【2つの読書会と日本の問題】お手紙ココロの学校 vol.90
「ココロの学校」主宰
メンタルヘルスカウンセラーの高野です。
○○さん
先週は如何お過ごしでしたか?
先週は読書会に二つ参加しました。
一つは参加といいますか、
僕が主催している共読会で
五か月続けて読んできたシャミッソーの
「影をなくした男」の最終回です。
共読会はコロナからずっと
オンライン開催していたのですが
久々にリアルでも場を設けて
ZOOMと併用開催となりました。
リアルとオンラインを同時開催すると
オンライン側がリアルの盛り上がりに
置いてけぼりになりがちなのですが、
単発のイベントと違って
回を重ねて一緒に読み続けてきた仲間なので
お互いに質問をしたり話題を振ったりして
一体感を持てたように感じています。
いつも最近どうですかー?と
ふわっとした質問から始めるのですが
今回は「最近どんな本読んでます?」から
始めたのが悪かったのか、
導入からたいそう色々な
本の話になったので僕の番は却下されて
しまいました(笑
それはさておき、
ずっと「影をなくした男」を読んできて
最終的に影とは何かということなのですけれど
(以下はネタバレがありますが
古典なのでご容赦を)
物語の序盤早い段階で
主人公は影をなくしてしまいます。
紹介状を持って、初めて着いた街の名士の
門をたたくのですが相手にされず
そこで灰色の男から影と引き換えに
金貨が出してもなくならない革袋を
手に入れるのです。
主人公は影などなくしてもいいだろうと思い
灰色の男もそのように言うのですが
街ゆく人々は放っておいてくれない。
子供は指さして嘲り
物は投げられるし
旅先の観光地でも社交場でも
怖れられ気味悪がられるのです。
灰色の男は一年後にまた会うと告げていて
その一年後に死後に魂を売り渡すという
サインに署名するように求めます。
主人公は嫌だと思いながらも
辛さに耐えるのも苦しくサインしそうに
なるのですが、
その瞬間気を失ってしまう(笑
それですべてを失って
失意のうちに旅を続けるのですが
後をつきまとう灰色の男にふと
最初にあった金持ちを見せろというと
魂の抜けた男がぶつぶつと
「神の義に背き、神によって罰せられる」
とうわごとを言い続けている。
主人公はそれで
お前とはもう取引しないと
深い谷に金貨の湧き出る革袋を
投げ捨てる。
それで灰色の男は現れなくなるのですが
影をなくしたままなので
日の差さない炭鉱で働くしかないと思い
旅する先で必要になって一足の古靴を買う。
それがなんと一歩で7里を進む
不思議な靴で、
主人公は世界の植物や動物を
研究して生きるという
新しい喜びを見つけました。
というお話なのです。
影をなくしたときに、お金を手に入れながら
人の社会にいる資格をなくしてしまう
というのが面白いですね。
今月から新規で参加してくれた
メンバーがたまたまこの日持っていた本が
「世界は贈与でできている」
というものだったのですが、
お金とかGDPの数字で表れないものが
社会では「贈与」という形で
交換されているものなのです。
そのような表に現れないものが
「影」と表されていて面白いなと
思っています。
昔日本ではお金を神社の境内に埋めて
汚れを清めるということが流行った
ことがあります。
お金から影を取ろうとした、
そんな風にも思えます。
もう一つ参加した読書会は
松岡正剛の編集学校のもので
東北在住のメンバーを中心に
3・11がまもなく10年を迎える
今の状況への危機感から
立ち上がったものでした。
福島でもう廃校が決まった学校が
荒れたそのまま立っていて
ススキと雑草が校庭に生えている写真とか
道だけ通れるようになったけれど
住人は戻ることができないままの
アパートとか
そんな写真を見せてもらいました。
何とも胸が詰まりました。
そのような時に、
補償はお金でするしかないし
国もサポートに力を入れてはいるけれど
それだけでは拾いきれない何かが
影をなくした男の孤独に重なりました。
原発を受け入れて
年金や給与所得を得られるようになった
という少しの引け目も似ている。
影と引き換えに革袋を入手した
主人公に似ています。
社会で金銭の他に「贈与」で
取引されるのは
社会規範とか連帯というものなのです。
避難で地域を追われた人は
そのような根っことか影のようなものを
奪われてしまったのかもしれません。
宗教は死後の救いを与えてくれるはずで
それに代わる何かが本当は日本人にも必要だ
というような話が出ました。
宗教が与えてくれるのは本当は
死後の救いではなくて
死する今を生きねばならないことへの
救いであると僕は考えています。
最近は「うわさ供養」というものがあって
亡くなった人のことを語ることが
供養になるという考えがあるそうです。
僕は今のところ
死後の生命や魂はなく、
ただ今生きた我々の在り様は
いつかまたどこかの宇宙で同じように
繰り返すと思っています。
(僕は限定永遠と言っています。
ニーチェは同じ概念を永遠回帰と表現しました)
その考えからすると
供養というのは遺された人が
残りの人生の中に亡くなった人を
どのように抱いて生きていくかという
記憶の仕方や在り方を表現するものです。
そんな風に考える僕からすると
日本の首相が世界の首相と比べて
コロナの時に共通の価値観を元にした
公人としてのメッセージを発しにくいのも
当然かなと思います。
被災した町々では
コメリとかシマムラといった
町の人々のお店だった所の跡地が
全部建設会社の重機や車の
駐車場になっているのだそうです。
それで道を整備して
一番被害があったところが、
ドローンの配送をしたり
近未来的な無機質な街になっている。
この10年の結論がこれでは
何も経験が生きていないと
いってもいい。
日本人はどうも
本音と建前を分けすぎて
建前に本音を漉き込んでいくことが
大層下手なように感じます。
仏教のインド、中国、日本へ
続く流れから「体と用:の
扱い方を見ていて
そんなことを想いました。
さて。シャミッソーは終わって
来月からはサン=テグジュペリを読みます。
テグジュペリは幼い頃に
ライト兄弟が初飛行を果たし、
その後英仏海峡、地中海の初飛行が
成功していくのと共に大きくなった
青年でした。
危険を顧みずに飛行するということが
人間の本質であるという考えが
彼の著作の芯に響いています。
僕は彼の思想を
原子力や遺伝子などを
どこまで人が発展させ
あるいはコントロールすべきかということと
重ねて考えながら読みたいなと思っています。
それでは、今日はこの辺で。
取りとめないお手紙になりましたが
○○さんはどう思われましたか?
最後までありがとうございました^^
■□ 発行 □■
自分を知り、自分を楽しみ、
自分を通して幸せになる
『ココロの学校』代表
高野 真俊(タカノ マサトシ)
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