第339号★ 全東信破産事件から ― 売掛金が突然入らなくなったときの打ち手と、日頃の備え/聞く技術 聞いてもらう技術/粉飾とは改善の機会を失うこと【税理士 神佐真由美】
税理士の神佐真由美です。
今日もご開封いただき、ありがとうございます。
本日のメルマガの内容です。
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1. 全東信破産事件から ― 売掛金が突然入らなくなったときの打ち手と、日頃の備え
2.現在&これから公募の補助金
3.おすすめ書籍 聞く技術 聞いてもらう技術
4.セミナー&イベント情報
5.活動日記 全東信事件に思う――粉飾とは改善の機会を失うこと
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NotebookLMというAIで今回のメルマガをポッドキャスト風にしました。
https://notebooklm.google.com/notebook/1fe98d40-a3f1-4445-8404-2f35f36eb629/artifact/3d3e254e-95c0-4f1f-bf90-6e0718145160?utm_source=nlm_web_share&utm_medium=google_oo&utm_campaign=art_share_1&utm_content=&utm_smc=nlm_web_share_google_oo_art_share_1_
1.全東信破産事件から ― 売掛金が突然入らなくなったときの打ち手と、日頃の備え
2026年7月6日、クレジットカード売上の早期決済代行サービスを手掛ける
株式会社全東信(大阪市中央区)が大阪地方裁判所に自己破産を申請し、
同日破産手続き開始決定を受けました。
負債総額は約1,300億円(2025年3月期末時点)にのぼり、今年最大規模の倒産です。
全東信は、飲食店を中心に約20万店の加盟店を抱え、
カード会社からの入金より先に売上代金を立て替える「早期決済代行」サービスで支持を集めていました。
しかし破産手続き開始と同時に決済代行・付帯サービスはすべて中止され、
加盟店に設置されていた決済端末も使用不能に。
多くの店舗で「売上金が当面入金されない」という事態が一斉に発生しています。
あるお店では、6月30日までの売上金については、7月6日に入金され、1日以降に決済した売上金が入金されない事態に。
1週間分の売上がたちまち入ってこないという状況です。
昨今はキャッシュレスの割合は高まっているので、本当に一大事です。
影響は加盟店にとどまらず、全東信向け融資を行っていた地方銀行にも損失が波及する可能性が指摘されています。
このケースが突きつけるのは、
「取引先(あるいは決済代行会社のように取引の間に立つ相手)が突然破綻すると、
正当な売掛金であっても回収できなくなる」という現実です。
今回は、実際に売掛金がこ入らなくなった際にまず何をすべきか、
そしてそうした事態の被害を最小限に抑えるために日頃からできることを整理します。
【売掛金が入らなくなったときの打ち手】
1)まず被害額と入金予定を洗い出す
取引先の倒産・破産のニュースが入ったら、感情的に電話をかけ続けるより先に、自社内の情報を整理することが優先です。
未収の売掛金がいくらあるか、今後入金予定だった金額はいくらか、
契約書・請求書・納品記録などの証憑を一式そろえます。
全東信のケースのように相手先の電話がつながらない状況では、自社の記録がそのまま将来の債権届出の根拠になります。
2)破産管財人への債権届出を行う
破産手続きが開始されると、裁判所が選任した破産管財人が資産の管理・処分を行い、債権者への配当を担います。
つまり、現金化できる試算は現金化し、債権の金額に応じて、債権者にお返しするのです(これを配当と言います)。
未回収の売掛金は「破産債権」として、
管財人からの案内に従って期限内に債権届出を行う必要があります。
届出をしなければ配当対象から外れてしまいます。
官報公告や管財人からの通知を見逃さないことが重要です。
ただし配当があっても全額回収は期待しにくく、配当率は数%台にとどまるケースも珍しくありません。
今回のケースも、どのくらい換金化できるものがあるのか・・・しかし売掛金が全額戻ってくることはないと思われます。
3)会計・税務上の処理を検討する
回収の見込みが実質的に立たない売掛金は、貸倒損失または貸倒引当金の計上対象になり得ます。
貸倒損失として損金算入するには、法的整理による債権消滅、回収不能が客観的に明らかであることなど
一定の要件が必要です。顧問税理士と相談しましょう。
4)資金繰りへの緊急対応
売掛金の未回収は、そのまま自社の資金繰り悪化に直結します。
何よりも資金を切らさないことが大事です。
対応策はいくつかあります。
倒産防止共済に加入しているなら、掛金の10倍までの貸付を受けることができます。
今回のような大型倒産の場合は、制度融資のセーフティネット1号の対象に該当することもあり、
連鎖倒産防止のための融資を受けられることもあります。
7月11日現在では、まだ認定されていませんが、各信用保証協会では、認定を前提に相談窓口を設置しています。
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_1gou.html
また、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付など、取引先の倒産等を要件とする融資制度の活用を検討します。
取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/06_tousanntaisaku_m.html
取引金融機関への早期の状況共有・リスケジュール相談も、資金ショートを防ぐうえで有効です。
5)決済・取引ルートを即座に切り替える
今回は、売上金が入ってこないだけでなく、その日から売上のカード決済ができないことで、
売上の機会の減少につながりかねません。
日々の売上そのものに影響が及ぶ場合は、代替の決済手段・取引先の確保を最優先で進めないといけません。
今回も、多くの飲食店が急きょ「カード不可、現金のみ」への切り替えを迫られました。
カード決済であれば別の決済代行会社との契約を急がないといけません。
そんななか、ストアーズがいち早く切替相談窓口を設けるなどの動きがあり、10日ほどで切替ができるなどの方法があります。
全東信をご利用中で決済にお困りの事業者さまへ|STORES 決済(ストアーズ)
https://stores.fun/lp/zentoshin
【被害を最小限に抑えるために日頃からやるべきこと】
1)取引先の信用情報を定期的にチェックする習慣をつける
帝国データバンクや東京商工リサーチの企業情報、決算公告など、
可能であれば、主要な取引先については年に1回程度は確認します。
日頃から取引先の与信状況にアンテナを張っておけば、異変の兆候(不自然な営業攻勢、支払いサイトの変更依頼など)に早めに気づける可能性が高まります。
2)決済・仕入れ・販売のルートを一社に集中させない
「早期入金してくれる」 「手数料が安い」といった理由で決済代行や取引を一社に集中させると、
その相手が破綻した際の影響がそのまま自社の存続リスクになります。
決済代行会社や主要な仕入れ・販売先は複数のルートに分散しておくことで、
一社が機能停止しても事業を止めずに済みます。
3)取引信用保険(取引先倒産保険)の活用を検討する
取引先の倒産によって売掛金が回収不能になった場合に保険金が支払われる取引信用保険は、
売掛金依存度が高い事業ほど検討する価値があります。
保険料はコストになりますが、大口取引先の突然の破綻という「頻度は低いが影響が大きい」リスクへの備えとして有効です。
与信管理をサービスとして展開する会社もあります。
与信管理・反社チェックのリスクモンスター
4)資金繰り表で「入金が止まったら何日もつか」を把握しておく
月次の資金繰り表を作成し、主要な取引先からの入金が仮に1〜2か月止まった場合に、
手元資金で何日耐えられるかをシミュレーションしておきます。
全東信のケースのように、加盟店の資金繰りが「早期入金」に頼っていた場合、
止まった瞬間に資金繰りが破綻しかねません。
手元ですぐ動かせるお金を一定水準確保し、依存度を数値で把握しておくことが備えになります。
5)与信枠・取引条件を定期的に見直す
大口取引先ほど、与信枠(掛け売り上限額)や支払いサイトを定期的に見直します。
取引開始時に設定した条件をそのまま放置せず、取引先の業況や自社にとっての依存度の変化に応じて、
与信枠の縮小や前受金・保証金の導入などを検討することが有効です。
6)早期に相談できる窓口をあらかじめ把握しておく
自社の資金繰りが厳しくなった場合に備え、日本政策金融公庫、顧問税理士・弁護士など、早期に相談できる窓口を普段から把握しておきます。
「まだ経営できているうち」に相談すれば選択肢は広く残りますが、資金繰りが行き詰まってからでは打てる手が限られます。
これは今回のような取引先破綻の巻き添えを受けた場合にも、自社の傷を最小限に抑えるための備えとして共通する考え方です。
全東信の破産は、コロナ禍による顧客層の業績悪化と、
2024年の不正加盟店契約問題による信用失墜が重なって起きた特殊な事例です。
影響は小さくありませんが、乗り越えていかなければなりません。
「取引の間に立つ相手が突然破綻し、正当な売掛金が回収できなくなる」というリスクは、
規模や業種を問わずどの企業にも起こり得ます。
実際に入金が止まった際は、被害額の洗い出し・債権届出・資金繰り対応・代替ルートの確保を
並行して進める必要があります。
そして何より重要なのは、取引先の与信管理、決済・取引ルートの分散、資金繰りのみえる化といった日頃の備えです。
自社の売掛金管理を再確認するきっかけとして活用いただければと思います。
2.現在&これから公募の補助金や融資制度
・・【大阪府限定】中小企業の賃上げ促進支援について
賃上げのための財源をつくるための取組を支援する補助金が複数あります。
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110050/keieishien/chinagepackage.html
・https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/07_keieisien_m.html
社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況の悪化を来している事業者が経営基盤の強化を図るために活用する資金の融資制度です。
今回の中東情勢の影響を受ける方についても、ご相談を受け付けています。
・中小企業新事業進出補助金 (次は第5次公募)
既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援
https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/
・デジタル化・AI導入補助金2026(第3次7月21日締切)
https://it-shien.smrj.go.jp/
・中小企業省力化投資補助金(一般型は第7次公募7月31日締切)
https://shoryokuka.smrj.go.jp/
中小企業等のみなさまの売上拡大や生産性向上を後押しするため、
IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援いたします。
カタログ型と一般型があります。
カタログ型は締切がなく、随時申請です。
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第23次公募8月上旬締切)
https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
・小規模事業者持続化補助金(11月15日締切)
一般型
https://r6.jizokukahojokin.info/
創業型
https://r6.jizokukahojokin.info/sogyo/
・支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/index.html
地域の公募情報も手に入ります。
中東情勢に関する支援情報 | -中東情勢に関する支援情報 |
https://j-net21.smrj.go.jp/chuto_josei/index.html
・近畿経済産業局「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」
https://www.kansai.meti.go.jp/
・中東情勢関連対策ワンストップポータル(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/chuto_josei/index.html
3.おすすめ書籍
聞く技術 聞いてもらう技術
著:東畑 開人さん
https://www.chikumashobo.co.jp/special/kaito_tohata/
聞かれることで、ひとは変わる――。
カウンセラーが教える、コミュニケーションの基本にして奥義。
「聞く」は声が耳に入ってくることで、「聴く」は声に耳を傾けること――。
「聴く」のほうがむずかしそうに見えて、実は「聞く」ほうがむずかしい。
「聞く」の不全が社会を覆ういまこそ「聞く」を再起動しなければならない。
そのためには、それを支える「聞いてもらう」との循環が必要だ。
小手先の技術から本質まで、読んだそばからコミュニケーションが変わる、革新的な一冊。
世の中にはたくさんの素晴らしい「聞く技術」本があるわけですが、心理士としてひとつだけ不満がありました。
「聞く技術」を必要としているときほど、実は技術なんか使っている余裕がないことです。
たとえば、パートナーや家族、同僚などの身近な人間関係で揉めているとき、あるいは政治や社会課題をめぐって敵と味方が二分されるとき、本当は対話が必要なときこそ、僕らの「聞く」は不全に陥ります。
相手の話を聞いていられなくなる。
そういうとき、必要なのは、「聞く技術」ではなく「聞いてもらう技術」です。
僕らが話を聞けなくなるのは、僕ら自身の話を聞いてもらえていないときだと思うからです。
「聞く」はふしぎです。
聞くための小手先の技術から、聞いてもらうことに備わる深いちからまで、
20年近い臨床経験から学んだことを、すべて書いてみました。 ――東畑開人
★おすすめポイント
よく「聞く技術」を記す本はありますが、「聞いてもらう技術」はとても新鮮です。
本書では、
『聞く技術』と『聞いてもらう技術』はセットになっていて、グルグルと回っている必要があります
とあり、聞いてもらえるから、聞くことができる、つながりの連鎖が必要とのこと。
聞いてもらう技術 日常編や緊急事態編も解説されています。
聞けないのは、聞いてもらえていないから。
聞いてもらえるから、聞くことができる。
なかなか聞いてもらえないな~ということは、
私が、聞いていないからかも・・・と日常のふるまいについて、振り返るきっかけになりました。
4.セミナー情報&イベント情報
★大阪産業創造館様 主催セミナー★
今年度も管理会計系セミナー企画予定です。
◆7月16日14:00~16:30
【はじめての○○セミナー】 きちんと押さえたい!経営者のための資金繰り基礎知識
https://ebis.obda.or.jp/service/47023/detail
◆8月24日14:00~16:30
【ものづくり企業の収益力改善プログラム】
製造業の財務分析入門 コストダウンの「種」を見つける!製造原価報告書の読み解き方
https://ebis.obda.or.jp/service/504795/detail
10月以降は管理会計系セミナーシリーズを予定しております!
・産創館には、お役に立つセミナーがたくさん企画されています。
https://www.sansokan.jp/events/
5.全東信事件に思う――粉飾とは改善の機会を失うこと
1.で記載しました、全東信破産の件について。
たくさんの金融機関がお金を貸していて、よくここまで融資を決めたな・・・と思っていたのですが、
報道によれば、預金残高の水増しや架空債権の計上などにより、帳簿上は約25億円の純資産プラス。
しかし実態は、約605億円もの債務超過だったとみられています。
金融機関、加盟店の飲食店、投資家まで・・・影響は広範囲に及んでいます。
粉飾は本人だけでなく、信じて取引していた周囲まで道連れにしてしまうことだと改めて思いました。
粉飾は、実態よりも数字を良く見せること。
それをしてしまうと、本来の姿がわからなくなります。
決算書は会社の現在地を図る指標だとすると、「経営の計測をやめる」行為と言えるかもしれません。
「どこが悪いのか」「何を直せばいいのか」を知る手段そのものを失います。
粉飾の最大の代償は、「立て直す機会そのものを失うこと」かもしれません。
苦しいときほど数字から目を背けたくなるもの。
でも、正しい計器があってこそ、正しい打ち手が打てます。
本来の会計の役割、変化に気付き、課題を見出すことを、
その結果として、会社がよくなることを、一層サポートしたいと思いました。
いつも、そして本日もお読みいただき、ありがとうございました。
今週も、皆さんにとって、たくさんよきことがありますように!
いってらっしゃい!
神佐 真由美
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