書店員向けメールマガジン【箕輪書店だより】2月号 2/2
1.今月のコラム 「一生、著者と添い遂げる」
2.本の売り方を考える 「書店で本を売るには可処分精神を奪え」
3.編集者インタビュー 「担当累計部数7000万部! 編集者・三木一馬が目指すコンテンツ中心の未来」
4.書店員インタビュー「本の業界は異常。著者、編集者、お客さんが入り乱れることで、本屋はもっと面白くなる。」
5.新刊インタビュー「読書する3割の人間が助かればいい」 AI時代の人間の質を決めるのは読書だ!
6.出版社営業インタビュー ベストセラーも書店との関係も「たった一人の熱狂」から始まる
7.あとがき
*文字数の関係で、5-7は2通目にお届けします。
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5.新刊インタビュー 「読書する3割の人間が助かればいい」 AI時代の人間の質を決めるのは読書だ!
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2月6日に発売された『僕たちは14歳までに何を学んだか 新時代の必須スキルの育み方』https://www.amazon.co.jp/dp/4797398655/ref=cm_sw_r_cp_api_i_KMoCCb891AFC9
<日本に蔓延する「正解主義」。僕は彼らを助けたいとは思わない>
-藤原さんは著書の中で、情報を処理するだけでなく、自分の人生までもを編集していくような「自己編集力」を鍛えるべきだと仰っていますよね。「自己編集力」を持った人たちが増えた場合、日本はどのような姿になると考えていますか?
藤原:今と比べるともう少ししっとりとセクシーになってるんじゃないかな。でも僕はね、決して全員が変わるなんて思っていないんです。
-そうなんですか?
藤原:現状はとても嘆かわしい状況ですよ。例えば、今の人たちは一つの正解を求めたがっているじゃないですか。これを僕は「正解主義」と呼んでいます。典型的なのは、ググらない若い人。「ググる」ってことは、複数の文章を読んで、自分の答えを探求しなければいけない。でもそれは面倒なんです。だから、すぐに答えを知りたがってYouTube等で検索して答えを見ちゃう。今は便利な世の中だから、その手軽さに一旦ハマっちゃうとなかなか抜けられないんじゃないかな。僕はそういう人はそのままでもいいんじゃないのかなと思っています。僕はそういう人たちを「何とかしよう」とは思わない。あと、電車の中でスマホゲームしてる人もそう。若い子だけかと思いきや、今は40代・50代のサラリーマンもやってる。そういう人たちに対しても、助けようとは欠片も思わないですね(笑)。
-手厳しいご意見です。今の世の中に対して結構悲観的に捉えていらっしゃるのですね。
藤原:まあ、多くて3割ぐらいの人が変わればいいんじゃないかなと思ってます。人生を1冊の本であるかのごとく、自分の人生を編集してクリエイティブに生きていける人は、もしかしたら100人のうちの3人くらいしかいないかもしれない。その周りで、全体の3割ぐらいの人が、クリエイティブな彼らと一緒に動いていればいいんじゃないかな。近い未来、機械化・自動化の延長でAI・ロボット化が必ずおきます。今は運転する時に、車載のナビよりもGoogleマップを使ってる人が多いと思う。Googleがいろいろな人の位置情報を捉えると何が起きるか。数百万の車が走ってるスピードと位置から、どこが混んでて、どこを迂回した方が良いかが、Googleに丸裸になるわけ。実際にタクシーでさえもナビの代わりにスマホを置いてるよね。
-なんというか、便利な世の中になったなとつくづく感じます。
藤原:そうだね、それはとても合理的ではありますよね。でも、その延長には自動運転があり、さらにその先に目を向けると、人が何も考えない世界が待っている。自動運転は象徴的な例だけど、それだけじゃないよね。端的なところで言えば、就職の分野だってIndeedがすごく使われているでしょ? あれはAIによる企業と人のマッチングなんだけど、ものすごく複雑なことをやっているんですよ。人々がどんどんそういうマッチング機能に頼るようになると、自分の足で100社回るんじゃなくて、ある種の占いみたいになっていく。この先、結婚相手を選ぶのもなんだかよく分からない仕組みで動くAIに頼ることになるでしょうね。結婚も100人と出会って「73番目の人が絶対いい!」なんて分かるわけがないんだから。
<「Googleに神が宿る」 ー思考停止社会の行き着く先ー >
-便利な世の中が人々を堕落させるということですか?
藤原:これは批判的な意味で言っているのではなく、人間っていうのはその判断や決断が大きいものであればあるほど、決断したその瞬間からすごく迷うんですよ。それを「認知的不協和」と言います。例えば、新車のポスターを誰が一番よく見ているかという調査をすると、その車を買った直後の人が実は見てるんです。買いたい人じゃなく、買った直後の人が自分を納得させるために見る。これは決断が大きければ大きいほどそうなる。就職や住宅、結婚もそうだと思う。やがて子育てもそうなっちゃうんじゃないかな。
-それはなんだか怖い世の中ですね...。
藤原:人は自分の判断に自信がない。だから占いみたいなものに判断を委ねるんですよ。神からのお告げを人に伝えるイタコさんが霊をおろしてくるように、これからはインターネットに霊がおりてくるようになると思うんです。でも、それはもうすでに始まってると思わない? 僕は「Googleに神が宿る日」って言い方をしてる。別にGoogleじゃなくてもいいのだけど、ネットを表すには分かりやすいから使ってます。「インターネット上に神が宿る日」というのは、もうおそらくあと10年以内に来ますよ。
AIによって判断はどんどん外部化されていく。そして、ロボットによって肉体的な部分も外部化されていく。一見便利な世の中になったと見えるでしょう。でもこれは、もっとも哲学的な問題なんですよ。その一番先端を喝破したのがユヴァル・ノア・ハラリが書いた『ホモ・デウス』という本です。同じ著者による前作『サピエンス全史』が今までの何万年の歴史の人間の意識の進化だとしたら、この本は、ここからどうなるかってことを見事に言い当てていると思う。『ホモ・デウス』が描く未来というのは、生きているように見える死人が闊歩する世界というのを前提としているよね。要するに、本人は生きているつもりでいるんだけど、思考停止して全ての判断・選択をAIに委ねちゃって、それでも100年生きる人。これを種として「ホモ・サピエンス」と呼んでいいのかは分からないけど、それを前提としているわけだよ。
-人間の定義が変わってしまいますね。できればそんな時代でも自分の意思で物事を判断して生きていける人間になりたいです。
藤原:僕は、「人間である」ということは、「個人」をどんな組織の中でも維持している人だと思ってるんです。一体どれほどの人が個人を維持できているのか。いわゆる、企業人でなく、企業内個人。組織人じゃなく、組織内個人になるということが重要だと思うけどね。さっきも言ったけど、すごくクリエイティブな人生、1冊の書籍のように人生を編集できる人は、3%ほどになると思ってます。それで、個人として目覚める人が3割ぐらいになれば、僕は御の字じゃないかなと思う。そして、その3割は本を読む側の人間なんじゃないかな。
<本を読むか読まないかで人生が決まる。読書の習慣をつけるには>
-これから、本を読む人と読まない人で今まで以上に大きな差が出てくるということでしょうか?
藤原:そう。これは言うと嫌われちゃうかもしれないけど、やっぱりこれからは、本を読んでいるか読んでないかで二層に分かれると思う。これは本当にどうしようもないけど事実だから。教養があるかないかで分かれちゃう世界になると思います。
-どうしよう...。私は本をあまり読まないのですが、本を読む習慣はどのようにして身につくのでしょうか。
藤原:僕も、もともと本読みじゃなかった。でも、メディアファクトリーという出版社を創業した時に、作家とか編集者と会話ができないと困るから、酔っぱらっていようと何だろうと本を読むことを癖付けていったんです。それに、27歳ぐらいの時に「藤原さん、純文学読んでる?」って聞かれて分からなかったの。当時は、宮本輝や連城三紀彦とかが有名な著者だった。「そんなものなくてもビジネスはできるんです」と強気で答えたら「そんなこと言ってたら、どんどん発言が浅くなるよ」って言われちゃってね(笑)。当時は理由も分からず、この野郎って思ってました。でも、気になったから翌日書店に行ったんだよね。
で、宮本輝の『青が散る』っていう本を読んでみたらとても面白かった。そこから、宮本輝の本を全部読んでいったんです。当初は、気に入った作家の本を端から読むという読み方をしてたね。全部買うことは難しいから、図書館で一気に10冊ぐらい借りたりした。島田雅彦も重松清も全部読んだと思う。そんな感じで一人の作家をガーっと追ってくのが一つの方法なんじゃないかな。これはやりやすいし、特に小説は読みやすいからね。
-なるほど。頑張ってみようと思えてきました。
藤原:でも、無理に全部を読もうとしなくていいんじゃないかな。とにかく50ページ読んでダメだったらやめた方がいいと思う。最後まで読まくてはいけないっていう呪縛にハマっちゃうと余計に読まなくなる。編集者も、本が読まれないことは分かっているから、一番面白い部分は最初に書いてるんだよ。だから、最初の部分が面白くなかった本は絶対に面白くないと判断して読まないでいいと思いますよ。例えば、フランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』という分厚い本あるでしょ。ああいう学術書は、「はじめに」と「あとがき」を読めば結論が分かる。そこに著者が言いたかったことのほぼ全てが書いてあるんですよ。速読のテクニックがない人は、そういう感じで要領良く読めばいいと思いますね。
-ありがとうございました。教えていただいたテクニックを駆使して読書の習慣を身に付けていきたいと思います!
藤原:でも、いい小説に出会ったら、そういうふうに読み飛ばすことができないよ(笑)。物語に捕まってしまったらしょうがない。素直にしたがって最後まで読むしかないよ。僕は『ソロモンの偽証』は宮部みゆきの最高傑作だと思っているんだけど、一度読んだら捕まってしまった。あれはどうしようもなかったね(笑)。読み終わるのに1か月かかったんじゃないかな。ただ、そういった本に出会えるのは本当に幸せなことだよ。
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6.出版社営業インタビュー ベストセラーも書店との関係も「たった一人の熱狂」から始まる
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太田和美さんは大学卒業後、角川書店に入社。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったザテレビジョン編集部に配属され、その2年後、角川書店時代の上司に誘われ幻冬舎に転職。以来、20年以上もの間、営業の最前線で活躍され、現在は営業局 販売促進の責任者を務められています。書評家としての顔も併せ持つ太田さんに、書店と出版社の関係、さらには教育・仕事論について聞きました。
<点を線にして線を面にする>
-本を売る上で、出版社の営業と書店員さんは同志だと思いますが、どのように信頼関係を築いていくのでしょうか?
太田:書店は本を売ってもらっている「大得意先」ですが、売るだけの仕事とは思っていません。本を売る、届けるという大きなミッションの前では携わる全ての人間は川上も川下もありせん。信頼関係の構築の仕方は営業マンのパーソナリティや熱意次第ですので、僕が誰かに「こうした方がいい」と教えられるものではないです。ただ、一つ言えることは、熱意のある人間だけが味方を作れるし、その味方を多く作れた人がベストセラーを作れるんですよ。
-やはり熱意は重要ですか?
太田:どんなに売れている本でも、まずは「たった一人の熱狂」から始まります。まず誰かが面白いと思ってくれた本だけがブームになるんです。例えば『百歳まで歩く』(田中尚喜 著)(https://www.amazon.co.jp/%E7%99%BE%E6%AD%B3%E3%81%BE%E3%81%A7%E6%AD%A9%E3%81%8F-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88-%E7%94%B0%E4%B8%AD-%E5%B0%9A%E5%96%9C/dp/4344008596
-1軒の書店から本が売れていくことって実際にあるんですね。
太田:ありますね。ローカルな地域での仕掛け販売を通じて、それがやがて全国的に売れるようになることは多いです。例えば、ある営業マンが担当の池袋地区に30冊置いてもらって、売れ行きが好調であることを会議で報告したら、次は渋谷や新宿などの周辺地域へ販売範囲を拡大します。それでも売れ行きが好調だった場合は、今度は大阪に進出したり、新聞広告を出したりと、全国へ展開していきます。これは見城語録の1つである「点を線にして線を面にする」ということです。そういった動きを迅速かつ柔軟にとれるよう、販促の現場の意識を整えることも大切だと思います。僕は「別部署の管轄だから」とか「誰かの担当だから」という考えは持たないようにしているので、何か気になったらちょくちょく聞いたりしています。
-社内全体が役割を超えて動くは素晴らしいことですね。
太田:編集には、文庫編集長や新書編集長など各ジャンルの責任者がいますが、どの編集者が何を作ってもまったく問題ありません。編集者はその企画にとっていちばん適したジャンルを考えて、新書でも文庫でももちろん単行本でも作っていいのです。
<出版業界の戦闘集団・幻冬舎の営業トップが語る営業最前線>
-出版業界の営業環境に変化ありますか?
太田:出版業界の営業は未だに古いスタイルな部分が多いです。書店との連絡手段として、FAXを使っているのは先進国の中ではたぶん日本だけだと思います。ネット化、ペーパーレス化が進んだ書店から、家族で営んでいるような書店ももちろんあるので、それら全てを網羅するためには、まだまだFAXのような分かりやすい方法に頼らざるをえない面もあります。しかし、出版業界は今本当に過渡期にあると感じていて、新しい取り組みもどんどん出てきています。
ー具体的にはどのような取り組みでしょうか。
太田:例えば、うちの箕輪がやっているこの書店員限定のメールマガジンなんかもそうですよね。読者層を限定して、深く刺さる情報を発信することの重要性は、今後ますます高まっていくと感じています。僕らが書店に「こういうテレビ番組が放映されますよ」「こういう紹介がされますよ」とFAXやメール等で情報提供しても、「ああ、そうですか」で終わってしまうことも多いです。その一方で、箕輪が送るメールマガジンについて、他の出版社が気にしてるくらい影響力もあるわけで、その重要性は肌で感じています。
あとは、書店でのイベントをはじめとするリアルの場での書籍プロモーションは、ここ数年で一気にトレンドになりました。この手のイベントは、かつて作家がやりたいと言う場合もあれば、書店が提案してくることもありました。出版社は全国レベルで数千、数万冊を売ることが大きな目標で、なかなか一書店や書き手の要望に応えることが人員やコストの都合で難しいことが多かった。しかし今では、SNSの発達によって、1つのイベントに100人が参加してくれたら、その100人がそれぞれのSNSで発信してくれたら、莫大な数のフォロワーにまで訴求することができるので、影響力が増しましたね。そういう意味では、4月に箕輪プロデュースのCDも発売されますが、その企画もSNSがあるから実現したといえるのでしょうね。もちろんプロモーションには幻冬舎営業局も積極的に協力します。
-1編集者が私的に出しているCDの販売に、なぜ幻冬舎の営業が関わるのでしょうか?
太田:箕輪はCDが発売されてから、全国のショッピングモールを回って演歌歌手ばりにイベントを開催するらしいので、モール内の書店で、NewsPicks Bookが売れる可能性が高くなります。箕輪の著作である『死ぬこと以外かすり傷』や今回のCDとNews Picks Bookの持つメッセージ性は高い親和性があるので、箕輪がイベントを開けば、モール内の書店も盛り上がるだろうと。もちろん、箕輪にも書店へ行かせて本の営業活動をしてもらいます(笑)。
-なるほど。しかし、新しい営業スタイルが出てきている一方で、出版社の営業マンは全国に出張して、地道に書店を回っているイメージがありますが。
太田:書店に足を運んで、実際に現場を見る営業は重要ですね。販売力が同じ2つの書店で、同じ作品を販売したとしても、片方では売れて、もう片方は売れないなんてことは、ざらにあることなんですね。全ての書店で状況が違います。立地が駅に近いのか、客層はビジネスマンが多いのか、学生が多いのか、主婦が多いのか、その書店の特性を見て、環境を分析することは大切です。ある書籍が売れたとして、その理由は書店が大キャンペーンを張った結果なのか、それとも仕掛けで売れたのか。そういった情報は実際に話を聞くとか、足を運ぶとかしないと分かりません。ですから出版社の営業マンは自分の目で確かめることが大切です。
<自分に言い訳をしているうちは仕事なんて楽しくなるはずがない>
-最近、仕事に熱中し切れていない若者が増えているように感じます。どうしたら仕事を面白く感じることができるのでしょうか?
太田:視野が狭いからかもしれませんね。視点を変えてみる。例えばマネジャーや上司などの視点で見てみると、目の前の仕事が面白く感じるかもしれない。勝手に自分を一つの枠に閉じ込めないことが大事でしょうね。自分の仕事もやり切る、そして自分の担当外の仕事にも口出しをしたり、実際に手を動かしたりすると、仕事全体に対する考え方が変わって、面白く感じると思う。「これは自分の担当外だから」と伸ばそうとした手を引いてしまう理由はいくらでも見つかる。そんな時間があるなら、自分で自分の背中を押す理由を山ほど探し、120%でやり切るだけですね。自分に言い訳しているうちは仕事なんて絶対につまらないですよ。
-自分に言い訳せずに働け! ということですね。
太田:実際、僕も20代の時には寝ずにひたすら仕事をしていました。週刊誌を作っていた時は、バカみたいに予定が詰まっていて、どんなに辛いことがあっても制作作業は続いていくんですよ(笑)。そんな状況下で、仕事をこなして、かつ生き残るためには、書く技術や聞く技術など一つひとつのテクニックを上げていくしかない。例えば、当時は携帯がなかったから、忙しい人にインタビューしたかったらタクシーの移動中にインタビューさせてもらったり、長時間聞かないとなかなか面白いことを話してくれない人でも、たった15分で記事になるうような面白い話を聞き出す努力をするだとか、工夫をするようになります。人生のある一定期間、徹底的に量をこなす仕事に打ち込むことは必要だと思うんですよね。一つの仕事で失敗して、落ち込んでいる時間が長くなると、別の仕事に割けたはずの時間がなくなってしまう。ガムシャラに働いたあの時代があったからこそ、どん底の状態にならないようにメンタルをコントロールする術を覚えたしね。
-太田さんはどういう方針で若手を育てていますか?
太田:僕はもう50歳を越えていて、サラリーマンとして残された時間はあまりないと思っています。定年まであと9年しかないから、誰よりもスピードを持ってやらないと、あっという間に終わってしまう。それこそ春のキャンペーン企画や忘年会にしても、僕はあと9回しか参加するチャンスがない。限られた時間だからこそ、誰よりも濃密に、真剣に仕事に取り組むことができる自信がある。僕は残り時間を意識する年齢になって、ようやくこの感覚がわかったんだけど、どうにかして若い人たちに伝えていきたい。それが僕のミッションだと思ってます。人生には限りがある。限りがあるからこそ頑張れる。熱狂する後ろ姿を、いかに後輩や部下に見せられるか、魂を次世代に引き継ぐことができるか。
最後に、僕が高校生の頃から大事に持っている『スローカーブを、もう一球』という本があって、この表紙を開いた1ページ目に書いてある解説文を紹介させてください。とてもいい文章なんだよね。
「長い長い闘いが終わった。強豪がひしめく関東大会で勝ち残ったのは高崎高校だった。ヒーローもなく、ただひたすら自分達のペースで闘い続けた末の勝利だった。猛練習とは無縁で、甲子園出場など夢にも思わなかった秀才高の怪進撃を描いた表題作「スローカーブを、もう一球」。
スポーツにとりつかれた男たちは、時として、まばゆいばかりの光を放つ一瞬に出会う。それは束の間であるが故に、より純粋な硬質の輝きに満ちている。新鋭山際淳司が、豊かな感性で、スポーツをよぎる️️<一瞬>のきらめきを捉えた、「江夏の21球」を含む力作8編を収録。」
昭和56年に角川から出版されたものなのだけど、おそらくこれは見城が書いてるのではないかなと思ってるんですよ。本人に聞いたことはないけどね(笑)。
卒業がある学生時代と違い、仕事になるとそれが永遠に続くような錯覚に見舞われることがあります。それこそ、僕のような歳にならないとなかなか終わりの存在に気付くことはできない。しかし、いつか仕事を終える時がくる。その時に後悔をしないように、記憶の中にたくさんの本を残して欲しい。
どうか一緒に、たくさんの人へ本を届けてほしいと思います。
高校球児が3年間に命をかけるように、今この瞬間、役割や立場など関係なく、一緒に熱狂し、一緒にベストセラーを生み出そう。
『スローカーブを、もう一球』(角川文庫)山際淳司
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%92%E3%80%81%E3%82%82%E3%81%86%E4%B8%80%E7%90%83-1981%E5%B9%B4-%E5%B1%B1%E9%9A%9B-%E6%B7%B3%E5%8F%B8/dp/B000J7VX32/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1550987131&sr=1-3&keywords=%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%96%E3%82%92+%E3%82%82%E3%81%86%E4%B8%80%E7%90%83
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7.あとがき
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箕輪書店だより2月号を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
箕輪編集室ライターチームの浜田綾です。今回の2月号は「教育」をテーマにコンテンツを構成しました。
中でも私は、スタンダードブックストア心斎橋の中川社長に取材し、記事を執筆させていただきました。
中川さんのインタビューは他にもたくさんありますが、書店員さんの教育、今まで出会った店員さんの話を聞けたのは珍しいのではないでしょうか。書店に限らず「本質的な仕事をするために必要なこと」を聞くことができました。
他にも、「本の業界は、ほんとに狭い。遊び場いっぱいあるし、友達いっぱいおるはずやのに、わざわざ同じところでぐるぐる回って、同じ連中と遊んでる」「もっと著者とか、編集者とか、お客さんとか入り乱れてやれば本屋、あるいは出版業界自体面白くなるはずだ」という言葉が心に残っています。
私たち箕輪編集室は、ライターや編集者、あるいはそれを志す人、コンテンツ作りが好きな人、とにかく多種多様な人の集まりです。そういう集団が書店員・編集者・著者の方々に取材しコンテンツを作る行為自体が、新たな面白い遊びになるかもしれないと考えています。これからも書店員さんが読んだ時、わくわくするような内容をお届けしていきます。
ちなみに前回1回目のメルマガは冊子バージョンも存在するので、よかったらぜひ受け取ってください。書店員のお友達に勧める時にも活用していただけると幸いです。
感想や、ご要望、冊子ご希望の際は、「#箕輪書店だより」をつけてつぶやいてください。箕輪編集室メンバーでエゴサーチして伺います。
では、来月もメルマガでお目にかかれることを楽しみにしています。
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*取材...橘田佐樹、浜田綾、柳田一記
*書き起こし...佐藤裕美、浜田綾、氷上太郎、佐藤流空
*編集...新井大貴、荒木利彦、大久保忠尚、橘田佐樹、浜田綾、柳田一記
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