうなるかというと、
実は大きな違いはありません。
標準報酬月額28万円~の人は、
医療機関での自己負担が3割となります。
こういった人を「現役並み所得者」といいます。
この「現役並み所得者」に関しては、
上限額は70歳未満と同じです。
一方で、医療機関での自己負担が2割負担や1割負担の人は、
「一般所得者」や「低所得者」といいます。
薬局のレセコンでも、こういった振り分けをするはずです。
このような人たちの場合には、
上限額の考え方が変わってきます。
文字だけで説明するのは少し難しいので、
ぜひインターネットで調べてみてください(笑)
◆◇多数回該当◆◇
さらに医療費の自己負担を軽減する仕組みとして、
多数回該当というものがあります。
これは、過去12か月以内に3回上限額に達していた場合、
4回目からは多数回該当となり、上限額が更に下がる仕組みです。
例えば、先ほどと同じく70歳未満の区分ウだった場合、
多数回該当の上限は44,400円となります。
通常の上限額の半額程度となっていますね。
この44,400円という金額、薬局で働いてると、
割と見る機会が多いです。
これは、所得金額的に区分ウとなる患者さんが多く、
多数回該当で上限額に達した時には、
みんな44,400円となるからですね。
◆◇限度額適用認定証◆◇
高額療養費制度では、自己負担分を全て支払ったうえで、
後から申請することにより、限度額を超えた金額が払い戻されます。
しかし、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受け、
医療機関で保険証と一緒に提示すると、
限度額までしか支払わなくて済みます。
そうすることで、申請して払い戻しを受ける必要もなく、
経済的な負担等を減らすことができます。
あとがき--------------------
いかがだったでしょうか。
高額療養費制度について、何となく分かっていたようで、
実は知らなかったことも多いのではないでしょうか。
本当にしっかり説明しようとすると、
世帯合算など、もっともっと色んな話があります。
さすがにそこまで完璧に知っておく必要は無いと思うので、
もし患者さんから質問があった場合には
ある程度の概要を説明してあげましょう。
そして詳細については、役所に確認してもらうのが一番だと思います。
餅は餅屋、よくいえば多職種連携ってやつですね(笑)
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