退職金の財源、どう確保する?
社労士で採用定着士の西野です。
退職金制度を設計する際に考えるべきポイントは、主に次の2つです。
1.退職金の計算方法(=制度設計)
2.財源の確保方法
前回は、計算方法として「ポイント制」
をおすすめしました。
社員の貢献度を毎年積み上げていく形
なので、納得感のある制度になります。
今回は、もう一つの要である「財源の
確保方法」について、代表的な選択肢
とその特徴をお伝えします。
■主な退職金の財源方法は5つ
中小企業で使われる代表的な財源確保
の方法には、次の5つがあります。
1.中小企業退職金共済(中退共)
2.民間保険(養老保険など)
3.確定拠出年金
(企業型DC、選択制DC)
4.確定給付企業年金
(DB、選択制DB)
5.自社積立(社内留保)
それぞれメリット・デメリットがあり
ますので、自社の経営方針や人材戦略
に合った方法を選ぶことが大切です。
1.中小企業退職金共済(中退共)
中小企業で最も多く導入されている
制度で、国が運営しています。
掛金は全額損金(経費)扱いになり、
節税効果があるのも魅力です。
ただし、注意点もあります。
・一度加入すると脱退しづらい
・掛金額の調整がしにくい
・従業員に対して「一律対応」になり
柔軟性がない
退職金制度に経営の自由度を持たせ
たい企業には、かえって足かせになる
ケースも見受けられます。
2.民間保険(養老保険など)
養老保険などの積立型の保険商品を
活用して、退職金の財源を準備する
方法です。
特徴としては、
・解約返戻金を退職金の支払い原資
にできる
・一部を経費として処理できる
(おおむね50%まで)
・万が一のときに死亡保障や入院保障
があるため、福利厚生としても活用
可能
一方、早期解約(数年で退職)になる
と返戻率も低くなるなどの点も押さ
えておく必要があります。
③ 確定拠出年金
(企業型DC・選択制DC)
企業が掛金を拠出し、社員が運用する
年金制度です。
原則として社員自身が運用リスクを
負う制度です。
中小企業で導入しやすいのは、給与の
一部を掛金にするか、現金で受け取る
かを社員自身が選択できる
「選択制DC」です。
企業の負担を抑えつつ、社員に選択肢
を与えられるのがメリットです。
4.確定給付企業年金(DB・選択制DB)
企業が将来の給付額を保証し、必要な
積立を行う制度です。
退職金を年金形式で支払う形も可能
です。
中堅・大企業でよく見られますが、
最近では選択制DBという柔軟な
制度も登場しています。
5.自社積立(社内留保)
最もシンプルな方法ですが、以下の
ようなリスクがあります。
・経営状況により、支払いが困難に
なる場合もある
・税務上、退職金支払い時の損金処理
になる(積立時は損金扱いできない)
「いざという時に払えない」リスクは
社員の信頼にも関わるため、計画的な
運用と内部管理がカギです。
退職金制度は、ただ“あればいい"もの
ではなく、人材確保・定着・モチベー
ションの維持に直結する戦略的な
制度です。
そのためには、
・制度設計(ポイント制など)と
・財源確保の仕組み
(複数を組み合わせるのも可)
の両輪でバランスを取ることが重要です。
次回以降、それぞれの財源について
もう少し詳しく解説していきます。
導入や見直しを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
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