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HRキュレーション by 社会保険労務士法人SUCCESSION

「退職前に有休を全部使いたい…それって止められる?」(中編)【社労士事件簿Case33】(メルマガvol.151)

2026年06月29日


今回もSUCCESSIONに日々寄せられる相談を物語風にアレンジした「社労士事件簿」をお送りします。
現場でのトラブルを未然に防ぐための備えや心の準備にお役立ていただければ幸いです。

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【社労士事件簿Case33】
「退職前に有休を全部使いたい…それって止められる?」(中編)
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※フィクションにつき、登場人物や会社名は現実のものとは一切関係ありません。

前回、退職予定の中村さんから「残っている有休を退職日まで全部使いたい」と申し出を受けた佐藤さん。

中村さんに残っている有給休暇は20日分。

一方で、退職日までの出勤日は12日ほどしかありません。

営業部長からは、

「就業規則に“退職日までの連続有休は禁止"と書いてあるなら、止められるのでは?」

と言われました。

さらに社長からは、

「有休を買い取るから、引き継ぎに出てもらうことはできないのか?」

とも聞かれています。

佐藤さんは、社会保険労務士法人SUCCESSIONの担当社労士に相談しました。

佐藤さん
「退職前に有休を全部使いたいと言われた場合、会社は拒めるのでしょうか?」

担当社労士
「原則として、会社が一方的に拒むことは難しいです。有給休暇は労働者に認められた権利です。“退職前だからダメ"“引き継ぎがあるからダメ"という理由だけで拒否するのはリスクがあります。」

佐藤さん
「就業規則に“退職日まで連続して有休を取得してはいけない"と書いてあってもですか?」

担当社労士
「はい。就業規則に書いてあっても、法律上認められた有休の権利を一方的に制限することはできません。」

佐藤さん
「では、会社は何もできないのでしょうか?」

担当社労士
「お願いや話し合いはできます。大切なのは、“有休を取らせない"のではなく、“引き継ぎが必要な事情を説明し、本人と話し合う"ことです。」

退職日が決まっている場合、会社が有休取得日を他の日に変更しようとしても、退職後に有休を回すことはできません。

そのため、退職前の有休申請は、会社が通常よりも慎重に対応する必要があります。

佐藤さん
「今回のように、有休が20日残っていて、退職日までの出勤日が12日しかない場合はどう整理すればよいのでしょうか?」

担当社労士
「まず、物理的に取得できる有休は最大12日分です。退職日までの出勤日が12日しかない以上、20日分すべてを取得することはできません。」

佐藤さん
「残りの8日分はどうなりますか?」

担当社労士
「その8日分は、退職日までに物理的に取得できない有休です。今回のケースでは、買い取りではなく、退職により消滅するものとして整理します。」

佐藤さん
「20日分全部を買い取るわけではないんですね。」

担当社労士
「はい。今回の論点は、20日分すべての買い取りではありません。退職日までに取得可能な12日分をどう扱うかです。」

佐藤さん
「会社としては、12日分すべてを有休にされると引き継ぎができません。4日間だけでも出勤してもらいたいです。」

担当社労士
「その場合は、本人と話し合い、同意を得たうえで、12日分のうち4日間を出勤日に変更してもらうことが考えられます。」

佐藤さん
「有休を買い取るから出勤してもらう、という言い方でよいですか?」

担当社労士
「そこは注意が必要です。会社が一方的に“買い取るから休ませない"という扱いはできません。」

佐藤さん
「では、どう説明すればよいでしょうか?」

担当社労士
「“退職日までに取得できる有休は12日分あります。そのうち8日間は有休として取得していただきたい。一方で、引き継ぎのために4日間だけ出勤していただけないか"とお願いする形です。」

佐藤さん
「その4日間は、通常の出勤日として扱うんですね。」

担当社労士
「はい。出勤日として扱う以上、その4日間は通常どおり賃金を支払います。」

佐藤さん
「では、その4日分の有休はどうなりますか?」

担当社労士
「本来であれば退職日までに取得できた12日分のうち、会社の引き継ぎ依頼に応じて出勤してもらう4日分です。そのため、その4日分については、退職時に会社が任意に精算する、という整理が考えられます。」

佐藤さん
「つまり、20日分のうち、物理的に使い切れない8日は消滅。取得可能な12日のうち、8日は有休として取得。会社のお願いで出勤してもらう4日分だけを退職時に精算する、ということですね。」

担当社労士
「そのとおりです。」

今回のケースは、次のように整理できます。

・有休残日数は20日
・退職日までの出勤日は12日
・物理的に取得できない8日分は退職により消滅
・取得可能な12日のうち8日は有休として取得
・残り4日は本人の同意を得て、引き継ぎのため出勤
・出勤した4日間は通常の賃金を支払う
・その4日分の有休は退職時に会社が任意に精算

佐藤さん
「大事なのは、“有休扱いの日に働いてもらう"のではなく、“本人の同意を得て、有休予定日を出勤日に変更する"ということですね。」

担当社労士
「はい。そして、どの日を有休にするのか、どの日を出勤日にするのか、何日分を退職時に精算するのかを、書面やメールで残しておくことをおすすめします。」

佐藤さんは、ようやく整理できた気がしました。

有休を取らせたくないから拒否するのではない。

買い取るから強制的に出勤させるのでもない。

本人の権利を尊重したうえで、会社の事情を説明し、合意できる着地点を探す。

その姿勢が重要なのだと分かりました。

翌日、佐藤さんは営業部長に説明しました。

「就業規則に書いてあるからといって、有休を一方的に止めることはできません。ただ、引き継ぎの必要性を本人に説明して、何日か出勤してもらえないか相談することはできます。」

営業部長は、少し驚いた表情をしました。

「じゃあ、“有休は禁止"とは言えないんだな。」

佐藤さんはうなずきました。

「はい。今回は中村さんと話し合って、12日のうち4日間は引き継ぎに出勤してもらえないか相談してみようと思います。」

物理的に使い切れない8日分は退職により消滅。

そして、取得可能な12日のうち、会社の依頼で出勤してもらう4日分については、退職時に精算する。

佐藤さんは、改めて中村さんとの面談日程を調整しました。

【次号予告】

退職前の有休は止められない。

でも、引き継ぎはしてほしい。

そんなとき、会社はどのように本人へ伝えればよいのでしょうか。

後編では、本人との話し合いの進め方と、退職時に精算する有休の範囲について整理します。

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