第338号★「多数決」で債務が整理できるように ― 12月施行予定の新法・早期事業再生法/「原価計算」しているのに、なぜ「儲け」が出ないのか?―コストを見える化する「ABC」入門/今年も早7月、折り返しですね【税理士 神佐真由美】
税理士の神佐真由美です。
今日もご開封いただき、ありがとうございます。
本日のメルマガの内容です。
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1. 「多数決」で債務が整理できるように ― 12月施行予定の新法・早期事業再生法
2.現在&これから公募の補助金
3.おすすめ書籍 「原価計算」しているのに、なぜ「儲け」が出ないのか?―コストを見える化する「ABC」入門
4.セミナー&イベント情報
5.活動日記 今年も早7月、折り返しですね
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NotebookLMというAIで今回のメルマガをポッドキャスト風にしました。
https://notebooklm.google.com/notebook/b4e30dc1-4c44-45ee-b5f1-d97e505dafd1/artifact/49640587-9890-48a8-b7c0-4862c952d494?utm_source=nlm_web_share&utm_medium=google_oo&utm_campaign=art_share_1&utm_content=&utm_smc=nlm_web_share_google_oo_art_share_1_
1.「多数決」で債務が整理できるように ― 12月施行予定の新法・早期事業再生法
「金利の支払いで精一杯」 「このままでは数年後が心配」
そんな漠然とした不安を抱えている経営者の方は少なくないと思います。
実際、東京商工リサーチの調査では、自社の債務について「過剰感がある」と答えた企業は26.0%にのぼります。
特に中小企業でその傾向が強いとされています。
こうした中、2026年12月11日に施行される新しい法律「早期事業再生法」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/index.html
(正式名称:円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律)
が注目を集めています。
日経新聞:企業債務、多数決で減免 「2年後に倒産恐れ」目安
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO97164410V20C26A6EP0000/
もちろん、このような事態に陥らないことに越したことはないですし、使わなくて済むならそのほうがいいです。
今回は、資金繰りに行き詰まる際に取りうる選択肢を整理し、
この新制度がどのような位置づけにあるのか、これまでの制度とは何が違うのかをご紹介します。
※円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律に関するQ&A
https://www.meti.go.jp/files/000001844.pdf
1)資金繰りがいよいよ厳しくなったとき、企業が取れる選択肢は?
まず全体像を押さえたいと思います。
債務を整理する方法は、大きく分けると「私的整理」 「法的整理」
そして今回新設される「早期事業再生法」の3種類に分けられます。
それぞれの違いを簡単に見ていきます。
私的整理は主に下記の3つです。
・任意の私的整理(純粋私的整理)
債権者と直接交渉し、全員の同意を得て進める最もシンプルな方法です。
自由度は高い一方、第三者機関が関与しないため公正性を証明しづらく、金融機関の理解を得にくいという弱点があります。
・準則型私的整理手続(事業再生ADR、中小企業活性化協議会、中小企業の事業再生等に関するガイドラインなど)
中立的な第三者機関が関与し、非公開で進められるため、取引先に知られにくいのがメリットです。
ただし原則としてすべての債権者の同意が必要で、1社でも反対すると不成立になりやすいという課題があります。
・特定調停
裁判所の調停委員会が関与し、当事者間の合意形成を後押しする手続きです。
裁判所を使いますが、法的整理に比べれば簡易な手続きといえます。
ただし合意形成には限界もあります。
そして法的整理(民事再生・会社更生)です。
裁判所が主導し、多数決(手続きにより異なりますが、頭数の過半数かつ債権額の2分の1超など)で進められます。
原則すべての債権者が対象となり強制力は強いですが、
「法的整理に入った」という事実が公になりやすく、取引先の信用不安や手続きの重さ・時間的コストが大きいのが難点です。
早期事業再生法(新制度)・・・今回新設される制度です。
「指定確認調査機関」という中立的な第三者機関が関与し、
対象は金融機関等の金融債権のみ(取引先への支払いである商取引債権は対象外)。
そして最大の特徴は、金額ベースで4分の3以上の同意があれば手続きを進められる「多数決」の仕組みです。
私的整理の「話し合いの柔軟さ・非公開性」と、法的整理の「多数決による決着力」の、
いいとこ取りを狙った制度といえます。
なぜこの新しい制度が必要だったのでしょうか。
これまでの私的整理(事業再生ADRなど)は、すべての債権者の同意が必要でした。
1社でも首を縦に振らなければ手続きが不成立になってしまうため、実際には利用が伸び悩んでいました。
事業再生実務家協会によると、事業再生ADRの申請企業数は2023年度の46社をピークに急減し、2025年度はゼロだったとされています。
一方で、民事再生などの法的整理は多数決で進められる反面、取引先の信用不安や従業員の動揺を招きかねません。
早期事業再生法は、この「私的整理の限界」と「法的整理の重さ」の間を埋める“第3の手続き"として設計されています。
日本経済新聞の報道でも、経済産業省がこの制度を「裁判所主導の法的整理」とも
「当事者間の合意に基づく私的整理」とも異なる位置づけとして説明していることが紹介されています。
2)どんな会社が使えるのか?
早期事業再生法の対象になるかどうかを考えるうえで、まず知っておきたいのが「経済的に窮境に陥るおそれ」という要件です。
経済産業省のQ&A集(2026年6月公表)では、次のような状態が目安として示されています。
・2年以内に支払不能に陥る可能性が高い場合
・低い収益または赤字の状態が続いており、将来的に元本の返済ができなくなるリスクがある場合
(収益で金利を払うのがやっとの状態や、資産を切り崩して返済している状態など)
重要なのは、これらは「早期に手を打つべき企業」の目安であって、
まだ実際に資金繰りが破綻していなくても利用を検討できるという点です。
むしろ「一時的に業績が悪化したが将来性はある」 「成長余地はあるが投資余力がない」といった企業こそ、
早めの活用が想定されています。
また、この制度は以下のような特徴を持ちます。
・対象となる企業:法人格の有無や企業規模を問いません。個人事業主でも、大企業でも利用対象に。
・対象となる債権者:銀行、信用金庫、保険会社、貸金業者など「金融機関等」に限定。
取引先への支払い(商取引債権)は対象外なので、仕入先や外注先との関係は基本的に維持されます。
この点は、取引先の信用不安を招きにくいという私的整理のメリットを引き継いでいます。
3)早期事業再生法のポイント
経済産業省のQ&A集をもとに、経営者として押さえておきたい実務上のポイントを整理しました。
・4分の3の同意で決着できる(多数決の力)
金額ベースで4分の3以上の同意があれば、反対する債権者がいても計画を進めることができます。
(一部、特定の債権者が総額の4分の3以上を持つ場合は追加要件あり)
全員同意が原則だった私的整理のボトルネックを解消する、この制度の核心的なメリットです。
・手続きの大まかな流れ
指定確認調査機関(中立的な第三者機関)に確認を申請し、
確認が下りると債権者による個別の回収行為が一時停止されます。
その後、対象債権者に説明する会議を2回開催したうえで早期事業再生計画を提出し、
対象債権者集会での決議(4分の3以上の同意)を経て、裁判所が認可することで効力が発生します。
私的整理より手続きが明確化されている一方、法的整理ほど重くない設計になっています。
・リース料も減免の対象になり得る
これまでの私的整理では、リース料の減免は理屈上可能でも、算定が難しく実際にはあまり対象にならないケースが多くありました。
今回のQ&A集では、契約期間中に解約できない(中途解約禁止)こと、
リース料の総額が対象資産を購入する場合の価格のおおむね90%を超えることといった目安が示され、
対象範囲が明確になっています。
工場の設備や車両などをリースで導入している企業にとっては、見逃せないポイントです。
・少額の債権は早めに払ってしまってよい
手続きを円滑に進めるため、少額の債権(担保で保全されていない部分)については、
事業の再生に支障がない範囲で早期に弁済することが認められています。
取引の数が多い小口のリース債権などを念頭に置いた仕組みで、事務負担の軽減につながります。
・手続き中でも運転資金が借りやすくなる工夫
事業再生の手続き中は、運転資金の確保がとても重要です。
この制度では、手続き中の借入れについて指定確認調査機関の確認を受けておくことで、
万が一その後に法的整理に移行した場合でも、
その借入れを優先的に返済してもらえる可能性が高まる仕組みが用意されています。
金融機関としても新規融資に応じやすくなるため、結果として企業の資金繰りを支えることにつながります。
・従業員への配慮も制度に組み込まれている
リストラや賃金カットを伴う場合には、労働組合(または従業員の過半数代表)に対して、
計画提出の2週間前までに通知することが求められます。
従業員の理解と協力を得ながら進めることで、人材や技術の流出を防ぐ狙いがあります。
・中立的な第三者機関がチェックする安心感
手続き全体を「指定確認調査機関」という第三者機関が監督・調査します。
事業再生の実務経験を持つ専門家が選ばれる仕組みになっており、恣意的な運用を防ぐ公正性が担保されています。
(想定される担い手として、事業再生ADRを運営する事業再生実務家協会などが挙げられています)
・経営者保証ガイドラインとの併用も可能
会社の債務について経営者個人が連帯保証をしているケースは中小企業では珍しくありません。
早期事業再生法は「経営者保証に関するガイドライン」の対象となる私的整理手続にも該当するため、
条件を満たせば、会社の債務整理と合わせて経営者個人の保証債務の整理も進められます。
・債権者側にも一定の安心材料がある
債権者(金融機関)にとっても、
「破産した場合の回収見込み額を下回らない」という清算価値保障の原則が担保されているため、
合理性のない不利な合意を強いられる心配は限定的です。
これは、多数決に反対した債権者を含めた「公正さ」を担保する仕組みでもあります。
4)まとめ
早期事業再生法は、2026年12月11日の施行を待つ新しい制度です。
制度の詳細や指定確認調査機関の情報は、経済産業省の特設ページ(事業再生・事業承継関連情報)で随時更新される見込みです。
もし、この制度が気になるのでしたら、
・資金繰り表を作成・更新し、2年先までの見通しを定期的に確認する
・ 「経済的に窮境に陥るおそれ」の目安(2年以内の支払不能リスクなど)に該当しそうな場合は、
早めに顧問税理士や中小企業活性化協議会などの専門家に相談する ことをおすすめします。
「これまでの手段に加え、早めに手を打てる制度ができた」
そう前向きに捉え、資金繰りの不安を一人で抱え込まず、早めの相談・準備につなげていただければと思います。
2.現在&これから公募の補助金や融資制度
・・【大阪府限定】中小企業の賃上げ促進支援について
賃上げのための財源をつくるための取組を支援する補助金が複数あります。
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110050/keieishien/chinagepackage.html
・https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html
社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況の悪化を来している事業者が経営基盤の強化を図るために活用する資金の融資制度です。
今回の中東情勢の影響を受ける方についても、ご相談を受け付けています。
・中小企業新事業進出補助金 (次は第5次公募)
既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援
https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/
・デジタル化・AI導入補助金2026(第3次7月21日締切)
https://it-shien.smrj.go.jp/
・中小企業省力化投資補助金(一般型は第7次公募7月31日締切)
https://shoryokuka.smrj.go.jp/
中小企業等のみなさまの売上拡大や生産性向上を後押しするため、
IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援いたします。
カタログ型と一般型があります。
カタログ型は締切がなく、随時申請です。
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第23次公募8月上旬締切)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
・小規模事業者持続化補助金(11月15日締切)
一般型
https://r6.jizokukahojokin.info/
創業型
https://r6.jizokukahojokin.info/sogyo/
・支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/index.html
地域の公募情報も手に入ります。
中東情勢に関する支援情報 | -中東情勢に関する支援情報 |
https://j-net21.smrj.go.jp/chuto_josei/index.html
・近畿経済産業局「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」
https://www.kansai.meti.go.jp/
・中東情勢関連対策ワンストップポータル(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/chuto_josei/index.html
3.おすすめ書籍
「原価計算」しているのに、なぜ「儲け」が出ないのか?―コストを見える化する「ABC」入門
著:林 總さん
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784534056054
(本の紹介より)
『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』などのベストセラーを著書にもち、会計を知り尽くした林總氏が、
30年超のコンサル経験から築き上げた「原価計算」の超実践的ノウハウをストーリー形式で公開します。
◎読むだけで、会社経営に役立つ原価計算の知識が身につく
会計分野の中でも、特に原価計算に対して難解なイメージをもつ人は多いと思います。
しかし、各製品の原価算定はもちろん、販売価格の設定、製品やサービスの開発、新規取引の検討など、経営上のさまざまな意思決定において、原価計算の情報は欠かせません。
本書は、会計に苦手意識をもつ人でも、ストーリーを楽しみながら、
原価計算の基礎知識をしっかり身につけることができる一冊です。
総合原価計算は役に立たない―。経営に使える原価計算はABCだけ!
伝統的な総合原価計算の理論と欠陥とともに、会計のプロが35年超の経験から築き上げた、
ABCの考え方と導入時のノウハウを、わかりやすく大公開!
★手に取ったきっかけ
著者のファンです。
また、コストを見える化するABC(活動基準別原価計算)についてのセミナーをする予定でして、
その研究のために類書を取り寄せておりました。その中でもわかりやすい本です!
★おすすめポイント
・原価計算が必要な工場などをお持ちのメーカーの企業におすすめ。
・総合原価計算の落とし穴と、有効な原価計算の形が分かります。
・損益計算書や製造原価報告書でわかるのは「金額」だけ。
ABC(活動基準別原価計算)では、活動の工数別で原価計算をするので、
なにに時間がかかっているのか、隠れたコストを見える化することができ、
活動ごとの生産性を数値化できると思います。
・この本を読めばできるようになる、というものではないと思いますが、
どんなデータが必要で、何を経営ダッシュボードとしていくのか、
経営判断に何が必要かがよくわかると思います。
4.セミナー情報&イベント情報
★大阪産業創造館様 主催セミナー★
今年度も管理会計系セミナー企画予定です。
◆7月16日14:00~16:30
【はじめての○○セミナー】 きちんと押さえたい!経営者のための資金繰り基礎知識
https://ebis.obda.or.jp/service/47023/detail
8月には製造原価報告書セミナー、10月以降は管理会計系セミナーシリーズを予定しております!
・産創館には、お役に立つセミナーがたくさん企画されています。
https://www.sansokan.jp/events/
5.今年もはや7月、折り返しですね
今年も半分が過ぎ、この半年を振り返ると為替の動きにも驚かされます。
昨年末、2025年12月31日時点でドル円相場は156円台でした。
気づけば162円に迫る水準まで円安が進んでいます。
輸入コストや金利動向など、経営に影響する要素も刻一刻と変化しており、
常にこうした外部環境の変化にアンテナを張っておくことの大切さを改めて感じる上半期でした。
物価も上がり、その重みを日々実感しています。
経営の舵取りの大変さも増していると思います。
乗り越えていくためには、どんな課題を設定し、解決していけばよいのか、
職業会計人として、数字と現場に丁寧に向き合い、事務所みんなで伴走していきたいと思います。
いつも、そして本日もお読みいただき、ありがとうございました。
今週も、皆さんにとって、たくさんよきことがありますように!
いってらっしゃい!
神佐 真由美
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