「退職前に有休を全部使いたい…それって止められる?」(後編)【社労士事件簿Case33】(メルマガvol.152)
今回もSUCCESSIONに日々寄せられる相談を物語風にアレンジした「社労士事件簿」をお送りします。
現場でのトラブルを未然に防ぐための備えや心の準備にお役立ていただければ幸いです。
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【社労士事件簿Case33】
「退職前に有休を全部使いたい…それって止められる?」(後編)
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※フィクションにつき、登場人物や会社名は現実のものとは一切関係ありません。
前回、佐藤さんは社会保険労務士法人SUCCESSIONに相談し、退職前の有給休暇について整理しました。
就業規則に「退職前の連続有休は禁止」と書いてあっても、それだけで有休取得を一方的に止めることは難しいこと。
また、退職日までの出勤日数が12日しかない場合、有休が20日残っていても、物理的に取得できるのは最大12日分であること。
そして、今回のケースでは、物理的に使い切れない8日分は退職により消滅し、会社が買い取る対象にはしないこと。
一方で、取得可能な12日のうち、引き継ぎのために出勤をお願いする4日分については、本人の同意を得たうえで、退職時に精算する形が考えられることが分かりました。
大切なのは、会社が一方的に「有休を取らせない」と決めるのではなく、本人と話し合って、出勤日と有休日を整理することです。
そこで佐藤さんは、営業部長と相談したうえで、中村さんと改めて面談することにしました。
机の上には、退職日までのカレンダーと、有給休暇の残日数をまとめたメモがあります。
佐藤さん
「中村さん、有休を使いたいというお気持ちはよく分かります。これまで頑張っていただいた分ですし、きちんと整理したいと思っています。」
中村さん
「ありがとうございます。できれば残っている有休は使いたいと思っています。」
佐藤さん
「はい。ただ、今回、中村さんの有休は20日分残っていますが、退職日までの出勤日は12日です。つまり、退職日までに取得できる有休は最大で12日分になります。」
中村さん
「残りの8日分はどうなるんですか?」
佐藤さん
「退職日までに物理的に取得できない8日分については、退職により消滅する扱いになります。今回、会社として買い取る対象にはしていません。」
中村さんは、少し残念そうな表情を見せました。
中村さん
「20日全部は使えないんですね。」
佐藤さん
「はい。退職日までの出勤日数の関係で、実際に取得できるのは12日分までです。」
佐藤さんは、続けて会社からのお願いを伝えました。
佐藤さん
「そのうえでご相談です。退職日までの12日のうち、8日間は有休として取得していただき、残り4日間は引き継ぎのために出勤していただけないでしょうか。」
中村さん
「4日間、出勤するということですね。」
佐藤さん
「はい。その4日間は通常の出勤日として扱いますので、通常どおり賃金をお支払いします。」
中村さん
「その場合、本来取れるはずだった4日分の有休はどうなりますか?」
佐藤さん
「その4日分については、会社から引き継ぎのため出勤をお願いするものですので、退職時に会社が任意に精算する形を考えています。」
中村さんは、少し考えたあと、確認しました。
中村さん
「つまり、20日残っているうち、退職日までにどうしても使えない8日分は消滅。退職日までに使える12日分のうち、8日は有休として休む。残り4日は引き継ぎのために出勤して、その4日分については退職時に精算される、ということですか?」
佐藤さん
「はい。そのように整理します。ただし、これは会社が一方的に有休を取り消すということではありません。中村さんに同意いただける場合の対応です。」
中村さんは、ほっとした表情を見せました。
中村さん
「それなら、4日間は引き継ぎに出勤します。取引先にも迷惑をかけたくありませんし。」
その後、佐藤さんと中村さんは、退職日までのスケジュールを具体的に整理しました。
・有休残日数は20日
・退職日までの出勤日は12日
・物理的に使い切れない8日分は退職により消滅
・取得可能な12日のうち8日は有休として取得
・4日間は引き継ぎのため出勤
・出勤した4日間は通常の賃金を支払う
・会社の依頼により出勤へ変更した4日分の有休は退職時に精算
結果として、中村さんは8日間の有休を取得し、4日間は引き継ぎのために出勤することになりました。
そして、退職時には、物理的に使い切れない8日分は消滅し、会社の依頼により出勤へ変更した4日分についてのみ、会社が任意に精算する形となりました。
面談を終えたあと、佐藤さんは大きく息をつきました。
「就業規則に書いてあるかどうかより、早く話し合って段取りをつけることの方が、ずっと大事だったんですね…」
営業部長も、今回の対応を聞いてうなずきました。
「最初は、最後まで出てこないなんて困ると思っていたけど、きちんと話し合えば着地点はあるんだな。」
退職前の有休をめぐる対応では、会社側も感情的になりがちです。
「辞めるのだから、最後まで責任を持ってほしい」
「引き継ぎもしないで休まれるのは困る」
その気持ちは、現場として当然かもしれません。
しかし、有給休暇は労働者に認められた権利です。
会社が一方的に取得を拒んだり、「買い取るから休ませない」と決めたりすることはできません。
一方で、会社として引き継ぎが必要な事情を説明し、本人と話し合うことはできます。
実務で大切なのは、
「有休を取ったことにして働かせる」のではなく、
「本人の同意を得て、有休予定日を出勤日に変更する」
という整理です。
そして、出勤した日は出勤日として通常の賃金を支払います。
その結果、会社の依頼により取得できなかった4日分について、退職時に会社が任意に精算するという形であれば、実務上の対応として検討しやすくなります。
【まとめ】
・就業規則で「退職日までの連続有休を禁止」と定めても、有休取得そのものは一方的に止められない
・退職までに他の日へ動かせない場合、時季変更権は使いにくい
・有休が20日残っていても、退職日までの出勤日が12日しかなければ、物理的に取得できるのは12日分まで
・物理的に使い切れない8日分は、今回のケースでは買い取りではなく、退職により消滅するものとして整理する
・引き継ぎが必要でも、一方的に有休取得をやめさせることはできない
・「有休扱いで働かせる」のではなく、本人合意のうえで「出勤日」に変更することが重要
・買い取り、または精算の対象とするのは、取得可能な12日のうち、会社の依頼で出勤してもらう4日分
・出勤した4日間は通常の賃金を支払い、その4日分の有休は退職時に精算する形で整理する
・実務では、早めの話し合いと日程調整、書面やメールでの記録が重要
【根拠法令・参考情報】
労働基準法 第39条(年次有給休暇)
労働契約法 第13条(法令及び労働協約と就業規則との関係)
【お問い合わせは社会保険労務士法人SUCCESSIONまで】
社会保険労務士法人SUCCESSIONでは
・退職前の有給休暇対応
・就業規則の整備
・退職時のトラブル予防
・社会保険・労働保険手続き、給与計算などのアウトソーシング
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