退職する社員の賞与:減額はどれくらいまでOK?
社労士で採用定着士の西野です。
早いもので12月に入りました。
冬期賞与の準備をされている方も
おられることと思います。
賞与の時期になると、よく相談を
いただくのですが、退職する社員の
賞与を無しにできないか?
あるいは、どの程度までなら減額
できるのか?
ということです。
まず「賞与無しにできるか」ですが、
就業規則によります。
就業規則に賞与の規定がない。
あるいは、
「会社が必要とした時に支給する
ことがある」
というように具体的な定めが無い場合は
いつ、誰に、いくら支給しようとも
会社の判断によります。
多くの会社では、このようになっている
かと思います。
・賞与の支給:
年2回(7月、12月)
・算定対象期間:
7月分 前年12月~5月
12月分 6月~11月
・対象者:支給日当日に会社に在籍し
かつ算定対象期間に通常に勤務
していた者
このような規定があれば、
退職予定であったとしても、
無しにすることはできません。
では、減額はどうでしょうか?
賞与には2つの役割があると考えられます。
1つは、対象期間の評価に応じた
賃金の後払い。
もう一つは、将来への期待。
退職する以上、将来への期待はできない
ので、ある程度の減額は可能とされています。
では、どの程度までの減額なら許容範囲
なのでしょうか?
これには、ベネッセコーポレーション
事件が重要な指針となります。
退職予定者のボーナスを82%減額
したことに対し、争われました。
結論から申し上げますと、82%は
やり過ぎ。
将来への期待部分は2割まで、との
判決になりました。
なので、今回のタイトルの答え
としては2割程度まで。
ですが、実際に、このままやって
しまうのは問題有りだと思うんです。
退職予定者の賞与を減額する、
というのは、早めに退職を伝えていた
人が不利になるということです。
そして、間違いなく賞与額を見た時に
「メチャ減らされた!」
って周囲にボヤキます。
私自身も、会社員時代に何度もそんな
ボヤキを聞いています。
で、それだったら賞与をもらった日に
「明日から有給使ったあと、退職します」
となってしまう可能性があります。
法的に問題が無くても、実務上大きな
問題です。
私がいつもアドバイスしているのは、
退職予定者の賞与も、個別の評価に
基づいて対応することです。
これまで会社のために頑張った社員
には、その努力と貢献を認め、賞与に
上乗せすることも一つの方法です。
そして、そのことを本人に伝えること。
本人にとっても、社長や会社に対する
良い印象を残して退職することになり
他の社員にも喋ってくれる可能性が
あります。
一方、評価の低い社員には、問題に
ならない範囲で減額を大きくする
ことも必要です。
もし、退職予定者の賞与のことで
悩んでおられたら、参考になれば幸いです。
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西野社労士事務所・株式会社チーム力
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