会社も社員も得する?選択制DCのメリットと注意点
社労士で採用定着士の西野です。
このところテーマにしています
退職金制度について勉強会を開催します。
▼開催概要
小さな会社のための「退職金制度まる
わかり勉強会」
日時:8月27日(水) 14:00〜(60分程度)
形式:Zoomによるオンライン開催
(参加無料)
講師:西野 毅
(社会保険労務士・採用定着士)
▼お申込み方法
以下のフォームからお申込みください(所要1分)
https://form.os7.biz/f/9ec7e022/
退職金制度は「福利厚生」だけでなく、
採用・定着・人件費戦略にも関わる
経営インフラのひとつです。
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した!」
そう思える時間をご提供します。
ご参加お待ちしています!
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今回は、企業の退職金制度の一つとして
注目されている「確定拠出年金(DC)」
特に中小企業で導入が進む選択制DC
についてお話しします。
■ 確定拠出年金(DC)とは?
確定拠出年金は、2001年にスタート
した制度です。
当時、低金利による退職給付債務の膨張
や、公的年金の先行き不安が背景にあり
「企業による一方的な給付」から
「個人による運用・選択」へと退職金
のあり方を変える動きとして生まれ
ました。
この制度には、大きく以下の2種類が
あります
・企業型DC(企業が掛金を拠出)
・個人型DC(iDeCo/イデコ)
(本人が掛金を負担)
■ 中小企業で注目される「選択制DC」とは
近年、中小企業や小規模事業者で
増えているのが、企業型DCの
「選択制」と呼ばれる形態です。
これは、会社が支払う給与(生活設計
手当などの名目)を財源に、社員本人が
自ら拠出額を決定する制度です。
たとえば月額55,000円を上限に
・すべて給与として受け取る
・一部をDCとして積み立てる
・全額DCに充てる
などを社員が自由に選択できます。
実質的には「退職金の前払い+自己運用
型」とも言える制度です。
■ 選択制DCのメリット
(1)社会保険料の削減
DCに拠出した金額は、課税対象の
給与とはみなされず、社会保険料の
対象外になります。
結果として、会社・本人ともに保険料
負担が軽くなる(約15%相当)ため
コストメリットは非常に大きいです。
(2)所得税・住民税も非課税
拠出額は所得税・住民税の控除対象と
なるため、節税効果も見込めます。
(3)老後資金の形成
DCは60歳以降まで引き出せない
仕組みのため、確実に老後資金を蓄える
手段としても有効です。
■ 注意点・デメリット
(1) 60歳まで原則引き出し不可
あくまで「年金制度」であり、原則と
して60歳まで引き出しできません。
「退職金のように自由に使えるお金」
とは異なります。
そのため、ライフプランに柔軟性を
持たせたい社員には不向きな場合も
あります。
(2)本人が全額「給与受取」を選べる
ため、制度の効果が薄れることも
制度上、社員が拠出しない(全額給与
受取)ことも自由です。
結果として、制度の目的である老後資金
形成や節税メリットが活かされない
ケースもあります。
一部の企業では、社員に将来の資産形成
を意識させる目的で選択制DCを導入
していますが、結局「全額給与」の
選択が続けば、制度形骸化のリスクも
あります。
■ 税制上の注意点:「退職所得控除」
の重複に注意
選択制DCは退職所得としても受け
取れるため、原則として「退職所得控除」
が使えます。
しかしここで注意が必要です。
【退職金とDCを一時金で受け取る
場合の控除適用ルール】
60歳で退職金、65歳でDCを一時金
として受け取る場合、5年以上の間隔
が空いていれば、どちらにも退職所得
控除が適用されます。
(※この「5年ルール」は、2026年1月
以降10年ルールに変更予定)
一方で、退職金受取後に19年未満で
DCを一時金として受け取ると、
控除額が圧縮されたり、一部が課税対象
になる可能性があります。
特に金額が大きい場合は、税務リスクが
生じる可能性もあるため、タイミングに
注意が必要です。
■ まとめ
選択制DCは、
・社会保険料・税金の削減
・老後資産の形成
・柔軟な導入コスト
という点で中小企業にとって非常に
有効な制度です。
一方で、
・本人が「選ばない」限り機能しない
・退職所得控除との重複リスク
・60歳まで引き出せない不自由さ
といった注意点もあります。
制度導入を検討される場合は、社員
への制度理解の促進と、ライフプラン
を見据えた設計支援が欠かせません。
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