◆◇マクロ経済スライドって知ってる!?◇◆
新人薬剤師のための働く法律
第33回
『マクロ経済スライドって知ってる!?』
2023年11月13日
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新人薬剤師の皆さん、おはようございます。
薬剤師ttです。
前回のメルマガでは、貰える年金額が
『物価』や『賃金』で増減することを紹介しました。
今回のメルマガでは、年金額増減のもう1つの仕組みである
『マクロ経済スライド』について紹介します。
『マクロ経済スライド』は、難しそうな言葉をしてますが、
実際に難しいです(笑)
年金を多少勉強した人でも、
マクロ経済スライドは無かったことにしてる人が多いです(笑)
そんなマクロ経済スライドについて、
今回のメルマガでは詳細は割愛しつつ、
年金額をどういう仕組みで増減させるのか簡単に紹介します。
我々現役世代のための仕組みとも言えますので、
興味ある方はぜひ読んでみてください。
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◆◇マクロ経済スライドとは◆◇
日本の年金制度は世代間扶養のため、
保険料と年金給付額のバランスは常に気を使う必要があります。
2004年より以前の年金制度では、
まず将来の保険料による収入の見通しを算出した上で、
改めて年金給付額の水準と当面の保険料負担を見直し、
法律で定めていました。
しかし少子高齢化が進む中で、
保険料負担の見通しは上がり続け、
将来の保険料がどこまで上がるか分からないような状況でした。
そこで2004年の改正で、
将来の保険料負担が重くなりすぎないよう、
保険料率の上限を法律で定めました。
現在の厚生年金の保険料率は
標準報酬月額の18.3%となっており、
これ以上は上がらないよう定められています。
国民年金についても同様です。
一方で、少子高齢化が続く中、
保険料に上限が定められるということは、
年金給付額を上手く調整する必要があります。
そのために、
・現役世代の人口推移
・平均余命の伸び
この2つをマクロでみて、年金支給額の水準を
自動で調整する仕組みが導入されました。
この仕組みがマクロ経済スライドです。
◆◇具体的な仕組み◆◇
次に、マクロ経済スライドの仕組みについて、
もう少し具体的に紹介します。
マクロ経済スライドでは、
・現役世代の人口推移
・平均余命の伸び
から『スライド調整率』というものを算出します。
現役世代の人口は減り続けるため、
保険料という収入は減り続けます。
一方で平均余命は少しずつ伸びているため、
年金給付という支出は増えます。
この収入と支出のバランスを取るための
調整に必要な数字です。
そして、物価や賃金の上昇によって
年金額が上昇する時に、
スライド調整率を差し引き、年金額の上昇を抑える。
これがマクロ経済スライドの仕組みです。
◆2019年の例◆
実際にマクロ経済スライドが実施された
2019年を例に見てみます。
2019年は、物価や賃金の上昇から、
年金額は本来であれば0.6%上昇する予定でした。
しかし、マクロ経済スライドによって0.5%差し引かれ、
実際の年金額は0.1%上昇となりました。
このようにして、収入と支出のバランスを
調製していくのがマクロ経済スライドです。
◆◇マクロ経済スライドの問題点◆◇
現役世代として保険料を納める我々にとって
ありがたいマクロ経済スライドですが、
問題点もあります。
それは、マクロ経済スライドが、
年金額が上昇する時にしか発動しないということです。
例えば、物価と賃金の関係から年金額が低下する年には、
マクロ経済スライドによって
更に下げ幅を大きくはしません。
このルールにより、実際のところ、
マクロ経済スライドはまだ4回しか発動していません。
2015年、2019年、2020年、
そして今年2023年の4回です。
物価と賃金の変動から年金額も変更される。
つまり、そもそも日本の景気が良好でなければ、
マクロ経済スライドは発動しない仕組みなのです。
様々な要因から、日本の景気は良好でない期間が長く、
マクロ経済スライドが導入された2004年の想定よりも、
調整が進んでいないのが現実です。
あとがき--------------------
いかがだったでしょうか。
今回はマクロ経済スライドについて紹介しました。
現役世代の負担を減らしてくれるマクロ経済スライドですが、
実際にはまだ4回しか実施されていません。
しかし、こういった現役世代のための仕組みが
年金制度の中にもあることを知ると、
少し年金に対する印象も変わるのではないでしょうか。
とはいっても、我々が将来年金を貰うころには、
年金だけでは生活できない時代になっているのは
間違いありません。
というか、今ですら怪しいです(笑)
そんなわけで次回は、
将来の年金を増やすための制度である
『確定拠出型年金』について紹介しようと思います。
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