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社会保険労務士法人SUCCESSIONメールニュース【読み物編】(メルマガvol.46)

2023年11月16日



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今年も、年賀はがきの発売が始まりました。

平安時代から始まる年賀状の習慣ですが、1937年に始まった
日中戦局が徐々に悪化し、物資の不足等から年賀状を自粛
する動きが全国に広がっていきました。そして1940年には、
年賀郵便の特別取扱いが中止されてしまいます。

戦後の1948年、年賀郵便の特別取扱いは再開されましたが、
社会不安の中、利用は低調だったようです。

その中で、京都在住の林正治氏(当時42歳)は、年賀状の
交換がかつてのように盛んになれば、お互いの無事を確かめ
合い、励まし合えると考えました。年賀状にくじをつけて
寄付金を加えることで社会福祉にも役立てようと、自ら
ポスターや見本のはがきまで製作し、郵政省に働きかけた
ことで、お年玉付き年賀はがきの発売を実現することが
できました。

ちなみに、初年度の特賞はミシン。1等は純毛洋服地、2等は
学童用グローブ、3等は学童用コウモリ傘でした。

2024年用の年賀はがきの発行は、前年より12.2%も少なく
なっていますが、デジタル化が進む現代だからこそ、直筆で
のメッセージを受け取ると嬉しいと感じるのかもしれません。



さて、今回のメルマガは・・・


┏━[CONTENTS]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 ◆今月の経営格言

 「組織というフィルターを通して『真水』になった情報
  では、タイミングを逸し、間違った判断・行動に
  なってしまいます」

  井上礼之
 (元ダイキン工業株式会社代表取締役会長兼社長)

 ◆コラム
『中小企業の従業員エンゲージメントに関する調査』が
  公表されました

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――――――――――――――――――――――――――――
◆今月の経営格言

 「組織というフィルターを通して『真水』になった情報
  では、タイミングを逸し、間違った判断・行動に
  なってしまいます」

  井上礼之
 (元ダイキン工業株式会社代表取締役会長兼社長)

  出所:「経営は『真水』をくむと間違える(井上礼之氏の
      経営者ブログ)日本経済新聞電子版セレクション
      (2012年5月11日付))」(小学館)
――――――――――――――――――――――――――――
冒頭の言葉は、

「経営者はバイアスの掛かっていない生の情報に直に触れて、
 決断の勘所を研ぎ澄ませておくことが重要である」

ということを表しています。

井上氏が社長に就任した当時、バブル崩壊に加えて冷夏や円高
による打撃を受けて、ダイキンは17年ぶりの赤字を計上しまし
た。井上氏は業績を立て直すため、中国への本格進出などに着
手した他、社内で次代の成長事業として位置付けていた「ロボ
ット」「床暖房」などの不採算事業を整理しました。

井上氏はこうして主力であるエアコン事業に資源を集中させて
成長のための布石を打ち、その後は世界的な空調機メーカーの
買収や、提携などに取り組むことで、ダイキンをグローバル
企業へと躍進させました。

このように見てみると、井上氏の経営者人生とは、大きな決断
の連続であり、その決断を見事に成功させてきたといえるかも
しれません。しかし、その決断はどれもスムーズに進み、自信
を持って下したものばかりではなかったでしょう。

それでは、なぜ井上氏はこのような思い切った決断に踏み切る
ことができたのでしょうか。井上氏は経営の3カ条として、
「大局観を持つこと」「『正解』のないことに答えを出す胆力
を持つこと」「組織の新陳代謝を促し続けること」の3つを挙
げています。特に2つ目の「『正解』のないことに答えを出す
胆力を持つこと」とは、困難な事態に直面しても、決断を下
さなければならない経営者の役割を端的に表しているといえ
ます。

井上氏は「正解」のないことに答えを出す際のポイントとし
て、次のように述べています。


「『一流の戦略と二流の実行』か『二流の戦略と一流の実行』
 のどちらがいいのか。私は後者を選びます」

戦略とは、企業の進路を示すものです。経営者はその重要性を
認識するあまり、決定に際しては熟慮を重ね、時間を要してし
まいがちではないでしょうか。

しかし、経営環境は日々変化するものであり、慎重に時間をか
けて決定を下していたのでは機を逸してしまう恐れがあります。
重視すべきは、戦略の完成度よりも戦略を決定するスピードと、
決定した事項をやり抜く実行力です。

たとえ、戦略の完成度として不十分であると思える段階であっ
ても、ある程度の方向性が定まった段階で決断を下し、走りな
がら修正をしていくことが経営者の決断の在り方です。

とはいえ、時間が少ない中での決断には自信を持てないと、不
安を覚えるかもしれません。100%の自信を持って決断を下す
ことはできなくても、決断を後押しする一手となるのが自身の
勘所です。

「勘」というと、非科学的で不確かなものだと思うかもしれま
せん。しかし、日々、経営の最前線に立っている中で、「何か
がおかしい」「変化の兆しを感じる」といった場面に遭遇する
ことがあるはずです。そうした感覚は一担当者であれば見落と
しがちな全社的な視点から物事に接していたり、これまでの
豊富な経験に照らしてみて感じることができる、経営者しか持
ちえない感覚であり、そうした意味で「勘」は重要な決断の基
準です。

現場は、「業務上のミスを改善する」など、ある程度正解が定
まっている問題に対しては、正しく論理を積み重ねていけば答
えを出すことができます。しかし、戦略の決定などのように、
正解のない問題に答えを出し、指示することができるのは経営
者だけです。そうした重要な役割を担っている経営者だからこ
そ、部下から上がってくる報告を鵜のみにするのではなく、ろ
過されていない自社、顧客、市場などの生の情報に対して、誰
よりも敏感にアンテナを張り、勘所を磨いておく必要があるの
です。



【本文脚注】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本
稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになって
いる情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当
性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即
した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的
と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありま
せん。

【経歴】
いのうえのりゆき(1935~)。同志社大学卒。
1957年、大阪金属工業株式会社(現ダイキン工業株式会社。
本稿では「ダイキン」)入社。
1994年、代表取締役社長就任(1995年より会長職を兼任)。
2002年、代表取締役会長兼CEO就任。
2014年、取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員就任。

【参考文献】
「経営は『真水』をくむと間違える(井上礼之氏の経営者ブロ
 グ)(日本経済新聞電子版セレクション(2012年5月11日付))」
(日本経済新聞社、2012年5月)
「不透明な時代を生き抜く経営の3カ条(井上礼之氏の経営者
 ブログ)(日本経済新聞電子版セレクション(2012年7月6日
 付))」(日本経済新聞社、2012年7月)
「東洋経済オンライン(2011年11月10日付)」
(東洋経済新報社、2011年11月)
「ダイキン工業株式会社ウェブサイト」
(ダイキン工業株式会社)



――――――――――――――――――――――――――――
◆ コラム
 『中小企業の従業員エンゲージメントに関する調査』が
 公表されました
――――――――――――――――――――――――――――
先日、商工中金より『中小企業の従業員エンゲージメントに
関する調査』が公表されました。

本調査は、従業員エンゲージメント※について、企業における
計測状況や、各施策の取り組み状況・課題等をまとめたもの
です。

※本調査における「従業員エンゲージメント」は、
 言葉本来の意味である「従業員が会社の向かっている方向
 性に共感し、自発的に会社に貢献したいと思う意欲、帰属
 意識」に加え、「従業員の心身の健康、ウェルビーイング
 (社会的な充実)」など、広い意味での従業員の満足度や
 幸福を含む概念として定義されています。

商工中金『中小企業の従業員エンゲージメントに関する調査』
https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/231031_topics.pdf
調査対象:商工中金の取引先中小・中堅企業
調査期間:2023年8月18日~9月4日
有効回答数:2,513社

今回は本調査結果の要点を抜粋し、以下にご紹介します。

===========================
■従業員エンゲージメントの計測状況
 ・外部ツール等で計測    :7.7%
 ・社内アンケート等で計測  :9.9%
 ・上記以外の方法で計測   :12.6%
 ・現在計測なし、必要性感じる:57.2%

■従業員エンゲージメント向上にむけた各施策の取組状況
 ・各施策に対し、「取組済」と回答した比率が大きい施策
  1位:賃金の引き上げ(64.4%)
  2位:ワーク・ライフ・バランスや多様な働き方の推進(47.3%)
  3位:企業理念の策定・浸透のための活動(46.7%)

 ・各施策に対し、取組済の企業を母数として、「効果あり」と
  回答した比率が高い施策
  1位:賃金の引き上げ(51.1%)
  2位:企業理念の策定・浸透のための活動(41.2%)
  3位:風通しの改善・コミュニケーション活発化(41.0%)

■従業員エンゲージメント向上を図るうえの課題 ※単一回答
  1位:時間がない、人手が足りない(24.6%)
  2位:リーダー的人材がいない(24.6%)
  3位:情報・ノウハウが不足している(23.8%)

■好事例・ユニークな取り組み等
 ・人間力向上セミナーを定期受講してもらい、個々が自分と
  向き合い、人生をどう生きるかを考えてもらう機会を作っ
  ている。また1on1ミーティングにより、良い関わりをす
  ることを会社全体で取り組んでいる。その結果風通しのよ
  い職場になりつつあり、若手社員の離職率も下がっている

 ・自社内でのビアパーティーを3年ぶりに復活。多職種メン
  バーのコミュニケーションを一定の時間内で取ることが
  でき、勤務時間・日程調整の円滑化に一定の効果が上がっ
  ていると感じる
===========================

賃金面の満足度向上や企業理念への共感を促す取り組みだけで
なく、従業員が働きやすいと感じる職場環境づくりも、従業員
エンゲージメント向上においては重要な要素であると言えます。

従業員エンゲージメント向上は、人材の定着率向上という意
味でも近年注目を集めています。人手不足が一層深刻化する
中で、同取り組みは中長期的な企業存続に好影響を与え得る
ものとして、重要な戦略になっていくことが予想されます。

本調査でも取り上げられているように、組織改善に取り組むに
あたっても、時間的猶予や推進する人材不足、ノウハウ不足が
課題となり悩まれている経営者様も多いかと思います。

弊所では従業員の皆様がより活き活きと働ける組織づくりの
ご支援も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。


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