◆◇過労死ラインを知ってる?◇◆
新人薬剤師のための働く法律
第30回
『過労死ラインを知ってる?』
2023年10月23日
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新人薬剤師の皆さん、おはようございます。
薬剤師ttです。
もう2年前の話ですが、過労死の認定基準が
20年ぶりに見直されました。
色々と話題になったこともあり、
ニュース等で耳にした人もいるのではないでしょうか。
とはいっても実際のところ、
「過労死?認定基準?何それ美味しいの?」
って感じですよね。
薬剤師だと、なかなか過労死レベルまで
働いてる人はいません。
しかし過労死レベルまでは働かないにしても、
自分の労働時間がどの程度なのか、
再確認してみる良い機会かと思います。
そんなわけで今回は、過労死について
簡単に紹介しようと思います。
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◆◇過労死ラインとは◆◇
まず初めに、過労死ラインについてです。
そもそも過労死については、
過労死等防止対策推進法第2条において、
「過労死等」を以下の通り定義しています。
(1)業務における過重な負荷による脳血管疾患
もしくは心臓疾患を原因とする死亡
(2)業務における強い心理的負荷による
精神障害を原因とする自殺による死亡
(3)死亡には至らないが、これらの
脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
とはいっても、薬剤師の皆さんなら分かると思いますが、
脳血管疾患や心臓疾患、精神障害が、
業務に起因すると判断するのは非常に難しいですよね。
他にも様々な要因が絡んできますから。
しかし、どうにかして業務に起因するかどうかを
判断する必要があります。
なぜなら、業務に起因するのであれば
労災扱いとなるからです。
労災扱いとなると
様々な給付を受けることができます。
そのため、病気や死亡、自殺が、
業務に起因するものだと認定する基準を、
国が公表しています。
また、公表されている基準の中で、
長期間の労働について考える場合には、
時間外労働の時間が具体的に示されています。
これが過労死ラインです。
◆◇◆◇
ではその過労死ラインとは、
具体的にどういったものになるのでしょうか。
過労死ラインは大きく2つあり、
・発症前1ヵ月間に、1ヶ月当たりの時間外労働が
100時間を超えること
・発症前2~6ヵ月間にわたって、
1ヶ月当たりの時間外労働が80時間を超えること
この2つのいずれかに当てはまる場合、
業務に起因するものだと認定されます。
薬剤師でこのレベルまで働くことは、
なかなか無いのではないでしょうか。
◆◇◆◇
では今回、過労死認定基準が
どのように見直されたのでしょうか。
実は、過労死ラインそのものが変更に
なったわけではありません。
過労死ラインを超えていなくても、
過労死ラインに近い時間外労働があり、
労働時間以外の負荷が認められる場合には、
労災認定されるようになったのです。
少し考えれば分かることですが、
長時間労働以外にも、精神的・肉体的に
負担の大きな要素ってありますよね。
例えば、
・身体的負荷の大きな業務
・1日の労働時間は長くないけれど、
週7日働く職場
・シフト制の影響で、夜遅くまで働き、
翌日の出勤が朝早いことの多い職場
他にも色々考えられると思いますが、
こういった要素も、過労死認定において
考慮されるようになりました。
◆◇◆◇
ここまで、過労死認定基準が変更になった
ことについて書いてきました。
国としての基準が変更になったのは今回ですが、
裁判においては、過去に労災が争われ、
過労死ラインを超えていなくても、
過労死とされた裁判例もあります。
看護師がくも膜下出血で亡くなったケースですと、
1ヶ月間の残業時間が50~60時間以内だったにも関わらず、
看護師の不規則な交代制勤務も考慮され、
大阪高裁で過労死として認定しました。
今回の過労死認定基準の変更は、
働く人達の実態に対して、
国が遅れて合わせていったような形になります。
とはいっても、実際に国が基準を改めて公表することは、
とても大切なことだと思います。
裁判で争うのも、簡単なことではないですから。
あとがき--------------------
いかがだったでしょうか。
過労死というものの扱いについて、
なんとなくイメージできたでしょうか。
最初にも書いた通り、
薬剤師で過労死ラインまで働いている人は、
ほとんどいないと思います。
しかし、裁判例でも書いた通り、
過労死ラインに達していなくても、
過労死と認められているケースもあります。
特に医療職は、精神的な負担も大きな職業です。
過労死を他人事と捉えず、
自身の精神的・肉体的ケアには
しっかり気を使って働くようにしましょう。
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