書店員向けメールマガジン【箕輪書店だより】2019年11月号
1. 書籍インタビュー
情報メインから感情メインの時代へ。
インフォグラフィック・エディター櫻田潤さんが語る、情報と感情の伝え方。
2. あとがき
箕輪書店だより 編集長 柳田一記
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1.書籍インタビュー
情報メインから感情メインの時代へ。
インフォグラフィック・エディター櫻田潤さんが語る、情報と感情の伝え方。
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NewsPicks編集部のインフォグラフィック・エディターかつチーフ・ソーシャル・エディターであり、オンラインサロン『櫻田潤の「ビジュアルシンキングラボ」』を主宰される櫻田潤さん。2019年10月29日に新刊『たのしいスケッチノート 思考の視覚化のためのビジュアルノートテイキング入門』を上梓された櫻田さんに、メディア初出しの学生時代の話から新刊の話、そして書店員の皆様へのメッセージを伺いました。
<芥川にはまった学生時代と、消去法で選んだ最初のキャリア>
―櫻田さんは数多くの取材を受けていらっしゃいますが、ぜひ箕輪書店だよりで初出しエピソードを聞かせていただけると嬉しいです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
櫻田さん:よろしくお願いします。今日は、書店への愛を伝えたいと思います。
そもそも僕は小説家か画家になりたかったんです。高校から大学にかけては小説家に傾いていて、高校生になると芥川龍之介や太宰治の文章を原稿用紙に模写していました。白樺派の出身校である学習院に通っていたこともあり、白樺派の小説はかなり読みあさりましたね。彼らはいいとこの人達なので、理想主義なんです。そういうところは影響を受けていると思います。
なんでこんなに鋭い文章が書けるんだろう、無駄のないものを書けるんだろうって、芥川の作品を読みあさっていたら、長い文章を書いても添削していくうちに短くなっちゃうというエピソードを見つけて。なんだか自分と似ているなと思いました。太宰も芥川も、長編が苦手なんですよね。性格というか本質的には、自分も長いものはつくれないんだろうなと感じました。
―本をたくさん読まれていたんですね。
櫻田さん:はい、本をレーベル買いするのも好きでしたね。当時、芥川龍之介を新潮文庫で揃えたのですが、数年後に筑摩書房を読んで、知らない作品があることを知ったりもしました。本がボロボロになっていくのも好きで、背表紙がちょっと剥がれてテロテロしてる感じがすごいエモいんです。芥川龍之介は特にどはまりして、今でも全部とってあります。
大学生の時は、書店アルバイトにも応募しました。面接の事前アンケートで好きな作家を聞かれて、村上春樹と村上龍って書いたんです。そしたら店長面接時に、二人は全然違うじゃないかと言われて。当時の自分は、その二人に共通する魅力を店長にうまく説明できず……。まあ、それだけが原因じゃないと思うんですけど、落ちました(笑)。
それから他の書店アルバイトには応募せず、都内のコンビニでオープニングスタッフのアルバイトを始めました。人見知りなので、接客業をしていたことは意外に思われるかもしれませんが、パン屋さんでも働いてたりしました。
―その後、就職活動を経てエンジニアになられると。
櫻田さん:実は、僕の最初のキャリアは消極的理由で選んでいます。というのも、ものをつくりたくなかったんです。すごいひねくれていたので、世の中にこれだけものが溢れているのに、製品的なプロダクトをつくっても意味ないんじゃないかと思ってました。だから、ハードウェアじゃないものをつくれる会社で働きたくて。ソフトウェアという無形なものをつくれるエンジニアになりました。
先ほども少し触れましたが、白樺派の影響で僕はちょっとした理想主義者なんですね(笑)。なので、無形のコンテンツであれば、地球温暖化には関係ないというか、ゴミにはならないぞと。本は有形なので、無形のものをつくるときとテンションが違って、断裁されるところまで考えながら執筆する感じになります。基本的には、エンジニアも今のインフォグラフィック・エディターも一緒で、無形のものをつくっていると思っています。
<これまで見えなかったものが見えてくるインフォグラフィック>
―ご自身のことを“データや情報を視覚化して、見えにくかった事実やストーリーを見えるようにする人”と紹介されていますが、特に印象に残っている作品というと?
櫻田さん:一番は、関ヶ原の戦いの兵力数差を見える化したインフォグラフィック作品(※1)ですね。これまで歴史の教科書などで物語の筋として知っていた情報、例えば小早川秀秋の裏切りや戦わずに傍観した大名がいたことなどが、どれくらいのインパクトだったのか。自分はこれまで正確に捉えられていなかったことがよく分かりました。
東軍と西軍はもちろん、裏切った人や不戦だった人を色分けした作品なのですが、こんなにも差がある中で石田三成は戦っていたんだな、と悲しい気持ちになりました。また関ヶ原の戦いの布陣を見た外国の方が「なんで西軍が負けたんだ、この布陣であれば西軍が勝つはずだ」と言ったというエピソードを聞いて、きっとその方もこのインフォグラフィックを見ていれば、その疑問を解消できたんだろうなと思って。
もし、自分が学校でこのインフォグラフィックを使った授業を受けていたり、テキストや映画ではない別の切り口からの情報を目にすることができていたら、歴史の捉え方も全然違っていたんじゃないかなと思います。
※1)https://i1.wp.com/visualthinking.jp/wp-content/uploads/2019/06/battle_of_sekigahara_l.png?resize=1024%2C868&ssl=1
―たしかに、一目で石田三成の劣勢ぶりが分かりますね。こちらは初期の作品ですが、最近の作品ではいかがですか?
櫻田さん:最近つくったものだと、創業年まとめのインフォグラフィック作品(※2)ですね。時系列にまとめているのですが、今盛り上がっているテック企業の創業が、約10年前に集中していることが分かります。2008年にAirbnb、2009年にSlack、Uber。2010年にInstagram。急にワーッと出てきているように見える企業にも歴史はすでにあって、10年くらい続けると物事は成り立つんだなというのが、視覚的に伝わる作品です。
この作品は2012年までなので、今後2013年から2018年に創業した企業も書き足したいと思います。完成すれば、今から数年後の未来に席巻しているであろう企業を推測できる作品にもなり、過去から現在だけでなく現在から未来を予測できる作品へと進化します。
物語は時系列であることが大切で、過去・現在・未来の連なりをどう捉えるかによって解釈や理解は全然違ってきます。時系列に並べることで現在のランキングだけでは想像できなかった過去と未来がつながり、未来を思い描けるようになる。未来を見える状態にすることで視野は広がり、これまで見えなかった物語を感じることができるのがインフォグラフィックの魅力です。
※2)https://i0.wp.com/visualthinking.jp/wp-content/uploads/2019/09/foundingyear.png?resize=1024%2C256&ssl=1
<ビジュアルをつくり、拡散する上で一番大切なのは倫理観>
―インフォグラフィックは情報の切り口と時系列で見えることが重要なんですね。ちなみにビジュアル化されるときに櫻田さんが大切にされている心構えはありますか?
櫻田さん:倫理観ですね。今後、非常に重要になってくると思います。新刊でも『ダークサイドに気をつけろ』というコラムでトランプ陣営が投稿した画像の件を取り上げましたが、当選するため、選ばれるために、誤った印象を人に与えるビジュアルをつくることは、悪事への加担となります。
Facebookは投稿のファクトチェックの対象から、政治広告を除外する方針を挙げましたが、Twitter社のCEOジャック・ドーシーは、政治的広告はすべて禁止すると明言しています。これはTwitter社のスタンスが正しいと僕は思っていて、ビジュアルに対しても嘘がないことや誠実さが、一番大事です。
―倫理観についてさらに伺いたいのですが、ご自身のビジュアルシンキングサイト(※3)で10個の行動規範(※4)を掲げられています。これらを策定されたきっかけは?
櫻田さん:行動規範をつくったのは、Googleが掲げる10の事実(※5)が好きでよく見ていたことがきっかけです。Googleの6番の「悪事を働かなくてもお金は稼げる。」は、まさに倫理観ですよね。行動規範の3番の「悪事に荷担しない」の基になります。何か行動するうえで倫理観は非常に問われていると思いますし、宣言しておけばやらなくなるというか。人は弱いので、倫理観を明言しておくことで悪い方にいかない効果もあると思っています。
また、これは新刊の『どんな人と連携したいと思うか』というコラムでも書いているのですが、OKRという目標設定ツールを伝導しているジョン・ドーアの著書『伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』に出てくる、“人は見えないものとは連携できない”という言葉に共感しているからです。まさにその通りだと思っているから、行動規範を設定しオープン化するようにしています。
※3)https://visualthinking.jp/
※4)https://visualthinking.jp/about
※5)https://www.google.com/about/philosophy.html?hl=ja
―ご自身のサイトには、行動規範以外にもさまざまなことをオープンにされていますね。オープン化しているのはなぜですか?
櫻田さん:基本的にはつくる側の人間なので、仕事の誘いをいただくことがよくあります。でも、基本的にはやりたくないんですね。やりたくないまで言うと語弊があるんですが、できるからやりたいとは限らないってことが結構あって。自分にとっての幸福は、できるかつやりたいことをやっている状態なんです。
だから、せっかくお誘いいただいてもお断りをしないといけない状況なので、せっかくだったら最初の時点で「やっぱり違いますね」ということが分かっていたほうが話が早い。自分がどういう人間で、どういう思想を持っているかを示すことが一番コミュニケーションに無駄がないですし、探り合いもありません。お互いに見える状態にしておくことで、連携しやすくなると実感しています。
見えるようにしておくとスムーズになるものの一つは、作品ですね。ただ作品だけだと思想が伝わらないので、考え方を示しておく。本を出すのも僕自身の「見える化」の一環になります。情報を出してオープンにしておくことで、コミュニケーションの齟齬がなくなると考えています。
<新刊を出した今。やりたいことと、やりたくないこと>
―これから「これはやりたくない」「これはやりたい」と思ってることをずばり言うと?
櫻田さん:インフォグラフィックは、社内でつくれる人がチームになっているから、僕がつくる必要はもはやありません。
これから必要なのは、ストーリー。でもストーリーという言葉じゃまだ弱くて……、昨今だとナラティブと言われていると思います。僕はちょっとナラティブをまだ理解しきれてはいないんですが、自分なりの解釈で言うと、物語というより神話かなと。
物語が一人歩きして、勝手に語り継がれるものが、ナラティブなのではないかと思っていて、そういうものをつくりたい意欲があります。インフォグラフィックで伝えられる世界は、テキストで伝えられる世界よりは広いと思うんですけど、さらに広げて何かを伝えるとなったら、神話性が必要になってくる。だから、これからはそっちに挑戦したいです。
具体的には、漫画や動画。あと絵本とか小説もいいなと思っています。海外には漫画と小説をミックスしたグラフィックノベルがあって、感覚としてはそれが一番近いかもしれません。
―もともと小説家志望でいらっしゃいますし、櫻田さんがつくるグラフィックは文章がしっかり書かれているものが多い印象です。
櫻田さん:そうですね、物語に関わることをやりたいです。インフォグラフィックは卒業というか――。とはいえ、数年後にまたインフォグラフィックをやったりして混ざると思うんですけど、今現在の興味対象ではなくて。インフォグラフィック・エディターと名乗っているんですけどね(笑)。
―(笑)。やりたいことが変化してきたのは、何がきっかけですか?
櫻田さん:ビジュアルで伝えなきゃいけないことは大きく2つあって、情報と感情です。コンテンツという単位で考えた場合、インフォグラフィックは正確に分かりやすく伝えるために、感情より情報に力を注いでいます。感情ももちろん盛り上がるようにはしていますが、あくまで情報が絶対的な存在。それがいいと思って、これまでやっていました。
しかし、今後情報から感情にシフトしたいと思うようになりました。きっかけは、SNS上で手書きのコンテンツを見る機会が増えたことかもしれません。iPadでちょこっと書いたものやグラフィックレコーディングを撮影したものはタイムラインやフィード上で詳細が見えないから、わざわざタップして拡大する自分がいるわけです。これってなんでなんだろうと。
情報表現としては、おそらくインフォグラフィックのほうが優れているはずなんですよね。ただ、そうじゃない魅力が感情表現にはある。今後は、感情表現の中に情報がある状態にして、情報から感情にシフトしていこうと思っています。
―SNSの存在は大きそうですね。
櫻田さん:はい。僕は基本的には多くのことを自動化できると考えています。インフォグラフィックも自分でつくってきたからこそ思うんですけど、脳内のアルゴリズムでロジックに従ってアウトプットしているだけだと思っていて。
もちろんイラストの表現はオリジナリティが伴いますが、ある意味素材を調達すれば済む話なんです。これからは自動化されたりテンプレート化されたイラストなどが増えていくと思います。機械学習を画像編集やイラスト制作に応用したAdobeの技術とか本当にすごい。
だからそうなってきた時代に何が価値なのかを考えると、感情を込めてその人なりの真実としてまとめた情報を物語として語る、という情報の見せ方が大切になってくるんじゃないかと思っています。クリエイターの価値は、そっちにしか見出せないんじゃないかと僕は感じているんですよね。
―情報価値と感情価値の優位性というか、大切にする基準が変わってきていると。
櫻田さん:例えばAmazonは情報価値ですけど、書店は感情価値になると思います。Amazonと比べて書店はスケールは小さいかもしれないけれど、書店ならではの小さい物語がたくさん増えるといいなと思ってるんです。
前回出した『たのしいインフォグラフィック入門』では、インフォグラフィックをつくりましょう、と結構ハードルの高いことを言ってました。今回の『たのしいスケッチノート』は、手書きでいいんだよ、自分のことを書けばいいんだよっていうアプローチに変わっています。手書きのコンテンツは今の時代性というか、未来を見据えたときに、正しいあり方のような気がしていて。まさに「あり方」の変化が起こっているんですよね。
<『たのしいスケッチノート』は、感覚を磨くための本>
―そんな変化の時代の中で出された、新刊『たのしいスケッチノート』のお話しをぜひ伺いたいです。
櫻田さん:この本では、日々の中で感性を磨くことは、常に絵を描いてきた人やデザイナーの人じゃなくてもできることだよと言っています。
実は執筆に取りかかった一年前は、精度の高いアウトプットをつくれるようになる本を目指していました。ビジュアルグラフィックに関して言うと、情報整理に重きをおいていたんです。でも、そういう気取った堅苦しいやつは受け入れられにくいし、それをやっても広がんないなって気がして。
家庭料理をつくるための本なのに、レストラン向けの本をつくろうとしちゃってたわけですよね。もう少し普段ちゃちゃっとつくれるものにしないと、時代に合ってないなと。この本のレシピを見れば、誰でもつくれるものにしたいなと思いました。
この本のコアターゲットはビジネスパーソンなんです。ビジネスパーソンに対して「アートや美意識が大事だから美術館に行きましょう」というような内容が書かれた本はあるんですけど、美術館に行かない場合に何ができるのっていうことを書いている本はおそらくないんです。
半年前なら美術館に行こうと言うだけで良かった。でも今は美術館に行くだけではダメで、美術館で何を感じたのか、日々何を感じているのかを、感覚的にまとめる術が以前より必要とされてきていると考えています。
ただ、現状でうまくいっている人にとって、この本が必要かどうかの判断は難しいかもしれないです。短期的に成果があがる話ではなく、コスパが悪い話をしていますからね。でも中長期で見たときに何が残るかというと、やっぱり感覚的なもののはずです。これはまさに美意識やアートに通じる話だと思います。
僕にとってアートとは、誰でもいろんな見方ができることが正解で、一番あるべき姿だと思っています。ビジネスの論理でいくと、これしかだめだとかこれじゃなきゃだめだとかで一神教になりがちなんですけど、僕は多神教の表現の仕方をつくりたかった。
字も人それぞれ違いますし手書きであることによって表現が多様になります。一つの表現にこだわらずあなたの表現でいいんですよと今回の本で伝えたかったんです。これだけ論理的な思考が求められる時代に感覚を磨くための本っていうのは意外となかったと思います。そういった思想は以前からずっと持っていたんですけど、表現手段が思想と一致するのに一年くらいかかりましたね。
<物語をどう伝えていくのか。思考は揺らぎながら次回作へと続いていく>
―2019年10月29日に『楽しいスケッチノート』を上梓され、一息つかれているところだと思います。今後の展望はどのように考えていますか?
櫻田さん:物語を今後どう伝えていくかっていうところで言うと、スケッチノートは瞬間なんですよね。時間軸の中で、一つひとつの瞬間をどう紡いでいくか、長いパッケージでつくる表現はないのかっていうことは引き続き考えています。
とはいえ、あまり深く考えずに行動する期間が一年くらいは必要ですね。本を書くフェーズは体系化しきったタイミングですが、最初から体系化を目指しちゃうと揺らぎがなくなってしまうので。今は野性的に考えて、一旦、感覚的にやりたいことをやる時期かなと捉えています。
例えばラボに関しても、中長期のことを考えるというよりは、今このメンバーと一緒にやりたいことは何かなって、わりと気まぐれに行動していますね。だから、具体的な目標は今のところないです。厳密に言えばあるとは思うんですけど、そこまで意識せずに感覚的に生きてます。昨日も絵を描いていたんですけど、次の広がりをつくるための時間を過ごしています。
――ちなみに次回作は?
櫻田さん:だいたい2年置きくらいに本を書いているのですが、次の方向性としては5つあって、一つはグラフィックノベル。もう一つは絵本みたいな子供向けのもの。そして作品がどんどん変わってきているので、そういうことが分かる作品集を出したい。あとは小説とビジュアルシンキングとは、という大枠のところですね。
<書店さんと一緒に物語をつくりたい>
―もし櫻田さんが書店員さんだったら、どういう書店をやってみたいですか?
櫻田さん:美術館と一体化しているような、ミュージアムとしての書店はやってみたいですね。絵の展示や個展とセットになっている、いわゆる文化空間としての書店です。「誰々の机を再現」とかやっているところがありますが、そういう体験するスペースをつくりたいです。
というのも、今NewsPicksでソーシャル・エディターを兼任し、Twitterコンテンツをつくっているのですが、リンク先の記事をたとえ読まなくても、その投稿単体を読むだけで得るものがあるという状態が良いと思っているからです。会社としては、その先の記事に誘導したいわけですけどね。
本屋さんも同じで、本を買わないなら行く意味がないというのは違うと思っていて。本を買わなくてもコンテンツとして消費できるものが置いてある環境を考えると、やっぱりミュージアムが近いかもしれないですね。
美術館に行った帰りにショップスペースで何かを買うとか。ライブの前後にグッズ売り場で何かを買うとか。書店に行かないと体験できない物語とセットで本を買うという行為があるといいなと思います。例えば美術館でバスキアの作品を見て、ああこんな作品なんだって分かれば他の作品をもっと見たくなるし、言葉も読みたくなってバスキアに関わる本を買うわけですから。
―体験できる書店、行ってみたいです。では、最後に書店員さんへのメッセージをお願いします。
櫻田さん:最近、知り合いの知り合いくらいのコンサル会社で働いている人が『たのしいスケッチノート』を読んでくれて「あの本のターゲットって誰?」と言っていたという話を聞いて。僕の周りにはターゲットの方がたくさんいるなと思っていたのですが、迷いなく生きている人から見ると、どんな本なのか意味が分からないのかもと思ったんです。本来のセオリーであれば、書店の棚が明確じゃないと売れないとも言われているわけですよね、書店の店員さんもどこに置いていいのかってなりますし。ビジネスの棚なのか、ノート術の棚なのか、デザインの棚なのか。
それで僕の希望なのですが、この新刊はまずビジネスの棚に置いてもらって、最終的にデザインの棚に置いてほしいなと思っています。ビジネスの棚は入れ替わりが激しいと思うので、それで置かれなくなってしまうのではなく、最終的にデザインの棚で普遍的に置いてほしいです。『たのしいインフォグラフィック入門』も今でもデザインの棚に置いていただけているので、可能であれば最後はその隣に置いてほしいですね。
―かしこまりました。ここまで明確なメッセージは書店だより初かもしれません(笑)。しかとお伝えさせていただきます。
櫻田さん:あと僕、書店で個展したいんです。アートギャラリーとして使わせてくれる書店さんいらっしゃったらぜひ連絡ください。例えばオープンスペースを借りるとかもあるんですけど、感覚的には書店さんと一緒にやりたいと思っていて。今、グッズも制作しているのですが、オンラインショップとかいろんなお店に卸すとかではなく、僕は書店に置きたい。理由は、書店さんと一緒に物語をつくりたいからです。書店愛です。パートナーになってくださる書店さん、募集してます。
―最初に宣言いただいた通り、書店愛をお伝えいただきありがとうございます! 本日はお忙しい中ありがとうございました。
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2.あとがき
箕輪書店だより 編集長 柳田一記
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「箕輪書店だより」へご登録いただきありがとうございます。編集長の柳田一記です。
11月号は、『読みたいことを書けばいい』の著者・田中泰延さんと『たのしいスケッチノート 思考の視覚化のためのビジュアルノートテイキング入門』の著者・櫻田潤さんにご登場いただきました。今回は多少変則的に「特別号」と「定例号」に分けての配信となりましたがいかがでしたでしょうか。
「箕輪書店だより」とは、別の話になりますが、先日、ニッポン放送とSHOWROOMがコラボした24時間配信特別企画のなかで、前田裕二とその縁のあるゲストの方々との対談をまとめ、24時間で一冊の本をつくり上げるという企画がありました。
箕輪編集室として、この企画に全面協力させていただいたのですが、作成した本『ギフトのつくり方』のテーマは「プロデュースの民主化」です。そして、プロデュースに必要なことは、「その人のコアな部分と市場とを行き来する行為」だと言います。コアな部分とはその人の持つ本質のことです。無駄なものをどんどん引いていき、その人に残る唯一無二性のことです。
どうしても世間と混じり合わない自分のコアな部分を削り出し、それを市場という冷徹な視線に晒して研ぎ澄ませるからこそ、自分の魅力を最大限に引き出すことができると言います。
人の持つコアは、決して混じり合うことがないため、大変ユニークなものになります。今回、取材させて頂いた二人は強烈なコアの持ち主です。それはインタビューの内容からも察することができると思います。世間と交わらない大きなコアを持つお二人は、どのように市場と対話をし、自らの魅力を最大限に引き出していったのか、想像するだけでもワクワクしてきます。
『箕輪書店だより』では、これからも読んで勉強になる、ワクワクするような内容をお届けしていきます。感想や、ご意見ご要望、冊子送付などご要望がございましたらハッシュタグ「#箕輪書店だより」をつけてTwitterでつぶやいてください。箕輪編集室のメンバーがすぐに伺います。では、来月もメルマガでお目にかかれることを楽しみにしています。
<箕輪書店だより 11月号>
編集長 柳田一記
*取材...土居道子・柴山由香
*編集協力...田中ゆかり・和田恵美・大谷正憲・大西志帆・中山利文
*執筆...土居道子
*制作協力…柴山由香
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