◆◇異動を断ることは可能?◇◆
新人薬剤師のための働く法律
第23回
『異動を断ることは可能?』
2023年9月4日
□■□----------------------□■□
新人薬剤師の皆さん、おはようございます。
薬剤師ttです。
9月になりましたね。
働き始めてもうすぐ半年が経ちます。
仕事の調子はどうですか?
会社によっては応援(ヘルプ)業務が
始まっている頃でしょうか。
場合によっては店舗異動も・・・
そこで今回は、
「会社から異動をお願いされたら断れる?」
というテーマになります。
先に結論を述べておくと、
『基本的には断ることが出来ません』
----------------------------
◆◇人事異動の種類◆◇
人事異動には、主に4つの種類があります。
・転勤:勤務地を変更すること
・配置転換:業務内容を変更すること
・出向:同じ会社に所属したまま、
長期間他の会社の業務に従事すること
・転籍:会社を退職し、新しく別の会社と
雇用契約を結ぶこと
異動と聞いてイメージするのは転勤だと思います。
薬局やドラッグストアだと、
別の店舗に異動という話が結構ありますよね。
配置転換も、稀にですがあります。
店舗で薬剤師として働いていた人が、
本社で人事などの部署に異動するケースです。
出向や転籍はかなり考え方が変わってくるので、
今回は薬局やドラッグストアで多い、
転勤と配置転換について考えていきます。
◆◇人事異動は拒否できない◆◇
日本の会社は、簡単には従業員を解雇できません。
これについては何となく聞いたことがあると思います。
そして、間違っていません。
ただ、この事と表裏一体の関係で、
会社には人事異動に対して広い裁量があります。
簡単には解雇しない代わりに、
転勤や配置転換を自由に指示できるわけです。
◆◇
そして、正当な人事異動を拒否した場合には、
会社は従業員を解雇することができます。
従業員は働くことで給料を貰っています。
正当な人事異動を拒否して働かない場合には、
会社は解雇できるということです。
ただここで大切なのが、
『正当な』人事異動ということです。
この人事異動が『正当』かどうかで
揉めるケースが多く、裁判となることもあります。
ではどういった人事異動が『正当』なのでしょうか。
◆◇就業規則や雇用契約書◆◇
まず、就業規則や雇用契約書を確認します。
◆就業規則◆
業務上の都合で必要となった場合に、
異動を命じることがある、
といった旨の記載があるかどうかを確認します。
この文言が無ければ異動が不当
というわけでは無いですが、
あるか無いかで大きく変わってきます。
異動の可能性があるような会社では、
まず間違いなく記載してあるはずです。
◆雇用契約書◆
次に雇用契約書では、
「転勤はない」
「職種は薬剤師に限る」
などの記載があるかどうかを確認します。
雇用契約書にこのような限定的な文言がある場合、
異動は不当となる可能性が高くなります。
一方で、
「勤務地は〇〇」
「担当業務 薬剤師」
のような書き方の場合は、
限定的な文言ではありませんので、
これだけで異動が不当とは言いにくくなります。
◆◇異動の必要性◆◇
次に、その異動が本当に必要がどうかが大切です。
「本社でDI担当として働いてもらいたい」
「店舗での人間関係が上手くいかなかったため」
「他店舗で人が不足しているため」
このように、異動の必要性が本当にある場合は正当といえます。
◆◇
一方で、そもそも異動の必要性が無い場合には正当とは言えません。
「必要性も無いのに異動することなんてあるの?」
と思うかもしれません。
多いのが、
「上司に逆らったので遠方の店舗へ異動」
のような、報復的な動機・目的の異動です。
こういった場合には、異動は権利の濫用であり不当と考えられます。
また、異動の必要性があったとしても、
通常受け入れられる程度を著しく超える不利益を負う場合。
そういった場合にも、
権利の乱用と考えられる可能性があります。
◆◇判例◆◇
異動に関する判例は数多くあり、
医療機関での判例もあります。
ある病院で医療事務として採用された人が、
ナースヘルパーへの異動を命じられましたが、
裁判の結果、無効となりました。
敢えて事務職として働いてきた人を配置転換する
合理的な理由がなく、働く人に通常は
受け入れられないような不利益が生じる
というのが無効となった理由です。
----------------------------
以上まとめると、
①就業規則に異動の可能性について記載がある
②雇用契約書に勤務地や職種を限定する文言がない
③異動に必要性がある
④異動に不当な動機はない
⑤通常受け入れられる程度の不利益を超えていない
この5個の条件を満たしている場合、
基本的には異動が断れません。
一方で、満たしていない場合には、
異動を断れる可能性があります。
あとがき--------------------
いかがだったでしょうか。
今回は異動について書いてみました。
断れる、断れない、について法律や判例を根拠に書いていますが、
法律的にどうだ、判例はどうだとなる前に、
まずは上司と相談して決められるのが一番です。
会社と従業員が揉めても、
誰も得しないですからね。
ただ上司と相談するときに、
法律や判例ではこうなっている事を知っておくと、
相談の流れが少し良くなると思います。
もし何か気になる事があれば、
お気軽にご相談ください。
★質問・問い合わせはこちらから★
https://adoyakunikki.com/pharmacist/contact2
------------------------------
メールマガジン:新人薬剤師のための働く法律
【発行者】:薬剤師tt(いちかわ社会保険労務士事務所)
【事務所住所】:千葉県市川市妙典5-13-33 A&Yビル3F-40
【事務所HP】:https://ichikawa-sr.com/
【Twitter】:https://twitter.com/yakuzaisitetu
【ブログ】:https://adoyakunikki.com/pharmacist/
【メールアドレス変更】:https://mail.os7.biz/mod/3lWC
【購読解除】:https://mail.os7.biz/del/3lWC
------------------------------
記事一覧
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第51回 『法律の使い方・考え方』 2024年3月25日 □■□---------------------
2024年03月25日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第50回 『資格を取得するなら教育訓練給付制度』 2024年3月18日 □■□--------------
2024年03月18日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第49回 『育休の基礎知識』 2024年3月11日 □■□----------------------□■
2024年03月11日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第48回 『産休の基礎知識』 2024年3月4日 □■□----------------------□■□
2024年03月04日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第47回 『退職後の健康保険どれがお得?』 2024年2月26日 □■□-----------------
2024年02月26日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第46回 『再就職手当を知ってますか?』 2024年2月19日 □■□------------------
2024年02月19日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第45回 『退職後の手当を知って得しよう!』 2024年2月12日 □■□----------------
2024年02月12日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第44回 『1年は仕事を続けるべき理由』 2024年2月5日 □■□-------------------
2024年02月05日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第43回 『有休を使ったら給与が減る!?』 2024年1月29日 □■□-----------------
2024年01月29日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第42回 『今更だけど働き方改革って何?』 2024年1月22日 □■□-----------------
2024年01月22日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第41回 『薬局携帯を持つ時間は労働時間?』 2024年1月15日 □■□----------------
2024年01月15日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第40回 『年末調整って何してるの?確定申告との違いは?』 2024年1月8日 □■□----------
2024年01月08日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第39回 『社保と国保の違いを改めて紹介』 2023年12月25日 □■□----------------
2023年12月25日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第38回 『社保適用になる人・ならない人』 2023年12月18日 □■□----------------
2023年12月18日
□■□----------------------□■□ 新人薬剤師のための働く法律 第37回 『ボーナスの減額は違法ですか?』 2023年12月11日 □■□----------------
2023年12月11日